ガザ地区では、深刻な電力不足に陥っている。ガザの電気不足は今に始まったことではなく、ハマスが支配し始めて以来、すでに10年来のことである。
しかし、この4月より、さらに電力不足が悪化し、一般家庭では1日4時間程度にまで落ち込んでいる。この上、さらにイスラエルが電気代不払いであるとして電力の供給を停止すると、もはや危機的となり、再びガザとの紛争にまで発展しかねない状況になりつつある。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は、ハマスとの和解を試みていたが、もう見切りをつけたのか、4月からは、ガザ地区への支払い代行や支援金を停止する動きになっている。
このため、4月の時点で、ガザ地区内部にある発電所では、発電のための燃料が買えなくなった。この時はトルコとカタールが燃料を供給してなんとか持ちこたえた。しかし、それも今、底をついたという。
現在残っている発電ラインはイスラエルの発電所からくる10本で、ガザ地区全体の電力の30%をカバーするものである。この分の支払いは、パレスチナ自治政府が担っていた。
支払いの方法は、現金で支払われるのではなく、イスラエルが、西岸地区の貿易(地理的に必然的にイスラエルを経由する)において代理徴集している税金から差し引かれる形である。
しかし、今、アッバス議長は、この支払いを大幅に削減するとイスラエルに通告してきた。Yネットによると、当初月4000万シェケル(約12億円)の電気代全額の支払いを停止すると言っていたが、今は、2500万から3000万シェケルは払うと言ってきている。
これにより、ガザへの供給額のほぼ半額しか支払われない形になる。これを受けて、イスラエルは支払いのない分、ガザ地区への送電を削減するかどうかでもめている。
政府としては削減するのが当たり前ではあるが、そうなると、ガザの一般市民の生活が成り立たず、イスラエルへの不満となって、紛争が再開する可能性も出てくる。実際、国連は、この点を指摘し、イスラエルに供給を止めないように警告している。
アネルギー相のステイニッツ氏も、パレスチナ人同士の争いに巻き込まれてはならないと、電力削減に反対する立場である。
www.timesofisrael.com/energy-minister-refuses-to-cut-further-electricity-to-gaza/
しかし、かといってイスラエルを滅亡させることだけが存在理由であるガザ地区(実際はハマス幹部ら)にイスラエルが無料で電気を送らなければならないというのもおかしな話である。
Times of Israel によると、ガザ地区の一般市民は1日平均4時間しか電力がないが、ハマス幹部らの家には24時間いつでも電気があるという。
ガザ地区では、電気不足について、市民が一度デモを起こしたことがあった。しかし、以後、デモは一回も発生いない。ハマスが恐ろしいからである。市民たちは、わずか4時間の電力でなんとか毎日の生活をまわす工夫をしているという。
www.jpost.com/Middle-East/Israel-reduces-Gaza-electricity-after-PA-refuses-to-pay-493927
<ハマスの恐怖政治>
3月、ハマスのトップ指導者の一人、マゼン・フカハが、ガザ地区で暗殺された。ハマスはイスラエルによるものと非難した。(イスラエルはコメントしていない。)
www.nytimes.com/2017/03/27/world/middleeast/mazen-fuqaha-hamas-killing-israel.html
ニューヨークタイムスなどによると、暗殺以来、ハマスは、イスラエルに協力したとして45人を逮捕。先週25日には、このうちの3人を公開処刑した。2人は絞首刑で、1人は銃殺刑。招かれた3000人程の前で、みせしめのようにして殺された。
www.nytimes.com/2017/05/25/world/middleeast/hamas-execution-gaza-mazen-fuqaha.html?_r=0
このような恐怖政治がいつまで続くのかは不明だが、そのとばっちりを受けるのは、ガザ住民と、イスラエルのようである。
なお、このハマスへの支援をイランが再開するという情報があり、そうなれば状況はさらにややこしくなる。この点からも、イスラエルは、ガザへの電力の供給は止めるべきでないのかもしれない。