ガザ国境周辺在住で10月7日被災のイスラエル人高校生15人来日:東北大震災・福島で交流 2024.8.13

戦時下のイスラエルから高校生が来日: Eshkol in Japan 2024

イスラエルでは、イランとヒズボラの大規模戦争になるとの予想から、海外の航空会社は、ほとんどがテルアビブへの乗り入れを停止している。

その期間は、数日と言っていたが、延長する傾向にあり、海外にいるイスラエル人たち2万人が足止めになっているとみられていた。

こうした中、イスラエルのエルアル航空は大幅に増便し、収益を上げているという。しかしこれで、足止めになっているイスラエル人たちが、たとえば3カ国を経由するなどして、苦労しながらではあるが、帰国できている。

こうした中ではあったが、イスラエルから、ガザ周辺のエシュコル地方に住む高校生15人と、教師3人、学生カウンセラー1人が、7月28日から8月8日まで、日本を訪問。

主に2011年に、東日本大震災で被災した福島県南相馬市を訪問し、そこで4日間滞在して、被災者たちと交流する時を経験した。

高校生たちは、10月7日のハマスの奇襲を経験している。同級生3人が殺害さ

エシュコル地方:濃い緑部分 Wiki

れ、4人は人質として拉致された。今も半数は、自宅に戻れず、避難生活を続けている。普通の若い高校生だが、個人的にも1人は、祖父を人質にとられている。

また1人は、親友をキブツ・べエリで殺された。1人は、ハマスの残虐な犯罪を経験した後、銃を持ち歩くようになっている。

その経験を語るとともに、福島の原発問題でやはり、突然、人生を変えられてしまった人たちのこれまでの13年間の歩みについての話を聞いた。

無論、福島で起こったことと、ガザ周辺でで起こったことに共通点はないが、突然の変化と大きすぎる「喪失と破壊」という個人的な未知の体験という点においては、共通の点があるとされる。

そこから、よりよい未来を実現するために、課題や危機をどう克服していくのかを話し合う。多文化協力を目指す上でも貴重な機会である。

無論、それだけではなく、同年輩の高校生や大学生たちと、互いの文化を紹介し合うプログラムも経験した。岐阜県では、杉原千畝記念館も訪問して、イスラエルと日本の接点についても学んだとのこと。

このプログラムは、「Change Maker Program」とされているが、まさにその目的の訪問であった。

学生たちの感想などは、声がよく聞こえなかったのではあるが、日本でそれぞれかなり新鮮な経験をしたようで、非常に有意義であったことは間違いない。参加した学生たちは帰国後、地域での問題解決に貢献することを期待されている。

enForward事務局長 堀田真代さん

堀田真代さん

このプログラムを推進しているのは、日本人の堀田真代さんである。堀田さんは、イスラエルの緊急救援期間であるイスラエイドのCEOヨタム・ポリザー氏と結婚し、2017年からイスラエルに在住。そこで、子供2人を出産し、育てている母親である。

堀田さんは、2011年に東北大震災が発生したとき、ソフトバンクに勤めていた。

当時、孫社長が新しい企業概念とアメリカ大使館の後援を受けて、若い被災者に希望を与えることを目的とした、TOMODACHIソフトバンク・リーダーシップ・プログラムを経験したという。

その経験をもとに、今回のプログラムを立ち上げた。被災した若者たちに、多様な世界と、新しい未来があることを見てもらうことで、彼らの今後の人生に大きな良い影響をもたらすことができるのではないかと思ったと堀田さんは語っている。

なおこのプログラムは、協賛する国際的な60人以上の支援によって成り立っているとのこと。

enforward.org/ja

ejewishphilanthropy.com/empowerment-trip-to-take-teen-survivors-of-oct-7-attacks-to-fukushima-japan/

読売新聞記事

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石のひとりごと:東京の最後の集会に参加して

8月7日、このグループは、出発前夜に、東京広尾の日本ユダヤ教団シナゴーグで、在日イスラエル大使館も共に、関係者を人招待し、報告の時を開催。筆者も出席させていただいた。

参加者は100人を超えていた。イスラエルから来た学生さんたちには、東北でも大勢の人々に会えたとのことで、非常に喜んでくれていた。

初めて会う日本との出会いがとにかく新鮮だったようである。壮絶な経験をしたと思うが、ぱっとみただけでは、キャピキャピと楽しみ、騒いでもいる、いかにも高校生という感じだった。

堀田さんはとてもはっきりとビジョンを持っておられることに感動した。

確かに多様な世界を見ることで、前を見ることにもつながってくると思う。

今回、日本に来ることで、傷ついているイスラエルの次世代の青年たちに、大変すばらしい機会になったと確信する。

もちろん、イスラエルの人々に直接会うことが、日本の福島の高校生や関係者にも、非常によい機会であった。ニュースでしかみない、イスラエルだが、そこに住んでいるのは、同じ普通の人々なのである。

そこに住む人々に直接会うこと、それが一番の理解の始まりである。

報告会では、子供たちを送り出した母親からのビデオメッセージがあり、最後には、学生たちから教師、そして堀田さんへの感謝の表明があり、とても温かい感じだった。学生がただ受け身ではない。その様子がよくわかった。

堀田さんのこれからのプロジェクトを心より応援したいと思う。

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。