ガザ停戦崩壊:イスラエルがガザ全域へ攻撃再開・ガザで326人死亡 2025.3.18

A fire at a tent encampment west of Khan Younis following Israeli strikes on March 18, 2025. (Screen capture; used in accordance with Clause 27a of the Copyright Law)

ガザへの攻撃再開:ハマスが交渉にまったく応じないためとネタニヤフ首相

ハマスが、ウィトコフ米中得特使の懸命の交渉に応じず、人質解放を拒否し続けていることを受け、3月18日(火)深夜過ぎ、ネタニヤフ首相は、ガザへの攻撃再開を指示した。

これを受けて、イスラエル軍は、3月18日(火)早朝、国境周囲からガザ領内にむけた空爆を開始した。

ガザ保健省によると、18日午前10時すぎ(現地時間)の時点で、子供や市民を含む326人が死亡。負傷者は1000人以上と発表している。

また、これまでの攻撃で、ハマス内務省高官とされてきたマフムード・アブ・ワトファ、ハマス政治局員のイサム・ダリアスら5人が死亡している。

www.ynetnews.com/article/bjqkjol2jg

この一連の攻撃の後、イスラエルは、まだ攻撃を拡大するとして、今後攻撃地域になるとみられる地域をアラビア語と地図で提示し、赤い部分は特に危険であると避難をよびかけている。

停戦中に再建し続けていたハマス

ネタニヤフ首相が、人質がまだガザにいるにもかかわらず、大規模な戦闘を再開させた背景には、ハマスが武力を回復しているという現状もあったようである。

1月19日に停戦となり、ガザ北部に避難民が戻った時、ハマスも戻って拠点の再構築をしていたとみられている。トンネルの再構築や新たな時限爆弾の設置もしていると指摘されていた。

Feb. 15, 2025. (AP Photo/Abdel Kareem Hana)

武力を再建していることは、人質を解放する時に、地下トンネルから出てきたハマス戦闘員たちのそうそうたる様子からも明らかであった。

また特にここ数週間は、ハマスが10月7日の虐殺のような攻撃する意図を持ち続けているともイスラエル軍からの警告が出ていた。

加えて、元イスラエル軍参謀総長、戦争内閣オブザーバーで、今は野党のガディ・アイセンコット氏が、3月16日(日)に、首相とカッツ国防相に会談を要請。

ハマスが、武力を回復しており、本来の戦争目的が達成されていないと政府を非難した。この時の報告によると、ハマス戦闘員は今2万5000人以上、イスラム聖戦は5000人以上になっているとのことであった。ガザへの攻撃はこの数日後だった。

www.timesofisrael.com/eisenkot-demands-urgent-knesset-meeting-with-netanyahu-katz-on-war-failures/

ネタニヤフ首相の首相府は、ガザへの攻撃再開について、ハマスが交渉に一切応じなかったため、今は、ハマスの軍事力、統治能力を解体し、人質59人全員の帰還させることを目標にすると言っている。

なお、この攻撃については、事前にアメリカも合意の上のことであり、アメリカはイスラエルの攻撃をバックアップすることを表明している。

また、ラファの検問所、ネツァリム検問所のEU職員らも攻撃時には不在となっており、事前に連絡が入っていたともみられている。これらの検問所は当分の間閉鎖になる見通しである。

停戦が崩壊し、戦闘が再開されたことから、イスラエル当局は、ガザ周辺コミュニティの学校を閉鎖すると発表した。アシュケロンとスデロット間の鉄道も停止。代わりにシャトルバスになっている。

www.ynetnews.com/article/sygvcy83ye

ハマスの反応:ネタニヤフ首相は人質を“未知の運命”にさらしている

ハマスは、停戦が崩壊したことについて、その責任は全面的にネタニヤフ首相にあると、仲介者であるアメリカ、カタール。エジプトに訴えた。

アラブ諸国には、パレスチナ人の抵抗を支援するよう要請。国連安保理には、イスラエルの“侵略”を止めるための決議を採択するよう、緊急会議を開催することを求めた。

絶望の人質家族:最大の恐怖が現実になった

ガザには、まだ59人(生存者は24人?)の人質がいる。家族たちは、「最大の恐怖が現実となった。政府が私たちの愛する人々を解放させるプロセスを意図的に放棄したことに恐怖と怒りを感じている」との声明を出した。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/hostage-forum-government-has-chosen-to-give-up-the-lives-of-the-hostages/

イエメンフーシ派、イランとの関連は?

現在、イエメンでは、アメリカが、イラン傀儡のフーシ派への大規模な攻撃を続けている。これは、イランへの警告だとも言われている。

これに対し、フーシ派は、アメリカ軍空母などへの反撃を行っており、トランプ大統領は、フーシ派のしていることの責任は、イランにあると、明確にイランを非難した。

こうした中で、イスラエルがガザへの攻撃を再開した。

フーシ派は、2023年10月7日以来、ハマスを援助するとして、イスラエルへミサイルを発射したり、紅海の商船を攻撃して世界に被害を及ぼしてきた。

今、イスラエルがガザへの攻撃を再開したことで、フーシ派は、イスラエルを非難し、反撃を続けると豪語した。イスラエルへの攻撃もしてくるかもしれない。

今後、ガザでの戦闘、フーシ派、またイランとの対立にもつながっていく可能性も懸念されるところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。