ガザ人道支援物資の略奪と回復兆候の現状を国際メディアが報告 2024.11.19

キスフィムからガザへ入るトラックIDF

ガザからは、ハマスを非難するガザ避難民の声が聞こえるようになってきたが、その他にも、人道支援のトラックが、武装勢力に略奪され、転売されていることを国際メディアが伝えるようになってきた。

ガザ北部では特に飢餓状態になりはじめているとの指摘され、イスラエルが非難されている。

しかし、それは、搬入物資が少ないから、足りないというだけでなく、略奪されて、高く転売されるために、貧困な避難民が購入できないということも原因になっていることも原因だとイスラエルは主張してきた。

それが、国際社会からも指摘されてきたということである。

驚いたことに、ガザ中央、南部では、カフェ的な場所や、それなりのシュワルマ(中東のサンドウイッチ的な食べ物)が売られ、人々が列を成しているとのこと。伝えているのは、ニューヨークタイムスである。

戦争のニュースは、いかにも全体のイメージになってしまうが、ガザでは、少しずつ戦闘が、北部に集中しはじめ、中部、南部の一部の避難民たちの間では、ささやかな日常も見られている。

人道支援物資トラック略奪を国連が報告:ロイター

Illustrative: Palestinians storm trucks loaded with humanitarian aid in the central Gaza Strip on May 18, 2024. (AP Photo/Abdel Kareem Hana, File)

ロイターが伝えるところによると、16日、ガザ南部検問所ケレン・シャロームから入って、ガザに食料を届けようとしていた、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)とWFP(国連世界食糧計画)食料のトラック109台が、途中で襲撃され、98台が略奪された。

戦争が始まって以来、最悪の損失になったという。

だれが、略奪したかはわからない。しかし、ハマスのテレビチャンネル(テレビある??)によると、略奪に加わったギャング20人が殺害されたと報じ、今後略奪しないよう、釘をさしていたとのこと。

ガザ内部が無法状態になっていることを世界に思い知らせた形となった。

www.reuters.com/world/middle-east/large-gaza-food-convoy-violently-looted-unrwa-says-2024-11-18/

ガザ中部避難地域でカフェとシュワルマも:ニューヨークタイムス

ガザ北部を中心にガザ全体で、食糧不足が飢餓レベルの深刻さになっていると伝えられる中、驚いたことに、ガザ中部のデイル・アル・バラでは、がれきとなった、町の中心部で、ガザ市民に人気のシュワルマ(中東式サンドイッチ)を販売する店、シェフ・ワリーフ・レスランが営業を再開。長い列ができていると伝えた。

地図をみると、激戦になっている北部と、南部ハンユニスの間ぐらいに位置しているので、少しは余裕があるのだろう。

10月の様子Credit…Bilal Shbair for The New York Times

コーヒーやジュース、アイスクリームが販売されてのささやかなカフェもある。郊外ではオリーブの採取、冬野菜の栽培をしている人もいるという。

ただし、料金は、シュワルマが、戦争前の3倍にあたる11ドル(1800円)、スムージーは、前の2倍にあたる4ドル(600円)。

買える人はいるのかと思うが、戦争前に配られたカタールからの現金が助けになっているのかもしれない。結局、買えなくて、飢餓に近い貧困者がほとんどである中、お金のある人もいるということである。

今月の様子 Credit…Bilal Shbair for The New York Times

NYTの記事は、どんな紛争や戦争でも、立ちあがろうとする人々のスポットはあるものだと言っている。

しかし、いつ何時、そのささやかな努力が破壊されるかもわからない。また、人々のほとんどは、家族や友人を失くす経験をしている。

この場所はここだけで、一歩出れば、がれきであり、ほぼシュール状態とのこと。

現実は悲惨なニュースの毎日で、一瞬でもそれを忘れたいと、取材に応じた若い女性たちが語っていたと伝えている。

www.nytimes.com/2024/11/18/world/middleeast/central-gaza-life-israel-war.html

*テレビ等で見るガザとは全然違っており、読者が混乱しそうな気がする。しかし、この写真や情報は、ニューヨークタイムスという、世界的大手メディアによるものである。一応は信頼できると考える。

石のひとりごと

このようなニュースをイスラエルではなく、国際社会の大手メディアが伝えていることに注目される。少なくともガザ内部のハマスは、もはや権威も支配力を失って、恐ろしい存在ではなくなっていると推測される。

しかし、これで喜んでいるわけにもいかない。これから、この無法地帯となっている混乱一色のガザをどうしていくのかが、大問題である。

最も難しい問題は、ガザ市民たちのメンタリティがどうなっているかである。人質を経験したイスラエル人の被害者の多くが証言しているが、10月7日の襲撃には、ハマス戦闘員ではない、一般市民もいたのである。

また、ハマスがイスラエルを襲撃した時、ガザ市民は皆が喜び踊っていた。おそらくは、今、ハマスを非難している人も含めである。解決にむけた山はまだまだ高く、先はまだほとんど見えていないといえる。。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。