ガザの飢餓写真はプロパガンダとイスラエルが指摘 2025.7.30

5-year-old Osama al-Rakab is seen receiving medical treatment, left. COGAT says a viral image of him, right, was used to falsely accuse Israel of starving children in Gaza. (Screen capture: COGAT via X)

ガザの飢餓問題は、ハマスには、明らかに追い風になる。今や大々的にガザ市民の惨めな様子を世界に発信し続けている。その中には、プロパガンダもあることが明らかとなった。

一方で、イスラエル国内から、イスラエルが「ジェノサイド」をしていると訴える組織も2つ現れ、複雑な様相になっている。

ガザの飢餓プロパガンダ

世界では、痩せこけた、ガザのオサマ・アル・ラカブ君(5)の写真が、イスラエルが飢餓を誘発していると非難する際に使われていた。

しかし、イスラエル軍のCOGAT(政府活動担当)によると、オサマ君は、6月12日の時点で、母親と兄弟とともに、ガザから出国できるよう調整し、現在はイタリアで治療を受けていると発表した。オサマ君は、重篤な疾患を患っていたのである。

www.timesofisrael.com/image-of-gazan-child-with-genetic-illness-being-used-to-falsely-smear-israel-cogat-charges/

Muhammad Zakariya Ayyoub al-Matouq, a 1.5-year-old child in Gaza City, Gaza, faces life-threatening malnutrition as the humanitarian situation worsens, on July 21, 2025. (Ahmed Jihad Ibrahim Al-arini / Anadolu, via Reuters)

また、ゴミ袋のおむつをつけている生後18ヶ月の幼児ムハンマド・アル・マトゥーク君を抱きしめる母親の写真は、CNN、BBC、ニューヨークタイムスなど、世界の大手メディアほぼすべてが取り上げ、世界に衝撃を与えた。

しかし、その後、ムハンマド君がこの状態に陥っていたのは、栄養失調からではなく、もともと重度の遺伝性疾患からであったことが、明らかとなった。

ただ、医療物資が不足していることから、ムハンマド君が、特殊な食事を摂ることができないために、栄養不良になていることは否定できないとのこと。

しかし、写真の横には、健康な3歳の兄弟がいたが、彼は写真からトリミングされていたことや、ムハンマド君を抱いている母親も、栄養失調とは思えないことは指摘されている。

この他、ムハンマド君の父親は、食べ物を探しに行っていた時に、イスラエル軍に殺害されたと報じられていた。

しかし、その後、父親は、イスラエル軍が、テロリストと激戦を繰り広げる中、兵士6人が死亡するという、激戦地にいて死亡していたことが明らかとなった。

父親が食べ物を探しに行っていた時に、殺されたという状況ではないといえる。こうしたプロパガンダは、ほかにも指摘されている。

www.ynetnews.com/magazine/article/bjtpa6vvgl

ハマスが物資を強奪するクリップ公開

世界はイスラエルが、ハマスが支援物資のトラックを強奪しているという証拠がないと言っている。イスラエル軍は、7月29日、その映像だとするクリップを公開した。

ただそれが、ハマスなのか、空腹な市民なのかの区別がつかないというのが問題なのである。このクリップが、ハマスの犯行だと断定する理由については、明らかにはしていない。

イスラエル軍は、ハマスは、物資を強奪し、それを市民に販売していることから、末端の貧しい人々に物資が届いていないと訴えている。

ガザで食糧不足に陥っているのは、イスラエルのせいではなく、ハマスに大きな原因があるということを示そうとしているのである。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/idf-publishes-video-it-says-shows-hamas-terrorists-looting-humanitarian-aid-in-gaza/

石のひとりごと

飢餓状態にある子供の写真で、イスラエルを攻める世界に対し、現代における「血の中傷」だという懸念もあがっている。

「血の中傷」とは、中世のキリスト教会の間で、ユダヤ人は、クリスチャンの子供を殺して、その血で過越を祝っているという、まったくの作り話が、噂として広がり、ユダヤ人殺害に繋がったことの名称である。

「血の中傷」という現象は、その後も時々発生しており、理由のないユダヤ人への憎しみを煽って、暴力にまで発展している。

ガザからの報告をそのまま信じる人々が、イスラエル人、またユダヤ人への攻撃を正当化する、「血の中傷」を思わせるような現象が、今の社会に広がり始めているということである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。