ガザの病院攻撃で子供9人死亡か:イスラエルとEUがガザへ人道物資搬入拡大で合意 2025.7.11

Volunteers from Palestinian families guard trucks carrying aid that entered the Gaza Strip from the Zikim border crossing, June 25, 2025. (Bashar TALEB / AFP)

ガザの病院が標的に:パレスチナ人子供9人死亡の惨状

イスラエル軍は、連日ガザへの激しい攻撃を続けている。7月10日(木)には、ガザ中央のデイル・アル・バラで、10月7日のテロリストを標的にした空爆を実施した。

at a Project Hope-run medical clinic in Deir al-Balah, Gaza Strip, July 10, 2025. (AP Photo/Abdel Kareem Hana)

ハマス関連機関によると、この日の死者は52人と発表。標的になった病院では、ユニセフ関連の組織「プロジェクト・ホープ」からの栄養補給のサプリをもらいに来ていた子供9人と、治療に来ていた女性4人が犠牲になったと発表した。

ユニセフは、死亡した子供の1人は1歳で、死亡する数時間前に、生まれて初めての言葉を発したところだったと発表している。

イスラエル軍は、民間人を殺害する意図はないとして、調査を進めていると言っている。以下は現場の壮絶な様子。

これをXにアップしているのは、イスラエル人のシャイ・レビ氏である。レビ氏は、イスラエル軍による、こうした攻撃に疑問を投げかけている。

しかし、これに対する書き込みは、「ではあなたは、ナチス時代、そこに子供がいるかもしれないといってベルリン攻撃を躊躇するべきだったというのか」とか、「戦争はひどい。戦争の時は、無関係の人も巻き添えになるものだ。

私たちは今、完全な悪、現代のナチスと戦っている。当時の連合軍のように動くべきだ」といった書き込みが続いている。

イスラエルが今、このようなリスクを伴ったとしても、ガザへの攻撃を続けているのは、外交だけに頼らず、実質的にも、できるだけ、ガザのハマスを非武装化して、ガザの危険性をなくしておくことが目標としている。

EUとイスラエルがガザへの物資搬入拡大で合意

しかし、停戦への動きが進んでいるのかという動きもで始めている。

10日(木)、EUのカジャ・カラス外交政策責任者が、ガザ地区への人道状況改善に向けて、搬入経路を増やし、より多くのトラックが入れるようにすることで合意したと発表。続いてイスラエルのサル外相もこれを確認する声明を出した。

それによると、エジプトとヨルダンからの人道支援ルートを設定し、ガザ北部南部に検問所を開設して、物資を乗せたトラックがもっと入るようになる。ここ数日以内には、始まる予定とのこと。ただし、新たに始まる物資搬入を実際にどの組織が担うのかはまだ明らかにされていない。

イスラエルは、5月から国連関連組織による、ガザへの物資搬入を停止し、イスラエルとアメリカによるGHFの食料配布センターを立ち上げて、市民が物資を取りにくるシステムを行っている。

しかし、この方法では、ガザ市民は、遠方から歩いて来なければならず、道中の危険に加えて、配布センターのカオスで多数の死者が出ていることから、国際社会の非難を浴びている。

このため、先週ぐらいから少しずつ、以前のような、トラックによる搬入も再開されていた。しかし、今回、さらに各地への搬送を再開するということである。

今は、イスラエルがガザ地区の大部分を管理するようになっているので、途中でハマスに横領される危険性は和らいだと判断されたのかもしれない。

また、ネタニヤフ首相が、ここ数日の間に、停戦合意になる可能性を示唆していることから、その準備なのかどうか、停戦への動きになるかどうか注目される。

www.timesofisrael.com/israel-eu-agree-to-boost-gaza-aid-more-trucks-more-crossings-and-more-routes/

石のひとりごと

イスラエル人は、もれなく子供が大好きである。ガザの子であろうが、その思いは変わらないだろう。しかし、敵がナチスとなれば、仕方がないという結論になっているほどに、ハマスへの危機感は大きいということである。

しかし、この戦いが始まってからもう2年が近づいてきた。イスラエル人にとってもガザ市民にとっても、もう限界であることは間違いない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。