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カイロでの交渉に向かうイスラエル交渉団
ハマスとイスラエルの交渉は、ネタニヤフ首相が、エジプトとの国境フィラデルフィ回廊、ガザ中央を横断するネツァリム回廊など、鍵となる地域にイスラエル軍が駐留を続けることを主張したことから、ハマスは、この条件では合意できないと拒否を表明した。
しかしアメリカは諦めず、ブリンケン米国務長官が、イスラエルに来て、ネタニヤフ首相の説得を試みた。
また、バイデン大統領、ハリス副大統領がネタニヤフ首相と、3者電話会談を行い、交渉を進めるよう、説得を試みた。
ネタニヤフ首相は、譲歩する様子を見せたようではあるが、確実な譲歩の報道はない。
両者が歩み寄る様相はほとんどない状態の中、今日23日金曜、バルネア・モサド長官、バル・シンベト長官ら、イスラエルの代表団が、エジプトのカイロに向かった。
アメリカからは、これまでと同様、CIAのバーンズ長官が向かっている。
今回、ハマスが参加するのかどうかは不明。話し合いの流れによっては、25日(日)にフォローアップの会合が予定されている。
しかし、現実には、何か結果が出るとは思えない中で、一応集まるという感じである。問題となっている主な点は以下にまとめる。
1)イスラエル軍がガザから撤退しないということ
メディアによると、フィラデルフィ回廊などには、IDFの代わりに国際監視軍が入ることも話し合われ、ネタニヤフ首相が譲歩したとか、してないとか必死の交渉になっていたもようである。しかし、結局、明確には何も決まっていない。
2)人質と交換するパレスチナ人囚人の問題
もう一つの問題は、第一段階で、イスラエル人の人質33人の代わりに、ハマスが釈放を要求しているパレスチナ人のリストである。ハマスは150人を要求しているが、その中には終身刑を何回も受けているようなバルグーティといった凶悪犯の名前も挙げられている。
さすがにハマスは、このうち50人をイスラエルが拒否することを認めると予想されている。これに対し、イスラエルは65人まで認めるよう要求している。
3)ガザでの戦闘エスカレート中
別記事で述べるが、ガザでのハマスとイスラエルの戦闘は激しさを増しており、双方に死者が発生している。イスラエル政府関係者は、イスラエルは、“まるでガザで戦闘がないかのように交渉に臨み、まるで交渉がないかのように、ハマスとの戦闘を続ける”と語っている。
基本的に、交渉で何が決まろうとも、イスラエルは、自国の治安維持に譲歩することはできないことに変わりはなく、ハマス殲滅に向けての戦闘は続くだろうということも語っている。
深まる国内の分断
はっきりと口にはしないが、要するに、ネタニヤフ政権が表明していることは、ガザにまだ囚われたままになっている人質105人の救出は最優先ではないということである。
イスラエル国内では、人質家族と政府の距離が深まっている。
イスラエル政府は、10月7日に、人質を覚える特別な式典を計画しているが、ガザ周辺コミュニティが次々に欠席を表明。人質家族もこれに続いている。
元人質のマーガリット・モーゼスさんは、政府の宣伝になりたくないとして、ネタニヤフ首相との会談を拒否した。
交渉団とネタニヤフ政権との不和について
バル氏ら交渉団は、どちらかといえば、世俗派左派勢力であることから、人質奪回のために交渉するといいながら、実際にはその反対のことばかりをしている政府にいらつきをみせている。
また、イスラエルとパレスチナ人の関係悪化を深めているもう一つ問題が、西岸地区のヒルトップ・ユースなど極右ユダヤ人グループが、パレスチナ人の集落を襲って放火するなどの暴行を働いている件である。
先週ジットでは、家屋や車が多数放火され、パレスチナ人男性1人が死亡した。警察はこれまでに4人を逮捕した。アメリカは、関係するユダヤ人を制裁の対象に指定している。
また、先日、ティシャべ・アブの日には、閣僚であるベングヴィル国家治安保障相が神殿の丘を訪問。基本的にはユダヤ人には禁じられている祈りを、同行者とともに堂々とささげるに及んだ。明らかに現状維持の原則を破るもので、パレスチナ人の怒りを買う行為である。
ハマスとの交渉にあたってきたシンベト(国内治安諜報局)のロネン・バル長官は、このような極右ユダヤ人の存在が、国際社会の中で、イスラエルにもたらしている損害は計り知れないと激怒。
それを取りしまるどころか温存している現政権に対し、抗議する書面をネタニヤフ首相と、ベングヴィル氏意外の閣僚に、提出した。
その中で、ロネン・バル氏は、ベングヴィル氏の解雇を要求したとのこと。