オーストラリアとイスラエルが政治家のビザ問題で衝突 2025.8.20

(L) Prime Minister Benjamin Netanyahu gives a press conference in Jerusalem on August 10, 2025 (ABIR SULTAN / POOL / AFP) and (R) Australia’s Prime Minister Anthony Albanese speaks during a press conference in Canberra on August 11, 2025 (Hilary Wardhaugh / AFP)

オーストラリアがイスラエル人強硬右派宗教シオニスト議員の入国を拒否

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8月18日(月)朝、宗教シオニズム党シムハ・ロスマン議員は、ユダヤ人関係の集会での講演に行くため、オーストラリアに向かっていた。

しかし、出発の数時間前になって、オーストラリア政府が、ロスマン議員の入国を拒否すると通達してきた。これにより、ロスマン議員はオーストラリアに向こう3年間入国できなくなった。

ロスマン議員は、イスラエルでは強硬シオニストで極右の議員である。オーストラリアのユダヤ人協会によると、ロスマン議員は、ユダヤ人の学校やシナゴーグなどを巡回し、反ユダヤ主義暴力の被害者にも会う予定になっていた。オーストラリアで悪化している反ユダヤ主義についての集会であったことが予想される。

オーストラリアでは、近年、反ユダヤ主義が急激に悪化しており、7月初頭、メルボルンのシナゴーグが放火される事件発生していた。

Demonstrators cross the Sydney Harbor Bridge during a pro-Palestinian, anti-Israel rally, on August 3, 2025. (David GRAY / AFP)

また、8月初頭、シドニーでは、大規模な親パレスチナ、反イスラエルデモが行われた。

その翌日、オーストラリアのアルバネーゼ首相は、9月にパレスチナ国家を承認する発表した。

こうした流れの中、ロスマン議員は宗教シオニストで、西岸地区やガザ地区もイスラエルだとする立場である。

今のオーストラリアの意向とは、真っ向から対立している。

オーストラリアのバーク内務相は、ロスマン議員の入国ビザ取り消しの理由について、「オーストラリアで憎しみと分裂のメッセージを広めてもらいたくないから」と説明している。

www.timesofisrael.com/israel-boots-australian-diplomats-orders-close-look-at-visa-requests-as-ties-sour/

イスラエルの反応:オーストラリアのパレスチナ自治政府への代表のビザ取消

これを受けて、イスラエルのサル外相は、在オーストラリアのイスラエル大使館に対して、オーストラリア政府関係者のイスラエル入国ビザについて再検討するよう指示を出し、数時間後には、オーストラリアが、パレスチナ自治政府に派遣している代表(イスラエル領内に滞在)のビザを取り消すと発表した。

サル外相は、「オーストラリアが、パレスチナ国家を承認するにあたり、多くのイスラエル人のビザを拒否したことへの対応だ」と述べた。

サル外相は、オーストラリアは、反ユダヤ主義と戦おうとせず、扇動するようなことをしていると批判した。

www.timesofisrael.com/netanyahu-australia-pm-a-weak-politician-who-betrayed-israel-abandoned-australian-jews/?utm_campaign=most_popular&utm_source=website&utm_medium=article_end&utm_content=1

ネタニヤフ首相:アルバネーゼ首相を個人的に非難で物議

ネタニヤフ首相は、この翌日19日(火)、「アルバネーゼ首相は、イスラエルを裏切って、国内のユダヤ市民を見捨てた。歴史は、彼を弱い政治家だったと記憶するだろう」と個人を攻撃するようなコメントを出し、またXへも投稿した。

するとアルバネーゼ首相は、「私はそれを個人的には受け取らない。外交的に対処する。ネタニヤフ首相は同じようなことを他の政治家について同様のことを言っていた」と述べた。

また、オーストラリアがパレスチナ国家を承認すると決めた時、オーストラリアはなぜそうするのかを、ネタニヤフ首相に説明し、他のどのような解決があるか述べるように、その機会も与えたと語った。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/australias-albanese-downplays-netanyahus-criticism-i-dont-take-these-things-personally/

アルバネーゼ首相は、個人的とも言える非難を受ける中、落ち着いて政治家として、外交的に返答した感じである。

野党のラピード氏は、国際社会では今、ネタニヤフ首相を有害と見ることが正義になりつつあると述べ、「ネタニヤフ首相のアルバネーゼ首相への個人的非難は、それに火を注ぐことになった。アルバネーゼ首相には、追い風を与える結果になった」とのコメントを出した。

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ラピード氏が言っているように、オーストラリアにおけるユダヤ人への偏見は、さらに深まった可能性が懸念されている。

ユダヤ人たちはもはや、オーストラリアに居場所はないといったコメントもあった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。