エルサレムで銃撃テロ:2人死亡 2016.9.10

9日朝、東エルサレムの弾丸の丘、警察本部前の路面電車駅付近で、銃撃テロがあり、市民1人と特別警備隊員1人が死亡。5人が負傷(2人が中等度の負傷)。3人がショックで病院搬送された。

警察によると、テロリストは、車に乗ったまま路面電車駅で待っていた人々に向かって発砲した。この銃撃で、レバナ・マルヒさん(60)が死亡。もう一人もこの時に負傷した。

テロリストはそのまま走り去ったが、特別警備隊員2人が追跡。しばらく行ったシーカ・ジャラ交差点付近で、銃撃戦となった。

これにより、警備隊員は2人とも負傷し、ヨセフ・カルミ軍曹(29)が死亡。もう一人が最終的に犯人を射殺したとみられる。この銃撃戦で、付近にいた複数の市民も負傷した。

現場が東エルサレムのパレスチナ人地域付近であったため、一時暴動警備隊が、暴動の発生に警戒して出動し、路面電車も一時停止。現場付近は、一時騒然となったが、幸い暴動にはならず、まもなく通常にもどったもようである。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/218812

テロリストは東エルサレムシルワン在住のパレスチナ人アブ・サビ(39)で、イスラエル国籍を取得していた。

アブ・サビは、以前にも警察官に対する嫌がらせや公務執行妨害などで逮捕され、イスラエルの刑務所に5ヶ月服役していた。さらに、また同じ罪状で、この日、刑務所に戻ることになっていた。つまり、刑務所へ行く直前の犯行だったということである。

アブ・サビは、犯行に及ぶ前に、「アルアクサ(神殿の丘)を取り戻して自分も必ず戻る」といった高揚したメッセージを残している。まだ調査中で詳細は明らかではないが、最近ハマスが復活させたフェイスブックの扇動に乗せられた可能性があるという。

死亡したレバナ・マルヒさん(60)は、国会スポークスマンオフィスで30年勤続し、2010年に退職していた。夫と3人の子供たちと6人の孫が残された。

特殊警備隊員のカルミさんは、5ヶ月前に結婚した妻と両親が残された。カルミさんは、昨年、ナイフによるテロを未然に防ぎ、日本でいえば、警視総監賞を授与していた。

カルミさんは、死亡からわずか5時間後、墓の下の人となった。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4864512,00.html

<イスラエルの治安部隊隊員殺害で歓喜するアラブ人ら>

特殊警備隊の1人であるヨセフ・カミルさんを殺害したということで、アラブ人ら(の一部)が狂喜している。ガザのハマスはただちにこのテロ行為を賞賛すると表明した。

アルーツ7によると、事件発生数時間後には、ヨセフ・カルミさんのフェイスブックに、アラブ人らによるひどい中傷や、反ユダヤ主義的な書き込みが殺到した。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/218806

また、事件発生後まもなく、アブ・サビの娘が、自身が出演して、父の行為を讃えるビデオメッセージを公開した。父親とそのテロ行為を賞賛し、「私たちは幸せだ。」と語っている。

この家族は旧市街でスイーツ店を経営しており、祝いとして、皆にスイーツを配った。ガザ地区内部でもスイーツを配って、テロの成功を祝う様子が伝えられている。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4864859,00.html

イスラエルの警察は、祝いをするアラブ人、また現場の様子を「アラーアクバル(神は偉大なり)」と叫びながら撮影していたアラブ人などを逮捕した。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/218814

<石のひとりごと>

今日は、朝から現場からはそう遠くないエルサレムの旧市街周辺にいたのだが、テロ事件のことは、夕方になるまでまったくわからなかった。これほどの事件でもすばやく日常に戻る、というのがイスラエルのテロとの戦いである。

しかし、いつも思うことだが、朝、普通に出て行った元気な人が、夕方には墓に入っている。もう二度と帰ってこない。あまりにも突然すぎる別れで、家族の痛みは想像を絶する。

それを「祝う」人々がいる。その事件をおこした父親を、娘が賞賛するビデオを公開する。いくらイスラエルにうらみがあるとはいえ、人間とは思えない、異常事態である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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