目次
政府(右派)と司法(左派)の対立という構図
イスラエルでは、3月19日(水)戦争を開始し、急速に右派に傾く政府に懸念を持つ市民たちが、テルアビブやエルサレムで、大規模な反政府、反ネタニヤフ首相デモを行った。
特に問題となっているのは、政府が、ハマスとの交渉を停止し、ガザへの攻撃を再開したことで、事実上、人質を見捨てたような形になっている点である。
また、交渉維持の立場でこれまでハマスとの交渉を担当してきたシンベトのロネン・バル長官を解雇しようとしている点。
またそのバル長官の解雇に反論を表明しているミアラ司法長官(写真下)をも政府は排斥しようとしている点である。この2人は左派的な立場である人々である。
しかし、この背景には、もっと深い分断の根もある。今イスラエル国内では、10月7日のハマス侵攻を許した責任を追求する動きが続いており、最終的には、ネタニヤフ首相とその政府にもあるとして、政府が犯した失策を追求しようとする動きも続いている。
また、政府と司法は以前から、ネタニヤフ首相の汚職問題でも対立していた。
以前からの政府(右派)と司法(左派)の対立という構図もからんでいるということである。
こうしたゴタゴタの中、ネタニヤフ政権は、極右ベングヴィル氏の政党が、連立に復帰することを歓迎。その後国会では、ベングヴィル氏が、前の警察庁長官に復帰することを、賛成65、反対46で可決した。
極端に右派で、西岸地区からのパレスチナ人排斥の野望も明らかな、ベングヴィル氏を警戒する市民は少なくない。
エルサレムで大規模な反政府・反ネタニヤフ首相ラリー
昨日19日には、テルアビブに続いて、エルサレムで数千人が、まず首相府前で、続いて首相官邸前に行進して集まり、ネタニヤフ首相とその政権が、シンベトのロネン・バル長官(右派でなく、戦争ではなく交渉維持の立場でこれまでハマスとの交渉を担当してきた)と、バル長官を支持する司法長官を解雇しようとしていることに反発するデモを行った。
מאמצי הפריצה נמשכים pic.twitter.com/NaK6NJQtkC
— نير حسون Nir Hasson ניר חסון (@nirhasson) March 19, 2025
夜になると、デモ隊と警察が衝突し、水疱銃が使われる騒ぎとなり、少なくとも13人が逮捕された。
ネタニヤフ首相:右派に反発する左派ディープステートだと非難
国内からのこの反応を受け、ネタニヤフ首相は、公式のXにアカウントに、英語で、「アメリカとイスラエルでは、強力な右派指導者が選挙に勝つと、左翼のディープステートが、民意を妨害しようと、司法制度を武器にする。しかし、どちらの地でも勝てないだろう」と書き込んだ。
しかし問題があると判断したのか、30分もしないうちにこれを削除し、ネタニヤフ首相個人のXにこれをアップした。
In America and in Israel, when a strong right wing leader wins an election, the leftist Deep State weaponizes the justice system to thwart the people's will. They won't win in either place!
We stand strong together.— Benjamin Netanyahu – בנימין נתניהו (@netanyahu) March 19, 2025
ディープステートを持ち出したことで、ヘルツェル大統領は、「イスラエルの司法制度は民主主義の資産だ」とこれに反論。野党のラピード党首は、「ネタニヤフ首相はパニックになっている。軌道をはずれている」と述べた。
するとネタニヤフ首相は、ヘブライ語で、ディープステートとは何かを解説するクリップをアップした。このほかにもさまざまな衝突、反論が発生している。
*ディープ・ステートとは
ディープステートとは、闇の政府という意味で、特にアメリカ政府の一部(CIA、FBIなど)が、金融産業界のトップらと組んで、選挙で選ばれていない者たちが、政府を地下から操っているという陰謀論である。
アメリカでは特にトランプ大統領が、2020年に選挙で敗れた際に、ディープステートの陰謀だと言い出してから、広く知られるようになった。トランプ大統領としては、自分は選挙で勝っていたはずなのに、民意に反してバイデン前大統領が大統領になったと考えていたということである。
大統領に返り咲いた今、トランプ大統領はその解体を進めていると言われている。その一環の一つが、イーロン・マスク氏による政府効率化省(DOGE)である。
ディープステートが何かを定義づけるのは難しいが、トランプ大統領の主張からすると、右派のトランプ大統領を、左派のバイデン大統領が陰謀論で妨害したという経過から、右派を妨害する左派が、ディープステートという構図のようである。
確かに、今イスラエルで、政府に反対しようとする市民デモに立ち上がった人の多くは、左派系市民である。このため、ネタニヤフ首相は、今、イスラエルで発生している反政府デモは、ディープステートによるものだと言ったということである。
石のひとりごと
ネタニヤフ首相、大丈夫かな・・とちょっと懸念も覚える。しかし、この問題は奥がかなり深そうで、霊的な背景もあると思われる。
以前は、イスラエルにとって危険なのは、ネオナチといった極右勢力だと言われてきた。しかし、数年前にエルサレムで行われた、反ユダヤ主義のカンファレンスでは、これからの時代は、右派ではなく、極端な左派の方が、もっと危険だとの警告が出されていた。
左派は自分が正義だと確信しているので、ブレないからである。たとえば、“パレスチナ人を迫害するイスラエル”という考えが定着した左派の人は、全くの正義感をもって、躊躇なくイスラエルを攻撃する。
しかし、イスラエルの崩壊が目標ではない中、その分断はイスラエル国内にもある。大雑把に言えば、テルアビブは世俗派左派系、エルサレムはユダヤ教右派系という分断である。
この分断は、今、政府が右派系になる中、ユダヤ教超正統派たちの税金や、兵役が免除されているという不公平感から、拡大する傾向にある。イスラエル人は、意見をはっきり言うので、国内はなかなかの分断状態になりつつある。
しかし、こうした分断こそが、実は、イスラエルにとって最も国を失わせる要因になることは、歴史が証明していることである。
イスラエルにディープステートがいるのかどうか、それが関係しているのかどうか、確かなことはわからないが、イスラエルを破滅させようとする敵は、外からだけでなく、中でも働いているということは確かである。とりなしを!