エジプトでは3日、軍の介入で、ムルシ大統領を自宅軟禁となり、現存する憲法の停止が宣言された。翌4日には、ムスリム同胞団の霊的指導者を含む指導者30人が逮捕された。
一方、4日、軍によって推薦された法律家のマンスーリ氏を暫定大統領とする暫定評議会が発足。早期に憲法制定、大統領選挙と期待されているが、詳しい日程は明らかにされていない。
暫定政権には、軍以外でエジプトに存在するすべてのグループの代表が参加する形で、ムスリム同胞団にも共に国造りに参加するよう呼びかけられたが、同胞団は、参加を拒否している。
<ムスリム同胞団が対抗デモ:暴力から内戦への恐れ>
現時点では、世俗派らが主導しているようだが、ムルシ大統領支持者もけっして少なくはない。親ムルシ派のイスラム教徒たちは、「ムルシ大統領は自由選挙で過半数を取った合法的な大統領であり、今回の軍の動きはクーデターだ」と訴えている。
ムスリム同胞団は、5日金曜、イスラムの礼拝の直後に、「拒絶の金曜日」と呼ばれる反新体制デモに参加するよう、支持者らに呼びかけている。
軍は「平和的であること」を条件に、このデモを許可したが、大規模な衝突を避けるため、カイロ市内全域で軍が警戒態勢をとっている。
現在5日のイスラムの礼拝が終わって現在2時間程度。カイロでムスリム同胞団のデモが始まった。つい先ほど、ムルシ大統領が幽閉されている官邸近くで1人が射殺されたとのニュースが入っている。詳細はまだ不明。
<イスラエルの中東専門家:モルデハイ・ケダール博士の分析>
ケダール博士によると、ムルシ大統領は民主的な選挙で選ばれた大統領だった。しかも過半数を取っている。それをひっくりかえした今回の動きは基本的には筋の通ったものではない。
ムスリム同胞団は、政治的社会的イスラム団体だとされているが、それが母体となって、発生してきたのが危険なサラフィスト(聖戦主義者)である。
過激なイスラム主義サラフィストらからすると、ムスリム同胞団は”世俗過ぎる”ということで反旗を翻して脱退し、今では両者は互いに相容れない関係にある。しかし元をただせば同じ釜の仲間である。
エジプトのムスリム同胞団が、このままだまっているとは思えず、エジプトをイスラム国にするために、サラフィストとムスリム同胞団が手を結んで、反撃してくる可能性がある。そうなれば、エジプトもまた内戦へと泥沼に入っていく可能性がある。
BBCによると、世俗派で新体制推進派のエジプト人で元IAEA長官のエルバラダイ氏も、内戦に向かう危険性があることは知っておかなければならないと語った。*日曜からの政変で、エジプト全国での死者は50人となっている。
<複雑な立場のハマス>
ガザ地区のハマスもムスリム同胞団を母体としている。昨年、ムスリム同胞団のムルシ氏が大統領になったとき、ガザ地区のハマスは踊って喜んだ。
そのわずか1年後のムルシ大統領の失脚を受けて、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、新体制の始まりに期待するといった意向を表明したが、ハマスは昨日まで沈黙を続けていた。昨日”小さな声”で新体制を支持すると言ったらしいが、メディアにもほとんど取り上げられることはなかった。
ハマスはムルシ大統領の失脚でますます孤立する可能性がある。しかし、ハマスはシリアの反政府勢力を支援すると表明してから、すでにここしばらくイランやヒズボラからの支援をかなり削減されていたのである。
今後ハマスが生き残る道が、アッバス議長との和解しかない・・という状況になる可能性を指摘する分析もある。
<イスラエルは??>
ネタニヤフ首相は、政府閣僚たちに、エジプト情勢についてメディアに発言することを禁じたと伝えられている。そのため、イスラエルでもエジプト情勢はニュースのトップだが、政府のコメントはいっさい報じられていない。
アメリカのオバマ大統領は、エジプト情勢が不安定であるため、アメリカからエジプトへの年15億ドルにのぼる軍事支援を見直す考えを明らかにしている。