今月7日から9日、ジュネーブで行われたイランと6カ国の核兵器疑惑に関する直接交渉。途中で外相級にまで格上げとなり、合意に至るかとも報道されたが、最終的には合意に至らなかった。
しかし、しばし間をおいて、2週間後の今週20日から22日、再びジュネーブで交渉が再開されることになっている。
イランへの制裁緩和をもりこむ今回の取引に反対するネタニヤフ首相は、この10日間、必死の外交戦略を展開している。
とにかくあらゆる機会をとらえ、口を開けば、しつこいほどに「今イランへの経済制裁を緩和してはならない。今6カ国がイランと合意しようとしている取引は非常に悪い(Bad Deal)」とかなり強い表現で、主張し続けている。
結果、イランとの取引を進める立場をとっているアメリカのオバマ大統領、ケリー国務長官との関係も怪しくなってきた。
それでもネタニヤフ首相は、「イランの核保有は、明らかにイスラエルの存在に対する脅威だ。だれがなんと言おうが、私は首相として、イスラエルの存続を守らなければならない。」と主張した。
交渉直前になるが、今日17日、6カ国の1つ、フランスのオーランド大統領がエルサレムに到着した。無論、イラン問題についての話が中心になるとみられる。
オーランド大統領が帰った翌日の20日、ネタニヤフ首相はモスクワへ飛び、やはり6カ国の一つロシアのプーチン大統領に会うことになっている。
<ネタニヤフ首相をサポートする動き>
1.制裁か緩和か:もめるアメリカ議会
オバマ大統領は、イランとの取引をすすめたい方針だが、アメリカ議会には右派のイスラエル支持派が多数おり、そうは問屋がおりない・・というところ。
下院では数ヶ月前にイランへの新たな経済制裁を可決。今ちょうど上院がその件に関する協議を行っている。もしかしたら、ジュネーブでの交渉が始まる前日に「イランへの新たな制裁」を可決してしまう可能性がある。
2.昨日の敵は今日の味方!?サウジアラビアがイスラエルに協力か
6カ国とイランが取引をしようとしていることについて、怒っているのはネタニヤフ首相だけではない。スンニ派の湾岸アラブ諸国も同じである。
以前より、サウジアラビアは、イスラエルがイランを攻撃するなら、領空通過を受け入れるとする意向が報じられていた。しかし、今ではサウジアラビア以外の湾岸諸国も協力するとの意向が報じられている。
3.パワフルな友好国!?フランスのオーランド大統領エルサレム訪問
フランス政府は伝統的にイスラエルには協力的だが、ジュネーブでの交渉が再開される直前の17日、オーランド大統領が、ファビウス外相など閣僚を多数引き連れて、エルサレムに到着した。
オーランド大統領一行は、ベングリオン空港で、ペレス大統領とネタニヤフ首相に赤絨毯で迎えられた。オーランド大統領も「フランスは、常にイスラエルの友人」とヘブル語で挨拶するなど、友好国ぶりをアピールしている。
滞在は、3日間滞在の予定で、18日には、ラマラでアッバス議長にも会うことになっている。
*オーランド大統領・美人の奥さま
ペレス大統領官邸でのオーランド大統領歓迎式典を取材させてもらった。カメラ不可の執筆記者として式典に出席したのだが、カメラがないと、「えっここでいいんですか~」というような最前列、ど真ん中の席に通された。
オーランド大統領はテレビで見るのと全く同じだった。そばについていた奥様がすらっとしてなかなかの美人。ファビウス外相などフランス政界の大物もずらり。ファビウス外相はジュネーブでの交渉にも出席する人物だ。
歴史を動かす大国の一つフランス。フランスのために祈れと主に言われたような気がした。
<石のひとりごと:ジュネーブ交渉どう祈る!?>
イランと6カ国の交渉だが、ケリー国務長官は、もし何らかの合意に至ったとしても、最終的な合意の入り口に過ぎないと言っている。
しかし、その入り口がこれからの交渉の方向性を左右し、さらにはもう元へは戻れないということになるのだから、非常に重要な決断である。
ネタニヤフ首相がこれだけ頑張っている以上、もし、イランの核兵器保有を助長するような決断になれば、イスラエルがイランを攻撃するようなことが本当にあるかもしれない。
政治・外交には相当深い計算が動いているので理解しえないが、イスラエルの存続が危うくならないよう、かつイランもOKできるような何かが見つかり、最善の方法で今のこの危機を乗り越えられればと思う。奇跡に近いが・・・。