イランの武器禁輸措置延長を認めず:国連安保理 2020.8.17

国連安保理

14日、国連安全保障理事会は、10月中旬に期限を迎えるイランの武器禁輸措置を延長しないことを決めた。これにより、このままであれば、イランは、10月以降、大手をふって武器を輸出できるようになる。

<イランの武器禁輸措置とは>

イランへの武器禁輸措置は、イランの核兵器開発が問題となった2007年に、安保理で決まった措置である。その後、2015年に、アメリカと、P5+1(中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリス、アメリカ)が、イランが核開発を停止することを条件に、経済制裁を解除するとともに、武器に禁輸措置も5年後には期限を迎えるとしていたのであった。(JCPOA)

その5年後が、今年10月に来るということである。アメリカは、イランが危険なテロ組織や、国に武器を輸出することを防ぐ必要があるとして、この禁輸措置の延長するための決議を行うよう、国連安保理に提出したのであった。

ところが、14日行われた安保理では、イランへの武器禁輸措置延長に賛成したのは、アメリカ以外には、ドミニカ共和国の一票だけで、中国とロシアは、反対。その他、ヨーロッパ諸国を含む11カ国は棄権票を投じたことから、否決されたのであった。

www3.nhk.or.jp/news/html/20200815/k10012568011000.html

この決議が出ると、イランのロウハニ大統領は、”半分死んでいる”2015年の合意をアメリカは潰し損ねたとして、「ワシントンの恥だ。世界の傲慢の没落が世界の歴史に記される日だ。」と述べた。

www.timesofisrael.com/irans-rouhani-uae-made-huge-mistake-with-israel-normalization-deal/

<アメリカの逆襲:スナップバック制裁とは>

イランへの武器禁輸措置が、10月にも期限切れを迎えることは、非常に危険なことである。ポンペイオ米国務長官は、国連安保理は、イランんp暴力に直面している中東の多くの諸国からの要請を拒絶したのだ。」と述べた。

www.haaretz.com/middle-east-news/iran/.premium-netanyahu-slams-scandalous-un-vote-against-extending-iran-arms-embargo-1.9075457

アメリカは国連安保理の決議を受けて、すぐにも「スナップバック」制裁に向けた手続きを始めると発表した。スナップバック制裁とは、2015年のJCPOA合意以前のイランへの厳しい制裁を復活させるということである。

2015年のJCPOAでは、もしイランが核開発に関する取り決めに違反した場合、合意まで続けられていた国際的な制裁を再開できるという取り決めが含まれていた。トランプ大統領はこれを使って、イランへの制裁と、禁輸措置を延長させると言っているのである。

しかし、アメリカは、2015年のイランとの合意からすでに一方的に離脱していることから、その立場で、JCPOAの取り決めをベースにした主張は法的にも認められないとみられている。

edition.cnn.com/2020/08/15/politics/trump-iran-sanctions/index.html

<ネタニヤフ首相:スキャンダルだ>

国連安保理が、イランの武器禁輸制裁の延長をしなかったことについて、ネタニヤフ首相は、「恥ずべきことだ」として、イスラエルは、続けてアメリカと協力しながら、イランの武器密輸に対処していくと述べた。

www.haaretz.com/middle-east-news/iran/.premium-netanyahu-slams-scandalous-un-vote-against-extending-iran-arms-embargo-1.9075457

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。