今年の国連総会は、サウジアラビアの石油施設が何者かの攻撃を受け、一時、原油産出量が半分にまで落ち込んだという事件の直後であった。アメリカとサウジアラビアは、イランによるものとの正式発表を行った。イランは、これを今も否定している。
アメリカによるイランへの軍事攻撃が懸念されたが、トランプ大統領は、イランとの戦争は望まないとして、イランへの経済制裁を新たに発動。サウジアラビアへ、パトリオット迎撃ミサイルなどとともにアメリカ軍200を派遣するに留めた。
ニューヨークタイムスによると、現在、中東全域にいるアメリカ軍は計2000。そのうち500がサウジアラビアに駐屯しているという。
www.nytimes.com/2019/09/26/world/middleeast/troops-defense-saudi-pentagon.html
<国連総会:イランとアメリカの対談実現せず>
こうした動きがある中で、毎年恒例の国連総会が24日から開催となった。世界は、この総会でニューヨークに来るイランのロウハニ大統領とトランプ大統領の首脳会談が実現するのではないかと期待した。
サウジアラビアへの攻撃以来、核合意を維持するため、先頭に立ってイランとの対話を進めているフランスのマクロン大統領は、ロウハニ大統領との対話を続け、イランとアメリカ首脳会談の用意は整ったと思うと発表した。
その後、ロウハニ大統領は、トランプ大統領が、経済制裁を緩和することと引き換えに首脳会談を行うことを示唆したとメディアに伝えた。しかし、トランプ大統領はこれを否定。最終的に、両首脳の会談は実現しなかった。
トランプ大統領はあくまでもイランとの戦争は避けたいと言っているが、緊張は続いている。
*ロウハニ大統領と安倍首相との会談
イランの原油輸出得意先である日本。安倍首相が、24日、イランのロウハニ大統領と会談した。イランとトランプ大統領との架け橋になろうとしたとも伝えられたが、その後に動きは出ていない。
安倍首相は、サウジラビアを攻撃したのはイランであるとし、イランにはその叡智に基づく行動を期待すると述べた。いいかえれば、安倍首相はアメリカの立場をイランに伝えただけであったといえるかもしれない。
www3.nhk.or.jp/news/html/20190925/k10012098101000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
<トランプ大統領の弾劾騒動>
こうした中、25日、アメリカの民主党幹部のペロシ下院議長が、トランプ大統領(共和党)への弾劾調査を開始すると発表し、世界を驚かせている。
弾劾の根拠は、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領(ユダヤ人)に、来年の大統領選挙でライバルとみられるバイデン前副大統領の息子のウクライナでの活動を調査するよう、圧力をかけたというものである。
民主党は、この時のトランプ大統領とゼレンスキー大統領との会話に違法性を主張するが、トランプ大統領は、会話は軍事関係のものであり、違法性はない。これはまるで悪魔狩りのようだと、訴えを否定した。
トランプ大統領は、中東、世界をひっくりかえすことのできる立場にある人物だが、彼が失墜した時もまた、アメリカが大転換することによって、世界をひっくりかえすことになるのかもしれない。なかなか危なっかしい話である。