イランで冬に停電の危機・リヤル史上最低に下落 2024.12.20

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イスラエルを攻撃し続けてきた、イランの枢軸、ハマス、ヒズボラ、アサド政権が崩壊し、今最後のフーシ派も、イスラエルの攻撃を受けて、相当なダメージを受けている。

こうした中、イラン本国も厳しい寒さの中、電力不足に陥り、史上最低のリヤル安に直面している。

イラン国内氷点下で停電・通貨価値市場最低に下落

ハマス、ヒズボラ、アサド政権と枢軸を次々に失っているイラン。国内でも深刻な事態になっている。寒い冬を前に、エネルギー不足で深刻な停電に陥っており、通過リヤルの価値が、史上最悪までに下落しているのである。

1)停電

イランはここ10年ほど、少なくとも5ー6年前から旱魃が続いており、水不足に陥っていた。イランの水不足、電力不足を取り上げているニュースは、早いもので9年前に出ている。続いて、3年前、2年前と毎年とりあげられていた。

しかし、有効な対策はとられていなかったか、地球温暖化でもはやまにあわなかったかで、状況は改善していなかった。

今、いよいよ水力発電をも制限しなければならなくなり、これまでは、夏に行っていた停電を、今年は、冬にも実施を余儀なくされている。以下は2年前のニュース映像。このまま何もしなければ広範囲な停電に陥ると警告している。

イランは、石油産国で、世界第2位の天然ガス保有国だが、中東での戦争と、国際社会からの経済制裁に対応するため、政府は、海外への輸出を重視し、国内への供給を削減していたもようである。

加えて、経済の悪化から、発電所の老朽化に対処できていないことも、電力不足の原因と指摘されていた。

アルジャジーラによると、今年8月に就任したペゼシュキアン大統領は、大気汚染を防ぐために、安い燃料を燃やすことは避けると発表し、その直後から国内での長時間の停電が始まった。

その後、10月、11月と寒さが忍び寄る季節になっても、昼間に長時間停電になっている。

12月18日(水)、イランでは氷点下に陥る中、燃料不足で発電所13カ所が稼働を停止した。このため、政府は、学校や大学、銀行、官公庁を閉鎖し、社会が麻痺する事態に陥った。

今後、企業や経済活動に大きな影響が出てくると懸念されている。

www.aljazeera.com/news/2024/12/18/iran-key-services-shut-as-rial-plunges-amid-energy-crisis-regional

2)イラン通過価値急落

こうした中、イランの通過リヤルは、11月にアメリカでトランプ氏が次期大統領に決まった時点で、1ドル=77万7000リヤルだったが、そこから10%以上下落して70万3000ドルとなった。(これは日本円で言うなら、1ドル150円だったとして、一気に165円になったという感じである。)

イラン経済の悪化には、もう一点、ビットコイン(仮想通貨)の要因も挙げられている。ビットコインの価値は、ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に決まった時、急に10万ドルにまで記録的にはねあがった。その後6万ドルにまで下落している。

筆者は経済には詳しくないので仕組みはよくわからないのだが、イランでは、ビットインの利用者が多く、AP通信によると、これが、イランの経済悪化にさらなる悪影響になった可能性もあるとのこと。

apnews.com/article/iran-us-dollar-rial-sanctions-859e66dc14549fd77a790d717819b1a7

www.timesofisrael.com/iranian-rial-falls-to-record-low-amid-war-energy-crisis-and-anticipation-of-trump/

石のひとりごと

これまでイランとイスラエルを追いかけてきた中で思うことは、イランは、イスラエルを亡き者にすると、国家権力の立場で宣言しているが、その姿勢を明らかにするたびに、何らかの国難に直面してきたということである。以前は、大洪水が発生したこともあった。

イラン人は非常に優れた人々だと言われている。こんな繰り返しに気がつかないはずはないだろう。実際、現政権を打倒したい人は少なくないと聞く。イランに住む人々を覚え、その救いのためにも祈っていきたい。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。