イランでこれまでにない深刻な旱魃:現政権存続の危機か 2025.11.12

Many lakes such as Lake Hamun in Iran's southeastern Sistan and Baluchistan province have dried upImage: Sadegh Souri/Middle East/picture alliance

イランの危機的旱魃

イランは数十年前から警告されてきたが、ここ6年はずっと深刻な水不足が続いていた。BBCによると、この秋は、前例にないほどの旱魃(降雨量が昨年から92%減)に見舞われている。

特に首都テヘラン(人口約1400万人)では、ダムの貯水量が3%以下にまで干上がって、貯水池がほぼ空となっており、政府は、市民に節水を呼びかけている。まもなく、夜から始まって断水を余儀なくされるとみられる。

ペゼシュキアン大統領は、もし今後も雨が降らなかったら、水を配給制にしなければならなくなるが、それすらできなくなったら、市民はテヘランから避難を余儀なくされるかもしれないとまで述べた。

しかし、イランの旱魃には、インフラの古さ(100年前製造)と、今年6月のイスラエルを攻撃した際、その反撃で攻撃されたテヘラン北部では、洪水になっており、重要な水インフラが破壊された可能性もある。

www.bbc.com/news/articles/cy4p2yzmem0o

イランの現政権を支持する市民は少ないと言われているが、この旱魃でいよいよ政権崩壊になる可能性もある。

しかし、それでもイランは、今もイスラエルとの対立姿勢を崩していない。11月4日、テヘランでは、1979年にイランがアメリカ大使館を占拠し、400日間人質をとった事件から46年を記念する集会が行われ、市民たちが旧アメリカ大使館前に集まって、反米を叫んでいた。

www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20251104_18/

また青い服の人形2体を首からぶら下げて、「Down with Israel(イスラエルと共に滅びよ)」と書いた掲示板を掲げていた。

さらに、Times of Israelによると、イランは、高度なミサイルの備蓄回復を図っていると発表した。いかに危機的旱魃でも、イランの姿勢に変わりはないということである。

現政権打倒なるか?2ヶ月前に政権打倒と引き換えに水支援を呼びかけたネタニヤフ首相

ネタニヤフ首相は、この夏、イラン国民に対し、10月、11月には、イランで旱魃が危機的になると警告し、現政権を打倒するなら、水不足への解決を提供すると呼びかけていた。

Times of Israelが、イスラエル当局の情報として、伝えたところによると、イスラエルは、トランプ大統領の任期が終前に、現政権を転覆させることを目標にしているとのこと。

石のひとりごと

イランで大旱魃になる中、イスラエルは淡水化技術に成功するという、なんとも皮肉な状況である。

思うに、イスラエルに敵対することでは苦難がくるが、イスラエルと和平を結べば、問題の解決がすぐにも与えられるという状況が、まるで絵に描いたように示されている。

イラン人の中には優れた人も多く、現政権に反発する人の方が多いと聞く。イランの回復のためにも、シリアのように、今の強硬なイスラム政権からより寛大な政権に変化が起こることを祈る。

www.timesofisrael.com/report-senior-official-says-israel-aims-to-topple-iranian-regime-by-end-of-trumps-term/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。