先週、リビアでアメリカ領事館が襲撃され、スティーブン大使が殺害された件。リビア政府は現時点で50人のアルカイダ系犯行グループを逮捕した。
これとほぼ同時に、エジプトのカイロでもアメリカ大使館が襲撃され、星条旗が燃やされた。これについては、アメリカ国籍の人物が作成したイスラムの預言者ムハンマドの映画(予告編としてユーチューブに流されたもの)に反発したもので、その後、数千人の群衆のデモに発展している。
この映画をめぐるイスラム教徒の反米デモは、エジプト続いて、スーダン、チュニジア、イエメンなど、中東全域、北アフリカ、フィリピン、インドネシアなど20カ国に広がっている。
いずれも数百人から数千人規模の群衆で「アメリカに死を」などと叫びながらアメリカとイスラエルの旗を燃やしたりしている。ケンタッキーフライドチキンやマクドナルド(アメリカの象徴とされる)が襲撃されたという報告もある(インドネシア)。
<イスラエル>
金曜にはイスラエルにもこの波が上陸。東エルサレム、アッコで反米デモが行われ、治安部隊と衝突したが死者負傷者はなし。パレスチナでは、ラマラとガザでデモが行われた。
今週に入ってもこの波は収まらず、昨日パキスタン、アフガニスタンでは死者も出ている。ヒズボラのナスララ党首は、レバノンで3年ぶりに群衆の前に現れ、数万人とも見えるイスラムの群衆にむかって「世界はこの映画がいかにイスラムを侮辱しているのかみえていない。」と全世界的に反米行動をおこすよう呼びかけた。
*BBC www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-19623999
イランの最高指導者ハメネイ師は、この反イスラム的とされるビデオクリップについて、西側諸国指導者に対し、「西側は、イスラムに対する敬意を現すべき」とのコメントを出した。イランはこの映画について国連に陳情書を出すもよう。
*映画の作成者は誰?
問題の映画だが、誰が作成したかは不明。当初イスラエル系ユダヤ人でアメリカ国籍の人物と伝えられたが、後にエジプト系コプト教徒(キリスト教の一派)でアメリカ国籍と伝えられた。別の人物の名も上がっているが、いずれにしても明確ではない。
<アメリカの反応>
アメリカのクリントン国務長官は先週、「この映画とアメリカはなんの関係もない」と反発。グーグルにこの映画の予告編の取り下げを申請したが、グーグルはこれを受け入れなかった。イスラエルでは「アメリカは、これまでイスラム世界の過激化についてのイスラエルからの警告を軽んじてきた。大使館が襲われて初めて気がついている。」との冷ややかな反応である。