イスラエル軍がシリアのアレッポ周辺を空爆:映画なみ・昨年のシリア領内ミサイル量産工場破壊作戦を公表. 2025.1.4

Members of the IAF’s Shaldag unit prepare to carry out a raid against an Iranian missile factory in Syria, September 8, 2024. (Israel Defense Forces)

アレッポ周辺をイスラエルが空爆

イスラエル軍は、11月末にシリアで反政府勢力が立ち上がるやいなや、シリア領内全域にあったアサド政権軍事施設、言い換えれば、イラン関係地点を空爆し、その80%以上は失われたと言われるほどの打撃を与えていた。

その後、アサド政権は崩壊。イスラエルは、緩衝地帯とヘルモン山で睨みをきかせながらも大きな攻撃には出ていなかった。

しかし、2025年に入り、1月2日(木)、イスラエル軍は、シリアのアレッポ近郊にあった、シリア軍の防衛施設と科学研究センターへの空爆を行った。この攻撃による死傷者についての情報はない。

www.timesofisrael.com/israel-said-to-hit-defense-facility-scientific-research-center-near-syrias-aleppo/

シリアでアサド政権を転覆させたHTSのアル・シャラア氏は、先週、イスラエルに対し、これ以上の攻撃は不要だと牽制していたが、今回の攻撃も事実上黙認していたとみられている。

まるで映画!IDF特殊部隊がシリアの地下ミサイル工場破壊作戦(昨年9月)を公表

上記攻撃の翌1月3日(木)、イスラエル軍は、昨年2024年9月8日、まだアサド政権の時代に、極秘で行っていたシリア領内地下にあるミサイル製造工場を無力化していたことを発表した。

この工場は、イスラエル国境から北へ200キロ離れたハマ西部マシャフ地方にあり、山麓にそって、馬蹄形に、地下70-130メートルにある大規模なミサイル量産工場であった。

製造予定のミサイルは、射程300キロの長距離ミサイル、射程130キロの精密誘導ミサイル、射程40-70キロの短距離ロケット弾などで、年間100-300発を製造できるとみられていた。

イランは、この工場を2017年に着工し、2021年までに設立を完了。設備の搬入を始め、イスラエル軍が破壊した時には、ミサイル2発が、テスト発射される寸前だったという。

イスラエルは、この間ずっとこの施設の情報をずっと、長年把握し続けていたということである。

そうして、昨年9月8日に、これを破壊する作戦「Operation many ways(多方向作戦) 」を実施した。シリアまで行ったのは、ヘリコプター2機、戦闘機21機、偵察機14機、ドローン5機だったが、失敗に備え、戦闘機30機が、イスラエルで待機していたとのこと。

これだけの部隊がシリア領空に入れたのは、前の攻撃で、シリアの防空機能がかなり低下していたことが功を奏していたとみられる。

工場は、地下70〜130地下にあったため、空爆だけでは破壊できないため、ヘリコプターに乗っていた、シャルダク特殊部隊100人が、陸地に降り立ち、シリア軍の反撃に対処しながら、地下へ降りて行った。

医療部隊含む兵士20人を乗せたヘリは、負傷兵が出た場合に備え、そのまま上空にとどまった。戦闘機は、周囲のシリア軍への攻撃を続けた。

強固な入り口を突破して中に入った特殊部隊は、工場内で情報収集するとともに、1トン近い遠隔爆弾装置を設置し、約2時間半後、ヘリに戻り、すべて爆発させた。

地震かと思われるような膨大な爆発だったという。その後、イスラエル軍は死傷者なく、全員が無事にイスラエルに帰還した。

作戦終了でイスラエルに帰還した部隊兵たち IDF

シリア軍兵士数百人が現場に到着したのは、イスラエル軍がすべて撤退してから1時間たってからであった。

シリアは、この作戦で、死亡したシリア兵は14人、負傷者43人と報じていたが、イスラエル軍は、警備員たち約30人が死亡したとみている。

このミサイル工場は、もし稼働し始めた場合、イランが、本国から運ばずとも、ヒズボラやアサド政権に、ミサイルを供給できたはずである。

特に、当時、ヒズボラが、イスラエル北部へ10月7日のような攻撃をすると言われていたが、イランは、その際に同時にイスラエルに、激しいミサイル攻撃を計画していたとみられている。

この作戦により、イスラエルに対する相当大きな攻撃が阻止されたと考えられる。

www.timesofisrael.com/120-commandos-deep-inside-syria-idf-reveals-daring-raid-on-iranian-missile-factory/

石のひとりごと

ネタニヤフ首相は、イスラエルが今、ハマス、ヒズボラを追い詰め、フーシ派、またその背後にいる親玉のイランにも矛先を示唆することで、中東で最強の国はイスラエルという、認識を取り戻そうとしていると言われている。

実際、ハマスという、そう強くないテロ組織に、国民1200人も殺されるという、とんでもない弱さを見せてしまった今、早急に強い無敵のイメージをとりもどす必要があるということである。中東では、外交ではなく、実質の力こそが、防衛力になるからである。

しかし同時にまた、高ぶらないようにとも思う。イスラエルの使命は、栄光は主に・・だからである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。