イスラエル感染109人:感染拡大防止に全力 2020.3.13

嘆きの壁:3月11日 出展:Jacob Magid / Times of Israel 

イスラエルでは13日現在で、109人が感染。このうち91人が入院している。重症は、2月末、ギリシャからの観光グループのバスを運転していた、東エルサレム在住の男性1人となっている。なお、このイスラエルから帰国して感染が明らかとなったギリシャ人の男性1人が死亡。ギリシャでの死者第一号となっている。

あらたな感染者は、グッシュ・エチオンの著名なラビから小学生、スポーツ選手と様々である。13日の報道では、6カ月の赤ちゃんの感染が確認された。また、新型コロナ最前線であったテルアビブのシェバ・ホスピタルでは、3月2日にフランスから帰国し、翌日から出勤していた医師から新型コロナが検出された。

www.ynetnews.com/article/92YYUB92N

ネタニヤフ首相は毎日、対策を強化している。

1)空港での水際対策強化

イスラエルは、9日以来、外国から来る人々はすべて、14日間の自主隔離を義務付ける厳しい水際対策が続けてきたが、しかし、12日からは、中国、韓国、日本など感染が拡大する国の人々は、入国を認めないと発表した。

空港ではがらんとしたアライバルホールに、たまに入国してくる人々がいるが、ほとんどが、イスラエル人である。12日には、ダイヤモンド・プリンセス号で感染し、日本の病院にいた最後のイスラエル人が、イスラエルへ帰国した。この人々は皆、これから2週間の自主隔離に入る。

海外からイスラエルへ帰国するイスラエル人の情報はすべて政府が把握し、警察が、自主隔離をしているか監視している。もし、感染者が出るとその人が利用したフライトやバス、訪れた場所など、すべて新聞に掲載され、その時間にそこにいた人は、すべて自主隔離を義務付けられる。

また、イスラエル政府は、あらたに、ベングリオン空港とエルサレム、テルアビブをつなぐ電車について、空港からの乗客は、乗せないことを決めた。電車を利用できるのは、空港へ向かう空港関係者か、出国のために、空港に向かう人のみとなっている。

2)旧市街の様子:チーフラビが、嘆きの壁への訪問自粛指示

嘆きの壁や、聖墳墓教会(イエスが十字架にかけられたゴルゴダの丘とされる教会)では、壁や石に触れてキスをする習慣があるが、(主に国内からの)巡礼者たちの間に、とまどいはあるようだが、祈りに来て石にキスをする人の姿は、どちらの聖地にも、今もみられている。

www.timesofisrael.com/to-kiss-or-not-to-kiss-the-question-for-old-city-pilgrims-amid-virus-outbreak/

イスラエルでは、10日、11日とプリムであった。通常なら仮装した人々でにぎわうエルサレムの町に出ていた人はまばらであったようである。エルサレム在住、CBNのカメラマン、ユダ・カメ-ロさんがアップした映像:

Times of Israel によると、12日、イスラエルの2人のチーフラビ、アシュケナジーのラビ・ラウと、スファラディのラビ・ヨセフは、「ユダヤ教の律法で、政府保健省の出す制限に反するものはない。保健省の指示に従うように。」と述べて、ユダヤ人たちに嘆きの壁への訪問を自粛するよう発表した。

ラビたちは、「天からの憐みがあるまで、皆、家の近くで祈るように」と言っている。

www.timesofisrael.com/chief-rabbis-call-off-large-prayer-gatherings-at-western-wall/

3)学校閉鎖と高齢者ホームへの訪問制限

13日からは、幼稚園と特殊なケアを必要とする子供たちの学校以外は、大学まですべてが、来月の過越の祭が終わるまで休校とされた。大学生は、インターネットでの授業になるとのこと。

www.jpost.com/HEALTH-SCIENCE/Coronavirus-Teachers-Union-calls-on-Education-Ministry-to-shutter-schools-620688

この他、国内では、高齢者ホームなど、高齢者が多数いるところへの出入りを差し止めるとした。家族が訪問する場合は、施設の外で面会することとなっている。

4)100人以上の集会禁止:独立記念イベントなど縮小へ/span>

これまで5000人以上の集会は禁止であったところ、2000人となり、12日には100人以下とされた。これを受けて、4月末に予定されている第72回独立記念イベントは、大きなパーティは中止。エルサレムでの国家式典は観客なしで実施するとのこと。戦没者記念日とホロコースト記念式典も縮小した規模での開催となる。

www.ynetnews.com/article/SkxytSBHU

海外での式典は概ね中止になるもよう。

www.jpost.com/Israel-News/Overseas-Yom-Haatzmaut-events-canceled-amid-coronavirus-fears-620560

<パレスチナ自治区・ガザ地区について>

パレスチナ自治政府保健省によると、12日の時点で、閉鎖されているベツレヘムで30人の感染者が確認されている。その他の地域では今の所、感染者は報告されていない。アッバス議長は3月5日から30日間の緊急事態宣言を出している。

ハアレツ紙の報告によると、ナブルスでは、町に出入りする車を消毒するなどの作業が行なわれているもようである。人の行き来が減ることによる、経済的な打撃は、パレスチナ側も同様である。

www.haaretz.com/israel-news/.premium.MAGAZINE-without-even-a-single-coronavirus-case-nablus-is-glum-and-subdued-1.8669742

ガザ地区は今も感染者なしであるが、人口密集地であるため、もし感染者が出た場合、爆発的に増えることは避けられない。その場合、イスラエルも無関係でいることはできないので、ガザに新型コロナが入らないよう、イスラエルは注視している。

www.haaretz.com/middle-east-news/.premium-coronavirus-in-gaza-a-death-sentence-for-caged-palestinians-1.8667596

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。