イスラエルではアラブ人地域での犯罪による殺人事件が増加している。マフィア関連、部族間闘争、家族内問題などによる殺人である。アラブ系市民たちは、警察がユダヤ人地域より警備がおろそかだと訴え続けている。
こうした中、今年1月だけで21人が殺害され、昨年2024年同時期の倍となった。警察は1月28日(火)に、北部アラブ人地域のウム・エル・ファハンで、警官1000人による一斉捜査を行っていた。
結果として、職場での経済問題容疑で31人、未登録の車の運転で33人の身柄を拘束し、5キロの麻薬を押収していた。
ウム・エル・ファハンは、小さなアラブ人村ではなく、市レベルの地方自治体である。しかし、これほど大きな捜査であったにもかかわらず、自治体には何の連絡もなかったという。
サミール・モハンマド市長は、突然住民から、多くの電話がかかってきたので、警察に問い合わせて初めて捜査を知った。侮辱された気がしたと語っている。
またこのわずか2日後の31日(金)には、ウム・エル・ファハンで銃撃と車突っ込みによる殺人事件が発生。3人が死亡した。モハンマド市長は、警察が十分なことをしていなかったということだと訴えている。
その後の2月3日(月)深夜過ぎ、北部では、キオスク近くでアラブ系民3人が射殺された。また同日、ロッドでは、14歳のアラブ人少年が射殺され、その数時間後、別の町の診療所のアラブ人医師が殺害された。2月3日の時点での死者数は29人となった。
2024年1年で殺害されたアラブ系市民は244人だが、2025年はこれを上回ると予想されている。
なお、イスラエルで警察を統括してきたのは、イスラエルはユダヤ人だけの国と考えている極右政治家ベン・グヴィルであった。しかし、ベン・グヴィル氏が、今年1月19日に連立から離脱。その後は、カッツ国防相が、警察も管轄している。
アラブ系市民たちは、ネタニヤフ首相に対し、もっと本気で治安の維持のために働く人を国家治安大臣に任命してほしいと訴える書状を提出した。
www.timesofisrael.com/boy-14-shot-dead-in-lod-in-5th-murder-in-arab-society-within-a-day/
石のひとりごと
今年に入ってからだけで29人が殺害されたとは、なかなか深刻である。しかし、エルサレム、テルアビブなどで、殺人が横行しているわけではない。あくまでもアラブ系市民の間での彼らの居住区での犯罪系殺人事件である。
イスラエルの治安部隊は今、ガザ、西岸地区、北部など合計7つの前線をカバーしている。また国内の刑務所には、ガザからとらえてきたテロ容疑者も加わって、許容量を大きく超えている。
ユダヤ系市民とアラブ系市民の取り扱いに差別がないとはいえないが、今は、治安部隊がぎりぎりで回っており、アラブ系市民の間での闘争にまで手が回らないということも十分ありうる。このような流れが止まるように祈る。