イスラエル国内の分裂深刻:右派勢力・超正統派・世俗派それぞれの訴え 2024.8.3

Israeli soldiers and police clash with far-right protesters, after they broke into the Beit Lid army base over the detention for questioning of military reservists who are suspected of abuse of a Palestinian terror suspect detained there, on July 29, 2024 (Oren Ziv / AFP)

イスラエルは的に3方向から囲まれ、いつ深刻な戦争が始まるか外国フライト便が次々にキャンセルをされる事態になっている。しかし、国内は相変わらず分裂の様相が深刻になっている。中にはイスラエル人同士の乱闘にもなっていた。

*注)これらは一時的に発生したものであって、国内の日常生活に大きな変化があったわけではない。

極右活動家・政治家がイスラエル軍施設に殴り込み

7月29日、極右活動家らが、パレスチナ人テロ容疑者への虐待容疑で逮捕された兵士たち9人が拘束されていた、ベエルシェバ近郊のベイト・リド・イスラエル軍基地に殴り込み、乱闘騒ぎとなった。この暴動に参加したのは、基地に入らなかった人も含め1200人にのぼっていた。

その後、暴徒は、数時間後、別のイスラエル軍の裁判所があるスデ・テイマン軍事基地を襲撃。「英雄たちを逮捕するのは恥ずべきことだ」と叫びながら、暴力的に施設に入ろうとした。

イスラエルでは、ガザや西岸地区で逮捕されたハマス他、様々な組織のテロリストが、逮捕されており、もはやそのキャパを超える事態になっている。

そうした中で、戦争が長引き、イスラエル兵による虐待行為が指摘されるようになっていた。その暴力については集団レイプも含まれると言われている。

しかし、極右政治からすると、敵であるパレスチナ人を保護する対策こそおかしいのであって、逆にイスラエル兵を逮捕する方がおかしいと怒り狂ったということである。

この暴徒を集めたのは、極右政党オツマ・ヤフディ党の文化遺産相、宗教シオニスト党議員たちであった。リクードの議員も目撃されている。しかし、暴徒だけでなく、女性も含む一般人も多く参加していた。

警察が暴徒を鎮圧した後、イスラエル軍のハレヴィ参謀総長が現場を訪問。「まるで無政府状態であり、戦争をしている中で、イスラエル軍だけでなく、国家、国民に多大な損害を与える行為だ」と述べ、これ以上に深刻なことは起きないようにしなければならないと述べた。

野党代表のラピード氏は、「危険なファシスト」と呼び、これを取り締まれないネタニヤフ首相は国家を代表する資格はないとい行った。

www.timesofisrael.com/bordering-on-anarchy-idf-chief-sounds-alarm-after-right-wing-mob-overruns-2nd-base/

これについては、世界のメディアに取り上げられ、イスラエル兵が、パレスチナ人容疑者にいかに酷い暴力を振るっているかが強調されることとなった。まさに、敵に侮りを与える結果になっていた。

超正統派が従軍拒否のデモ

1日、夜のラッシュアワーに、テルアビブに近いブネイ・ブラックで、ユダヤ教超正統派たちが、従軍を拒否して、主要4号線を3時間封鎖した。

6月に高等裁判所が、超正統派にも従軍義務があるとして、その対象が6万3000人と定め、まずは1000人に徴兵の令状を出したところである。それにどのぐらい応じているかは不明である。そうした中での、このデモであった。

また31日には、ブネイ・ブラックで従軍に応じた超正統派たちを支援するプログラムを推進しているラビ・デービッド・レイベルの家に侵入を試みてもいたという。超正統派の中でも従軍拒否派と従軍推進派がいるということである。

世俗派がガザ戦争300日目・人質解放デモ

1日は、10月7日からちょうど300日であった。テルアビブ、エルサレムはじめ全国で、政府に人質奪回を要求するデモが行われた・

テルアビブでは黄色のリボンをつけた数百人が、防衛省前を後進。道路を封鎖して集会を行い、人質家族たちが訴えを行った。ヘルツエリアでは、ビーチで徹夜の集会が行われた。

エルサレムでは、数百人が、白い服を着て、黄色のリボンを掲げて、駅からグレートシナゴーグまでを後進した。

www.timesofisrael.com/thousands-rally-across-israel-urge-hostage-deal-to-mark-300-days-since-october-7/

石のひとりごと

聖書時代からそうだが、イスラエルを一つにまとめるのは、恐ろしい外敵という、嫌なパターンを思わされる。イランとの戦争という大変な国難を前にこの様子なのである。

多様なイスラエルなので、こうなってしまうのであるが、聖書時代と同様、こうした分裂が、敵にあなどりを与えてしまうように思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。