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停戦中もレバノン・シリアで発生していた軍事衝突
イスラエルと、ヒズボラを抱えるレバノンは、昨年11月27日から60日の停戦を実施した。これにともない、イスラエル軍は、レバノン南部から段階を追って、一部を残して撤退した。
この停戦が終了した後、停戦は3週間延長された後、2月18日にそれも終わって、今は、イスラエルとレバノンの間で、国境制定の協議が行われている。
しかし、停戦期間中も、レバノン政府が、レバノン南部にいるヒズボラを十分に取り締まっていなく、イランがヒズボラに武器を搬送しようとする動きもあった。
このため、イスラエルは、ヒズボラへの攻撃を続けてた。先週3月17日(月)には、ヒズボラ指導者ら2人が死亡していた。
またこの同じ日、イスラエルは、シリアのダマスカスにも空爆を行い、武器の倉庫などを破壊していた。
これについてはどの組織のものだったかは明らかではないが、イスラエルはハマスとイスラム聖戦の所有だと主張した。シリア国営放送によると、この攻撃で、シリア人(市民)2人が死亡。19人が負傷した。
www.timesofisrael.com/idf-strikes-terror-targets-in-lebanon-syria-and-gaza-said-to-kill-at-least-9/
12月以来初・レバノンからイスラエル領内への攻撃:イスラエルは大規模反撃
こうした中、3月22日(土)、レバノンからイスラエル北部メトゥラに向けて、ロケット団6発が発射された。
3発は、レバノン領内に着弾し、3発はイスラエル軍が迎撃した。イスラエル側に被害は出ていない。イスラエル北部領内への攻撃は昨年12月以来であった。
これに対し、イスラエル軍は、レバノン南部にあるヒズボラのロケット発射地や拠点などへの大規模な空爆を行った。
レバノンの国営放送によると、イスラエル軍は地上からも戦車砲を撃ち込んでいた。さらには、国境付近の村へ自動攻撃も行っていたとのこと。この攻撃で少女を含む2人が死亡。8人が負傷したと伝えている。
イスラエル軍は、「イスラエル市民への脅威となるロケット攻撃は、明らかな停戦合意違反である。この責任はレバノン政府にある」との声明を発表した。
この数時間後、ヒズボラは、攻撃の責任はヒズボラではないと主張し、「ヒズビラは停戦合意にコミットしている。危険なシオニストが、レバノンの状況をエスカレートさせようとしているが、我々はレバノン政府の背後にいる」との声明を出した。
カッツ国防相がロケット攻撃に反撃を指示:ベイルート攻撃も示唆
レバノンからのロケット弾による攻撃に、大規模な反撃を指示したカッツ国防相は、「ガリラヤ地方への攻撃に忍耐はない。」と述べた。
また、「メトゥラの運命はベイルートのそれと同じだ」とベイルートへの攻撃も辞さないとの釘をさす発言も行った。
またレバノンからの攻撃はすべてレバノン政府の責任とするとも述べた。このためレバノンのサラム首相は、「レバノンは新たな戦争に直面している」と懸念を表明した。
メトゥラのアゾレイ市長:イスラエル政府と軍に怒り表明
メトゥラは、北部国境ぎりぎりの町で、レバノンからテロリストがなだれ込んで来る位置にある。市民の多くは、2023年10月7日以来、避難を余儀なくされている。
今年2月24日の時点で、メトゥラの住居650軒のうち、460軒が攻撃の被害を受けており、120軒は全半壊とのこと。公共の建物30も被害を受けている。
レバノンと停戦に入ったことで、政府は、市民に今年3月ぐらいから、帰宅を呼びかけていた。イスラエルは、北部復興に34億シェケル(約1340億円)を計上しており、各自治体に支援される事になっている。
このため、メトウゥラに帰宅する人がいれば、大人一人につき25360シェケル(約100万円)、最大7人で子供1人あたり12680シェケル(約50万円)が補償されることになっていた。
しかし、まだまったく安心して帰宅できるような状況ではない。市役所の調査では、避難している市民の63%は、3月には帰宅しないと答え、16%は帰宅する計画すらないと答えている。
メトゥラのアゾレイ市長は、これまで政府と軍が、単発的なそれなりの攻撃を続けるだけで、本当に安全を取り戻すための決定的で攻撃的な手段に出ていないことに、「これは失敗だ。こんな状況は受け入れらない」怒りを表明した。
石のひとりごと
ガザ問題では、戦争に出たことに市民の不満が政府に向けられ、北部では、強力な攻撃に出ないことに不満が向けられている。政府の判断の難しさが伺える。
ガザ周辺の市民は実はずっとアゾレイ市長と同じ訴えを政府に向けていたのであった。ハマスを完全に打倒してほしい。そうでないと安全は保証されないと。
しかし、政府は戦争になってもすぐ停戦してしまい、決定的な動きは避けてきた。その結果、市民を大勢人質にとられて、思い切った攻撃ができなくなったのである。
メトゥラのアゾレイ市長の訴えを政府はどう受け取るだろうか。無論ガザとレバノンでは事情が全く違うが、カッツ防衛相の発言によると、もうこれまでとは違うと言っているようにも聞こえる。
今、イスラエルでは右派政権が暴走しているようにも見えるが、その背景には、政府が、もう二度と同じことの繰り返しはしないと考えている可能性が高い。
このように、イスラエルでは、政府の判断が、市民の生活だけでなく、命にも直接かかわってくる。このためにイスラエルでは、誰が首相になるか、市民は真剣に考え、選挙に向かうのである。