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イスラム聖戦高官がハンガーストで死亡:ガザからロケット弾
5月2日夜明け前、イスラエル中部ラムレにあるイスラエルの刑務所で服役中だった、イスラム聖戦指導者の一人、ハダール・アドナン(45)が、86日間続いたハンガーストライクで死亡するに至った。
アドナンの死亡が知らされると、ガザからはすぐに4発のミサイルがイスラエル南部に向けて発射されたが、どれも空き地に着弾。これに対し、イスラエルは戦車砲で応答したとのこと。
しかし、2日午後には、イスラエル南部へミサイルが、少なくとも22発発射され、4発はアイアンドームが撃墜。16発は空き地に着弾したが、5発は市内であった。南部ではサイレンが鳴り響くこととなった。
1発はスデロット市内の路上に着弾し、駐車中の車を破壊。付近にいた外国人(25)が重傷。2人が軽傷となった。飛び散った破片で負傷した人も3人。その後も、ロケット弾は続き、メディアによっては100発以上との報道もある。
www.jpost.com/israel-news/live-updates-741913
Footage shows a rocket impact in Sderot pic.twitter.com/wXpBO9K3xw
— Emanuel (Mannie) Fabian (@manniefabian) May 2, 2023
תיעוד ממצלמת אבטחה של פגיעת הרקטה באחד מיישובי מועצת חוף אשקלון >>> t.co/YEu4h1Ke01@Itsik_zuarets pic.twitter.com/nhWzrGUqmW
— כאן חדשות (@kann_news) May 3, 2023
この直後、イスラム聖戦とハマスを含むパレスチナ人組織の集まり“合同作戦会議”から、アドナンの死に対する報復だとの犯行声明が出た。
イスラエルは、直後に一時的な戦車砲で反撃したが、ネタニヤフ首相は大規模な反撃を一時躊躇し、審議を行うとした。しかし、政府内で反撃への圧力があったもようで、2日夜には、ガザのハマス関連地点への空爆を行った。現地からの報道ではパレスチナ人1人が重傷を負ったとのこと。
その後、エジプト、カタール、国連の仲介で、停戦が成立したとの報道が入っている。イスラエル南部では、平穏に戻ってよしとの指令が出たとのこと。こんなことの繰り返しなのが、イスラエル南部である。
*ハダール・アドナンとハンガースト:妻はガザに報復攻撃をしないよう呼びかけ
ハダール・アドナン(45)は、西岸地区ジェニン北部住民である。イスラム聖戦の報道官を務める高官で、テロを計画しているとして、今年2月に逮捕。ラムレの刑務所に入れられた。
アドナンは2月に逮捕されてからまもなくハンガーストを開始し、食事も医療ケアも全部受け付けないまま、3ヶ月経って死亡したということである。
なお、アドナンの逮捕はこれが最初ではなく、イランとの関係も含め、13回目であった。また以前にもハンガーストライキを行った経過があり、2015年には50日、2012年の逮捕時にも66日間のハンガーストを行っていた。
しかし、アドナンの妻、ランダ・ムーサは、ガザに対し、反応しないようにと呼びかけた。イスラエルを攻撃してその反撃を受けるのを見たくないと語っていた。
国家安全保障顧問ヤアコブ・アミドロール氏の解説:記者ブリーフィングより
イスラエルは、今、ハマス、ヒズボラ、イラン、シリアといった周辺の敵たちが一致しはじめているのを見ているところである。しかし、今回の攻撃は、単に、アドナンの“殉教”に対しなにもしないままでは、義が立たないといった理由での攻撃であったと考えられる。
今回は、ヒズボラやイランが関わってくるような問題ではないということである。アミドロール氏によると、イランやヒズボラは、ハマスやイスラム聖戦を助けてはいるが、同レベルで協力するというレベルにあるわけではないということである。
国家安全保障顧問ヤアコブ・アミドロール氏によれば、イスラエルの力はガザの100倍もあり、数時間ですべてを破壊することができるという。ただちらちらとロケット弾を攻撃してくるガザの組織に対し、毎回、将来を見越しながら、どの程度の反撃をしておくべきなのかを考えているだけの話なのだそうである。
また、この1年半ほどの間に発生した、イスラエル人へのテロは、ほとんど全部が、単独犯だった。ハマスもイスラム聖戦も、西岸地区内部でテロリストを雇用しての大規模で組織的なテロは決行できないままである。その状況は今も変わっていない。今回は重傷を負ったのが外国人ということもあり、大規模な戦闘にはしない方がよいとネタニヤフ首相は考えたと思われる。
ネタニヤフ首相は長年の経験で、そのあたりの匙加減は、かなりよくわかっているのであろう。ただ今、強硬右派の政権でネタニヤフ首相がこれまで通りの必要最小限反撃で満足するのかどうか、という問題がある。今回も、反撃を躊躇したネタニヤフ首相には、政権内部からかなりの圧力があり、そのまま反撃をしないままでの様子見はできなかったのである。
国内での支持率は下がる一方であるとともに、予算問題で、ユダヤ教政党との問題(離脱もありうる)もあり、なかなかヤバいところに立っているというのが、今のネタニヤフ政権である。