19〜20日にかけて、イスラエル軍は、ガザのシェジャイヤ地区で、激しい総攻撃を行っていたが、20日夕方、これまでに、ゴラニ部隊13人が死亡。53人が負傷。このうち7人は重傷と発表された。
発表によると、7人は、軍用車に乗っていたところ、対戦車砲が直撃して死亡。3人は、入ったビルが砲撃され火事になって死亡。3人は、それぞれ銃撃戦中に死亡した。戦死した13人のうち明らかになった5人は以下の通り。
ツァフリル・バルーオール司令官(32)、ツビ・カプラン司令官(28)、ギラッド・ヤアコビ兵士(21)、オズ・マンデロビッチ軍曹(21)、ニシム・ション・カルメリ兵士(21)
これで地上戦が始まってからのイスラエル軍戦死者は18人となった。最初の5人の葬儀は、20日、それぞれの出身地で行われた。上記5人の葬儀は21日に行われる。ニュースでは幼い少年が、葬儀において父を失った悲しみを語っている様子が報道されていた。
一方、ガザ地区では、この日だけで少なくとも87人が死亡。このうち60人が総攻撃のあったシャジャイヤで死亡した。1日の死者としては、これまでで最大となった。
BBC によると、病院には遺体が積み上がっていたという。アッバス議長は、「サブラ・シャティーラの虐殺だ。(1982年のレバノン戦争のときの虐殺事件)」と非難した。
<シャジィヤ攻撃の背景>
イスラエルによると、シャジャイヤは、テロの拠点・温床になっていた地域。これまでにガザからイスラエルへ発射された1000発以上のロケット弾、ミサイルのうち、130発が、この地域から発射されていた。
この地域は、地下トンネル網拠点の一つでもある。イスラエル軍はここからイスラエル領内に続くものを含めてこれまでにトンネル13本、入り口になる縦穴を39箇所を破壊した。
また地下に隠された武器やロケット弾も押収している。最近、ハマスは、イスラエル空軍にみつからないよう、トンネルの縦穴開口部分からロケット弾を発射しているという。
今回もイスラエル軍は、総攻撃の前に、住民に対し、避難するよう警告を出していた。避難した住民もいたが、多くは行くところがないか、ハマスに指示されてか、避難しなかった住民が多数いたようである。
イスラエル軍スポークスマンのラーナー報道官によると、シャジィヤでは、あちこちに罠と爆発物が仕掛けられ、武装兵も多数配置されて、相当な抵抗と反撃を受けたという。攻撃前に住民の警告を発した事で、ハマスには、十分準備する時間があったとみられる。
また、イスラエル軍は、戦死者の遺体は、いくら危険でも必ず収容することになっている。遺体の蹂躙を防ぐためである。それがまた新たな戦闘をひきおこし、兵士たちの危険にもつながっている言われている。
*以前イスラエル兵の遺体は、ばらばらにされ、その肉片を持ち上げているパレスチナ人の様子がネットに流された。
今日、日中に2時間、発動された人道休戦は、ハマスが要請し、イスラエルが受け入れて実現したのであるが、ハマスは休戦中にもイスラエルにミサイルを飛ばして来た。それでもイスラエルは、最初の取り決めから2時間休戦を延長し、人道支援物資を搬入している。20日中のイスラエルへのミサイルは87発以上。
ガザでのゴラニ部隊の様子 http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/183117#.U8wrpaW9DCs
<地下トンネルの実態>www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4546679,00.html
ガザ地区の地下に広がるトンネルには3種類ある。①ガザとエジプトの間ラファにあるトンネル。主に人や物資を密輸することが目的 ②イスラエルとの国境付近にあるトンネル。イスラエルへの攻撃に使う ③ガザ地区内部地下に広がるトンネル網。移動やロケット発射地に使う。
以前は、①のトンネルだけだったが、いつの間にか、ハマスは②③を発展させ、広大な地下トンネル網を形成。イスラエル領内奥深くまでトンネルと掘って、そこからイスラエルへ侵入できるようになっている。
昨年、深さ15メートル、イスラエル領内へ400メートルも入った地点、キブツ・エインハシロシャのすぐ近くに、ガザから来ているトンネルの出口が発見された。このトンネル、2.5Kmもあった。さらにこれが唯一のトンネルではないこともわかった。ガザのトンネル網が、深刻な状況になっていることを露呈した。http://www.israelhayom.com/site/newsletter_article.php?id=12537
現在、トンネル網は、ガザを3等分し、北、中央、南部と区分されそれぞれ責任者が立てられている。ハマスだけでなく、イスラム聖戦など他の組織も新たにトンネルを掘って共有するシステムになっているという。
ハマスに関する専門家によると、トラックがそのまま通れるサイズのトンネルが少なくとも5本はあるという。2012年に、ネタニヤフ首相はガザ総攻撃を直前になってキャンセルしたが、それ以後にもトンネルはかなり発展してしまったということである。
建築資材がないとイスラエルに破壊された町を再建できないといって受け取った建築資材、また人道的にとカタールが送った大金の大部分が、トンネル作りにつぎ込まれていたということである。
<攻撃は続ける:ネタニヤフ首相>
ネタニヤフ首相は、夕方、戦死者家族と、国民に対して、メッセージを伝えた。内容は以下の通り。(概略)
・・・国をあげて痛みと悲しみを感じている。負傷した兵士の回復を願っている。今戦っている兵士、特に予備役の働きに感謝する。背後にいる家族がいかに心配かと思う。
今回の戦いは、イスラエルが好んで始めたことではない。外交的な道を模索しつくした上での戦闘だ。始めた以上、イスラエル南部、中央部、全国に平穏が戻るまで戦いは続ける。
ガザで民間人が死傷していることは遺憾でならない。しかし、イスラエルの警告にもかかわらず、その場にとどまるよう指示しているハマスに責任がある。
また、イスラエルはエジプトの停戦を受け入れたのに、拒否して戦いを続けようとしたのはハマスだった。事態を悪化させているのがイスラエルだとは言えないはずだ。
ハマスは、ロケット弾とトンネルでイスラエルを攻撃しているが、これまでにかなりの打撃を与えた。ガンツ参謀総長はよい働きをしてくれている。
最初に伝えたように、この戦いはすぐには終わらないかもしれない。しかし、私たちは長い道のりを恐れる民ではない。勇敢な兵士たちもいる。彼らと全能者(Almighty:イスラエルの神のこと)の助けで、私たちは目標を達成するだろう。
<石のひとりごと>
ガザで大勢の民間人が死亡している。この事実は否定できないことで、国際法に訴えられた場合、イスラエルに非がないとは言い切れない。今後イスラエルが国際的にも厳しい立場に立たされていくことだろう。
ハマスに人間の盾にされ、家族を失い、すべてを失って行くガザ市民の怒りは想像を絶する。しかし同時にイスラエルもやりたくもない戦争に引き込まれたということも事実である。
しかし、これまで何度もがまんにがまんを重ねたきた結果、ハマスはその間に、破壊不能なまでのトンネル網を発展させ、長距離ミサイルでイスラエル全土を射程に入れるようになった。もはや、これを放っておけとは誰にもいえないのではないだろうか。
前にも紹介したが、イスラエルの立場をよく現したアニメクリップ:まだ見ていない方はぜひ見ていただければと思う。(約3分)
出口のないイスラエルのガザ侵攻
http://tanakanews.com/140718gaza.htm
こちらのほうが現在のイスラエルの立場を理解できたように思います