イスラエル人死者5人に:カタール・エジプト・国連仲介も終わる気配なし 2021.5.12

ハマスの指導者イシュマエル・ハニエ File Photo Said Khatib https://www.israelhayom.com/2021/05/12/hamas-leader-declares-victory-in-battle-for-jerusalem-as-rocket-salvos-hammer-israel/

イスラエル死者5人に

11日深夜から12日朝(現地時間)にかけても、ガザからのロケット弾が断続的にイスラエル中部に向けて発射された。テルアビブからベエルシェバまで広範囲でサイレンが鳴り響く中、人々はシェルターで夜を過ごした。

テルアビブでは、シャルターに駆け込もうとした男性(80)が心臓発作を発症して重症。ベングリオン空港すぐ北のヤフードでは、ロケット弾が民家を直撃し、家は大破したが、住民たちは防護シェルターにいたため全員無事だった。

ロッド市で死亡したアラブ人(イスラエル人)2人を含め、ガザとの紛争が始まってからのイスラエル人の死者は5人となった。

IDFはハマス・イスラム聖戦指導者殺害と拠点破壊:ガザで子供12人含む35人死亡

イスラエル軍は、ガザ市民にできるだけ被害を及ぼさないようにするため、攻撃の指揮をとっているハマスやイスラム聖戦の指導者らを殺害することと、本部や攻撃拠点、武器庫の破壊を急いでいる。これまでに実施した爆撃は500箇所以上にのぼる。

しかし、空爆と言っても一昔前の爆弾をばらばら撒くのではなく、ハイテクによるピンポイントでの攻撃で、ビル全体の破壊もその建物のみの破壊に収めることができるようになっている。

一昨日はガザでハマスとイスラム聖戦幹部が住んでいる13階建てビルを完全崩壊させたのに続いて、昨夜は9階建ビルを破壊した。これにより、イスラム聖戦幹部らが死亡したとイスラエルは見ている。

イスラエル軍が破壊したこれらは普通のアパートで、実際、市民たちも住んでいた可能性が高い。このため海外のメディアは、すでにイスラエルへの非難の声をあげている。

しかし、ハマスの司令官がいるような場所に、市民も共に住まわせていたとすれば、それは、ハマスが市民を盾にしているということに他ならない。イスラエルは、彼らの居場所を完全に把握しているということは、ハマスも知っているはずだからである。

ハマス指導者イシュマエル・ハニエに紛争を終わらせる気なし

ハマス指導者イシュマエル・ハニエによると、カタール、エジプト、国連が仲介のコンタクトをとっているという。しかし、ハニエは、「エルサレムで(シェイカ・ジャラの件)で争いを始めて、アルアクサに火をつけ、その火をガザにまで飛び火させたのはイスラエルだ。責任はイスラエルにある。」と強気の姿勢を崩していない。

「もしイスラエルがエスカレートさせたいなら、こちらは抵抗する。もしやめたいと言うなら、それにも応じる。」と言っているとのこと。

www.jpost.com/israel-news/four-dead-from-latest-wave-of-rockets-aimed-at-central-israel-667902

どう終わらせるのか:ハマスの狙いは何か

チャンネル12によると、ハマスは、イスラエルのアラブ人たちに、「我々がついている。あなた方は孤立してない。」と呼びかけて、イスラエル国内で暴動を起こしているアラブ人たちを煽動している。

今回のハマスの攻撃がどこから始まったのかというと、パレスチナ自治政府の議会選挙が5月22日に予定されていた頃、ちょうど、シェイカ・ジャラのパレスチナ人退去命令問題が発生したことが挙げられる。

ハマスは、ガザからイスラエルにロケット弾を発射し、「ハマスはエルサレム問題を重要視している」として政治的な点数稼ぎを試みたのであった。シェイカ・ジャラの問題は、国際社会に批判もイスラエルに集中したので、ハマスには追い風となった。

ところがその後、ユダヤ人極右が「アラブ人は死ね」と言いながらダマスカス門に入って行ったり、パレスチナ人の投石が発端であったとはいえ、イスラエルの治安部隊が、神殿の丘のアルアクサモスクになだれ込むなどして、広く中東諸国からも批判が出るようになる。

ハマスとしては、今これまでになく、東エルサレム、神殿の丘からイスラエルを追い出して、主導権をとるチャンスの時が、巡ってきたと考えているのかもしれない。背後にイスラエルを憎むトルコやイランの支援がある可能性も否定できない。

したがって、今、これまでになく強気になっているハマスが、このまま引き下がる理由がないので、一体どのようにこれが沈静化されていくのか、全く見えないと言うのが現状である。

石のひとりごと

以下に述べることは、聖書には縁のない方々には、どう映るか不明なのだが、興味深い聖書箇所を紹介したい。

聖書は、かつて実在したイスラエルという国が中心になって書かれている書物である。しかし、昔のことだけにとどまらず、預言書という形で未来のことも書かれている。

その何千年も前に書かれた聖書の中の預言書が、今の現代において、成就していると考えられる出来事が多数発生しているということを申し上げたい。その代表が、AD70に消滅したイスラエルという国が、1948年に同じ場所に戻ってきているという事実である。

今の状況は、エルサレム在住のリック・ライディングさんが示しているように、エゼキエル25:15−17に関連しているように見える。ここに出てくるケレテ人と言うのは、ゼパニヤ書2:1−7にも登場している。

彼らは海辺に住む者たちであり、エゼキエルに書かれているように、パレスチナ人は、イスラエルへの敵意を示し続けることで、自分自身が傷つく事になり、その事を通して、聖書の神(イスラエルの神)が、本当の神であることを知るようになると書いてあると考えられるのである。

これは有名な出エジプト記に通じるもので、かつてイスラエルの民を虐待したエジプトの王は、イスラエル人に敵意を示し続けて、結果、自分と自分の国に災害を招いて、その神が現実の神であることを知るようになるのである。これは、今、心を硬くなにしているハマスの姿を連想できなくもない。

無論、今、このままそれが実現するとは断言するものではないが、聖書という書物が、今現在のイスラエルやパレスチナ人在住ちの土地名だけでなく、ユダヤ人たちに敵意を示し続けていると言う点だけでも、注目すべき点である。

今、聖書を信じる者として、万が一にも、この言葉が本当になってしまった場合に備え、筆者は、パレスチナ人たちのために祈るのであり、彼らがイスラエルに負けて、死んでしまえば良いなどとは決して考えていないということを強調したい。

また、イスラエルに問題がないから、神が彼らを特別に扱うということではないということも強調したい。この神は、いわゆる「良いことをしているから、祝福する」という神ではないからである。この神の前に正しいと言える人間は1人もいないと聖書は言っている。イスラエルはこの神の存在を、彼らの欠点、彼らの不可能を通して表し続けてきた民なのである。

いずれにしても、今はまだ出口が見えていない、この難しい問題。もうすぐラマダンが終わると同時に停戦に入ることができるのか、なんでも良いので、イスラエルとパレスチナ人、またイスラエルのアラブ人が、取っ組み合いの殺し合いが止むように、この聖書の神、主に心より祈るものである。

エゼキエル書25:15−17

神である主はこう仰せられる。ペリシテ人は、復讐を企て、心の底からあざけって、ひどい復讐をし、いつまでも敵意を持って滅ぼそうとした。それゆえ、神である主はこう仰られる。みよ。わたしは、ペリシテ人に手を伸ばし、ケレテ人をたち滅し、海辺の残った者を消え失せさせる。

わたしは憤って彼らを責め、ひどい復讐をする。彼らは、わたしが彼らに復讐をするとき、わたしが主であることを知ろう。

ゼパニヤ書2:4-7

だが、ガザは捨てられ、アシュケロンは荒れ果てる。アシュドデは真昼に追い払われ、エクロンは、根こぎにされる。ああ。海辺に住む者たち。ケレテ人の国。主のことばは、おまえたちに向けられている。ペリシテ人の国カナン。わたしはお前を消し去って、住む者がいないようにする。

海辺よ。おまえは牧場となり、牧者たちの牧草地となり、羊の囲い場となる。彼らは海辺で羊を飼い、日が暮れると、アシュケロンの家々で横になる。彼らの神、主が、彼らを訪づれ、彼らの繁栄を元どおりにするからだ。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。