イスラエルの友達?オバマ大統領 2013.3.22

21日、オバマ大統領はとても長い一日を過ごした。

1.イスラエル博物館

朝はイスラエル博物館で、ネタニヤフ首相と共に死海写本を見学し、その後、イスラエルから発信され、世界に貢献している技術(たとえば車いすの人を歩けるようにする義足など)の数々を見学した。

ロボットコンテストで優勝した作品のところでは、開発した少年たちがロボットを操作して、オバマ大統領に過ぎ越しのマッツァをプレゼントするなど、展示物それぞれの開発者との対話の方を楽しんでいるようだった。

ペレス大統領も一部参加したが、去るときにオバマ大統領に「ラマラであんまりやりすぎないようにね!」と言って周囲の笑いをとっていた。

2.パレスチナ自治政府・ラマラ訪問

エルサレムからラマラまでは車で行けば30分ほど。しかし、安全のため、移動は専用ヘリコプターとなった。ラマラでも赤じゅうたんでアッバス議長、ファイヤド首相などがオバマ大統領を迎えた。

オバマ大統領はラマラで、パレスチナ人も国を持つべきだとの2国家2民族の解決を支持していることを強調。

その上で、「イスラエルの西岸地区の入植地で建築は和平にはつながらないが、だからといって何もしないという言い訳にはならない。国のために、パレスチナ人も痛みを伴う妥協する覚悟をもって、前条件を出さず、イスラエルと話し合うべきだ。」と述べた。

<ガザからのロケット弾>

この朝、久しぶりにスデロットなど南部にむけて5発のロケット弾がガザから発射された。1発は民家の庭に着弾し、物的被害を残したが負傷者はなし。2発はガザ内部に着弾。

これはハマスが、オバマ大統領来訪に会わせ、その存在を強調したものと分析されている。

3.エルサレム・スピーチ「イスラエルはユダヤ人の国。あなた方は孤独ではない!アメリカがついている」

夕方17時より、エルサレムでは、国際コンベンションセンターで、全国から選ばれた大学生ら600人を招いてのスピーチが行われた。実際には会場はいっぱいになっていたので、メディア関係者など学生以外の者も大勢いたと思われる。

ケリー国務長官も会場現れたが、このイベントは、イスラエルの若者との対話というホワイトハウスの主催なので、イスラエル政府関係者は全く来ていなかった。イスラエル政府プレスオフィスのディレクターも私たちと一緒に並んで受付をしていた。

スピーチの前に、イスラエル国家、アメリカ国家が全員起立で歌われた。その後、オバマ大統領が、大拍手の中でステージに現れた。スピーチは約50分だった。

オバマ大統領は前半で、イスラエルの聖書との歴史的なつながり、迫害をへて国家を建国したこと、戦って自由を獲得した、開拓してきたいう点では共通の歴史を持っていると言えると言い、何度も拍手喝采をあびた。

オバマ大統領のスピーチの3ポイントは、①治安、②平和、③繁栄。

①治安

治安という点では、スデロットのロケット弾の被害者に会ったことを持ち出し、イスラエルはこうしたハマスやホズボラからの攻撃を受け入れられないと述べ、イスラエルが自衛する権利を持っていることを強調した。

イランがイスラエルを壊滅させるといいながら核開発を行っているいう点について。「イスラエルはここからなくならない。」さらにヘブル語で、「あなた方は孤独ではない!」と語り、スタンディングオベーションの拍手喝采となった。

②平和

オバマ大統領は「友達だから真実を言うべきだと思う。友達だからあなた方の将来を思い言っていることだと思ってほしい。」と述べ、以下のように語った。

平和は必要であること。イスラエルは聖書的にユダヤ人の国であるべきだということ(大拍手喝采)その平和のためには迎撃ミサイルは十分でない。パレスチナ人との平和が必要だ。

ここに来る前に、15-25才のパレスチナ人の若者にあってきた。彼らも皆さんと同じ人生の願いを持っている。

彼らの立場に立って考えてほしい。外国の軍隊に囲まれ、出入りを妨害されることはフェアではない。皆さんにはどんな民主市議を将来、築きたいのかを考えてほしい。彼らにも国が必要だ。占領は解決ではない。和平は必要不可欠だ。

イスラエルの破壊を願う者との交渉ができないことはよくわかる。アッバス議長、ファイヤド首相は対話できる相手だと信じる。

いつも対話を妨害する過激派がいる。しかし、交渉は可能だ。2つの国に2つ人々。そこに至るまでにはいろいろな道があるだろう。難しい選択をしなければならない。イスラエルはユダヤ人の国、パレスチナはパレスチナ人の国。どのようにこの信頼を築き上げるかだ。将来を担うあなた方にはどんな民主主義を持つのかを考えてほしい。

③繁栄

イスラエルは、スタートアップネイション(開発先端の国)。あなた方がイスラエルの次のページを作る。世界のために働いてほしいと期待を述べた。

<若者の反応>

スピーチ後、数人の学生に反応を聞いた。どの学生も「希望を与えられた。」と言っていた。また「オバマ大統領に安心した」とも言っており、「占領」という厳しい言葉も出たものの、イスラエルの言いたいことをすべて網羅し、理解を示したので、学生たちの心をとらえたようである。

ハイファ大学から来たアラブ人男子学生1人が、スピーチ前半の親イスラエルの部分で、「イスラエルに武器を与えにきたのか!」とやじをとばして途中で出ていく場面があった。後で他のアラブ人学生にコメントを求めたが、「コメントはない。」と無表情な感じだった。

コンベンションセンターの外では、高齢の男性が1人「オバマを信用するな」との看板を掲げて立っているだけで、反対デモは行われていなかった。テレビのニュースを見ても、大統領のスピーチは肯定的に受け入れられていた。

4.国家晩餐会

このあとオバマ大統領はアメリカ領事館(我が家のすぐ近く)を訪れた後、8時ごろからの国家晩餐会のため、ペレス大統領宅へ移動した。

晩餐会では、新政府閣僚、チーフラビ他、今年ミス・イスラエルに輝いたエチオピア系女性のチチさんも招かれた。ペレス大統領は、オバマ大統領がイスラエルに深い友情を示したことに感謝し、記念のメダルをプレゼントした。

<アメージンググレイスが大統領官邸謁見広間で!>

晩餐会の終盤には、歌が披露されたが、オバマ大統領に敬意をはらってか賛美歌アメージング・グレースがフルで最後まで歌われた。歌手が男性で女性の声をもつ人(クリスチャンかどうかは不明)だったので、ちょっと異様だったが、イエスをたたえる歌がイスラエルの大統領官邸で、しかもフルで歌われたことは特記すべきことかもしれない。

22日、今日は、戦没者への献花、ホロコースト博物館、最後にベツレヘムを訪問、空港でのお見送り式典で、3日間の訪問は終了となる。ヨルダン訪問がどうなったかはわかりしだいお知らせする。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

コメントを残す

*