アメリカの情報筋によると、4日深夜3時すぎ(日本時間4日朝9時すぎ)、複数の戦闘機が、シリア領内の武器庫とみられる建物を空爆した。
空爆はレバノン領空からで、シリアの外からの攻撃だった。3日夜からレバノン上空にイスラエルの戦闘機が飛来していたことから、空爆はイスラエルによるものとみられている。
イスラエルの戦闘機は、ターゲットからかなり離れたところから、水平に攻撃することが可能。実際にはレバノンから、またはイスラエル領内からでもシリア内部の標的を攻撃できるという。
この件について、駐米イスラエル大使館は、ノーコメントだったが、「今言えることは、イスラエルは化学兵器のような危険な武器がレバノンのヒズボラの手にわたらないようにすることに対し、躊躇しないということだ。」と言った。
イスラエル有力紙のハアレツは、4日、イスラエル政府筋の情報として、「化学兵器ではなかったが、状況を変える可能性のある危険な武器(ハイテクのミサイルなど)がヒズボラに引き渡されようとしていた。」として、攻撃がイスラエルによるものと認めたと伝えている。
イスラエルは今年1月にもシリア領内の化学兵器武器庫とみられる周辺で空爆を実施したとみられている。これについては、イスラエルは正式には空爆の責任は認めていない。
なお、シリアは、1月も今回も攻撃があったことを否定している。
<”証拠”がないと動かないアメリカ>
アメリカのオバマ大統領は、「まだシリアが化学兵器をいつどこでどのように使ったのかわかっていない。アメリカ人がシリア内部に入り込む必要を感じない。アメリカが関与しない方が、アメリカにもシリアにとってもよい。
ただし、化学兵器がヒズボラにわたったというような、我々にも関わる状況になれば話は別だ。」と語った。
つまり、アメリカは、基本的には、化学兵器がヒズボラの手に実際に渡れば、動く可能性はあるが、それまでは動かないということである。
これに対し、イスラエルは、武器がヒズボラの手に渡ってからでは遅いと考えている。危険な武器はイスラエルからできるだけ遠いところで処分するというのが基本方針である。
<反政府勢力にジーハーディスト(聖戦主義者)>
シリアの反政府勢力の間で、アルカイダの影響がかなり大きくなってきていることは、すでに世界も懸念するところである。
反政府勢力戦闘員の10人に1人は、ジハーディスト(イスラム聖戦主義者)だとみられ、アサド政権が崩壊した時には、その者たちの矛先がイスラエルに向く可能性があると、イスラエルは懸念している。
<世界の人々の意識調査>
BBCの調査によると、先進国住民の多くは、自分の国がシリアの内戦にかかわることに反対していることがわかった。
フランス70%、イギリス60%弱、ドイツ80%、アメリカ61%が、シリアへの介入に反対している。