イスラエルがガザ人口集中エリアで人道停戦10時間/日:空中から物資落下も開始 2025.7.28

People gather as a C-130 Hercules military transport aircraft drops humanitarian aid on the northern Gaza Strip on July 27, 2025. (Bashar Taleb/AFP)

ハマスとの交渉、イスラエル軍による攻撃が続く中、先週ぐらいから世界中の注目を浴びているのが、ガザの人々が飢餓に陥っているという情報である。

イスラエルは、7月27日(日)から、地中海沿岸の人道地域で、1日10時間の停戦と、物資搬入、空から物資落下も開始した。これはすべて、ハマスとは関係のない、イスラエルの一方的な方策である。

Ynetによると、この政策は、国際的な反発に対処するため、治安閣議を通さずに、すぐに実施されたとのこと。

また、この政策転換により、国際社会に大きく批判された、ガザ避難民を、人道都市に集める計画も埋もれた形だと伝えている。今後右派議員たちからの反発があるかもしれない。

www.ynetnews.com/article/b1yrayedgg#autoplay

7月だけで63人が餓死と国連報告

国連ニュースによると、ガザ避難民200万人の3分の1、50万人近くが、食料がない、飢餓状態にある。それによると、7月に入って、栄養失調が制御不可能になって、死者数が急増しているという。

今年に入ってからのガザでの餓死者数は、74人で、そのうち、63人(5歳未満24人)は7月に入ってからの死者だと報告している。

また、妊婦の40%が重篤な栄養失調だと言っている。現時点で、栄養失調の専門治療院は4カ所で、治療を受けている子供は5000人だが、治療に必要な医薬品から燃料も不足しているとのこと。

ガザでは、アメリカとイスラエルによる食料配給が行われているが、そこまで食料を取りに行くなどのプロセス中に、1000人が死亡。7000人が負傷したと報告している。

news.un.org/en/story/2025/07/1165504

以下は食料配布センター周辺の様子:担いでいるのは、小麦粉とのこと。

ハマスは、これとばかりに、大々的に世界に、飢餓状態にある人々や、餓死する子供の様子などをアピールしている。

イスラエルは、アメリカの人道財団GHFの食料配布に加えて、5月下旬から、2か月半ぶりに検問所から、支援物資を乗せたトラックが入ることを許可した。以後毎日平均17台がガザ検問所内に入っていると強調。

そこからガザ市民のところまで、物資を届けるのは、WFP(世界食料計画)などの国連機関の担当である。しかし、検問所からの物資搬送経路は、ハマスだけでなく、空腹な市民たちの襲撃を受けて危険すぎるため、実際には搬送は難しい状況にある。検問所には、今も大量の食料や医療物資が山積みとなっている。

イスラエルは、搬送しない国連を非難していたが、現実的には無理な状態であり、飢餓状態に陥っているガザ市民がいることも認めるようになっている。

ただガザ全域がそうなっているわけではなく、ハマスが主張する餓死者数は、誇張されていると訴えている。ネタニヤフ首相は、イスラエルが、故意にガザを飢餓状態に置いているのではないと強調している。

しかし、日々、報告される餓死者数が増える中にあって、トランプ大統領までが、イスラエルはなんとかしなければならないと言うようになっている。

イスラエル軍がガザ人道エリアで1日10時間の停戦を発表:空から物資落下開始

イスラエルは、27日(日)、地中海沿岸のアルマワシ、デイル・アル・バラ、ガザ市など、大勢のガザ市民がテント避難生活をしているエリアで、毎日10時間(午前10時から午後8時まで)の停戦を実施すると発表した。

支援物資搬入を容易にすることが目的である。

これにより、27日だけで、物資トラック1200台がガザに入った。エジプトの赤新月車のトラックも含まれている。

また、イスラエル軍は、上空から支援物資の箱を落下も開始した。その後、ヨルダンとUAEも、航空機3機で、25トンの物資を落下させた。

www.timesofisrael.com/idf-announces-10-hour-gaza-humanitarian-pauses-amid-mounting-famine-concerns/

しかし、Ynetの報告によると、空から落下した食料も結局、販売されており、末端には届いていない可能性がある。

たとえば、肉のパッケージは1つ200シェケル(8000円)とのこと。結局ハマスが強奪しているのかもしれない。

www.ynetnews.com/article/syftixvdlg#autoplay

イスラエル軍から世界へのメッセージ

イスラエル軍は、ケレン・ショムロン検問所から、世界へのメッセージを発信した。

それによると、イスラエル軍は、この1週間で250台のトラックが、イスラエルの手配でガザに入り、これまでに600台が、国連機関に手渡された。しかし、それらがガザ市民に届けられることはなかった。

イスラエル軍は、1日のうち一定時間停戦し、物資が届く様にし、空からも物資を落下させている。明確にしておきたいことは、イスラエルが、食料の搬入を停止しているのではないということだ。

この戦争は複雑で、ガザ市民にもイスラエルにも酷い痛みをもたらしている。それをもたらしたのはハマスであることを忘れてはならない。ハマスは、ガザの市民の犠牲を武器にしている。

イスラエルは、物資をハマスではなく、市民には届ける。私たちは、人質を取り戻し、ハマスを撃退する。この使命をかならず達成する。

石のひとりごと

日本のメディアは、明確にイスラエルが、ガザの人々を飢餓に陥れていると報じている。このため、日本の中で、イスラエルの話をすることが難しくなっていると実感している。イスラエルがタブー視されているのである。

しかし、イスラエル人を知る人ならわかることだが、イスラエル人は、食べることが大好きな人々である。どんなミーティングでも、お茶とお菓子は大量に準備されている。

なので、人が空腹であることを見るのも耐えられない人々だと思う。

ガザの人々が空腹であること、特に子供たちが空腹である様子は、イスラエル人にとって痛みであることは間違いない。故意にそんなことをすることは、イスラエル文化にはない。

ところが、世界は全然ちがうイスラエルのイメージを押し流している。間違った情報のまま、世論が形成作られている。これは、ホロコーストの前の時代のヨーロッパでも起こっていたことを思わせる流れである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。