イギリス離脱問題, 初のEU議会:ブリュッセル 2016.6.29

<怒りと困惑:EU議会>

イギリスのEU離脱問題が浮上して初めてになるEU議会が28日、ブリュッセルで行われた。議会では、イギリスの離脱推進派のニゲル・ファランジ氏と他の加盟国首脳の間にかなり激しい論議が交わされたもようである。

www.bbc.com/news/uk-politics-eu-referendum-36648664

キャメロン首相は28日、他の27首脳と晩餐会に出席。「ヨーロッパの隣国たちとは、できるだけ密接な関係を維持したい。」と記者団に語った。明日29日の議会にはイギリス抜きの27カ国だけで審議が行われる。

イギリスはEUにとっては、主要国である。いくら離脱するといっても急に切り捨てて、村八分にすることはできない。しかし同時に、もしイギリスに対して寛大すぎる対処をとれば、他の加盟国もイギリスに続いて離脱してしまう。

今後のポイントとしては、①ヨーロッパの自由市場(関税なし)と、人の動きの自由(平たく言えば、移民問題)において、イギリスとEUの間にどのようなルールを設けるのかということである。

イギリスは、①はほしいが②はいらないという立場である。しかし、EUは、この2つはセットであり、イギリスだけいいとこどりはさせないと考えている。

EU議会に先立つ27日、ドイツ、フランス、イタリアの3首脳が集まり、イギリスがリスボン50条に基づいて正式な離脱作業開始を発動するまで、水面下の交渉は受け付けないということで合意した。厳しく冷たいともとれる対応である。

ドイツのメルケル首相は、「EUは十分強い。イギリスなしでもやっていける。」と言っている。しかし、実際には、イギリスの離脱がEUに与える影響は相当大きく、これからの対応次第で、双方、共倒れにもなりかねない。

今まで信頼してきたイギリスに突然、離婚を言い渡されたとまどいと悲しみ、怒り、また先の見えない重い不安がヨーロッパを覆っているといったところである。

<混乱続くイギリス国内>

EU離脱が発表されて以来、イギリスが経済不振に陥る可能性があるとして、ポンドの価値が落ちている他、イギリスの大手2者の格付けが落ちている。

headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160628-00000022-asahi-bus_all

国民投票で離脱を投じた人も、いざフタを開けると、話が違うという状況が見え、後悔する人も少なくないという。ロンドンでは、主に若者たち数百人が議会前に集まり、EU(残留)を支持すると叫ぶデモが行われている。

もしもう一度国民投票をやりなおしたら、違う結果が出て来る可能性もあるが、今の所、具体的な動きはない。次期首相候補もまだ明確でない。

一方、最大野党労働党も混乱が続いている。党内選挙では、メンバーの3分の2が、コルビン現党首に不信任とつきつけたにもかかわらず、コルビン氏は退陣する気がないという。

とにかく、これから何が起こって行くのか、だれが国を導くのかもわからないのである。

こうした中、懸念されていたように、各地で移民たちに、「出て行け」というなど、差別発言や差別行為が急増している。移民たちは身の危険を感じていると言っている。

www.bbc.com/news/uk

<今後の流れ>

イギリスはまずは、9月ごろまでには、新しい首相選びをする。新首相が、リスボン50条を発動するまでは、正式な交渉はない。それまでは、とりあえず、現状維持ということになりそうである。

キャメロン首相は、議会から戻っての報告で、「イギリスはヨーロッパに背をむけるのではない。あらゆる分野で、できるだけ緊密な関係を続ける。」との方針を語った。

www.bbc.com/news/uk-politics-36656753

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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