イエメン最後のユダヤ人が出国 2021.4.1

昨年8月にUAEで家族と再会したイエメンのユダヤ人 スクリーンショット

ロンドンのアラビア語紙の報道により、内戦続くイエメンから、最後に残っていたユダヤ人家族13人が、出国し、エジプト(報道によっては第三国)に向かったことがわかった。出国したのは、イランの傀儡反政府勢力フーシ派に強制されたもので、イランの影響もあると見られる。

イエメンでは、2016年、ユダヤ人のレビ・サレム・マラビ氏が、推定500年以上とされるトーラーの巻物を、イエメンのユダヤ人家族17人とともに、イスラエルへ密輸したことがあった。巻物と家族は無事、イスラエルに到着し、ネタニヤフ首相に迎えられている。

しかし、イエメンのフーシ派(イラン傀儡)は、イエメンの国宝を無断に持ち出したとして、マラビ氏を逮捕し、以後6年にわたって、刑務所に閉じ込め、拷問を続けていると見られる。今回、出国したユダヤ人13人は、マラビ氏釈放の取引の条件として、出国させられたともの伝えられている。

*イエメン情勢の変化

バイデン大統領は、イランへの歩み寄り姿勢を見せるためか、今年2月、イエメンの反政府勢力のフーシ派について、テロ組織指定を解除すると発表した。また、イエメン内戦による人道問題が深刻であることから、まずは内戦をやめさせるとして、トランプ政権下で実施されてきたイエメン政府を支持するサウジアラビアへの軍事支援を停止した。すると、早速、フーシ派は、サウジアラビアへの油田などへの攻撃を開始している。

バイデン大統領が、イランへの歩み寄り姿勢を見せるとともに、中国の経済的な後押しも得て、イランとその傀儡の動きが以前より積極的になっていると指摘されている。

<イエメンのユダヤ人>

イエメンのユダヤ人コミュニティについては、イスラエルが独立当時5万人いたと言われている。イスラエルが独立したことで、アラブ諸国では一気に反ユダヤ主義が悪化したため、1949年から1950年にかけてそのほとんどにあたる4万9,000人がイスラエルへ移住した。

残っていた1000人ほどのユダヤ人も徐々に出国し、その後どうなっているのかは明確にはわからなくなっていた。しかし、昨年8月、UAEの助けで、イエメンのユダヤ人1家族が、アブダビに脱出。15年ぶりに家族親族と再会を果たした。(以下は昨年8月の時の映像)

さらに今年1月にも、UAEの助けで2家族がアブダビへ脱出し、家族と再会を果たした。この2回の救出のあと、まだ50人のユダヤ人が、イエメンにいるとみられていた。

www.jpost.com/diaspora/uae-reunites-two-more-jewish-yemeni-families-split-for-decades-655030

しかし、今回、脱出した13人によると、まだイエメンに残っているのは、高齢の4−6人だけで、「私たちは最後のイエメン系ユダヤ人と歴史に記録されるだろう。」と語っている。

なお、この13人は、UAEを通して、イスラエルに移住するようにと勧められていたが、これを断り、親族がいるカイロ(エジプト)に向かったとのことである。なお、マラビ氏が、釈放されたかどうかは不明。

www.timesofisrael.com/some-of-yemens-last-remaining-jews-said-expelled-by-iran-backed-houthis/

イエメンのユダヤ人たちは、おそらくは世界最古のユダヤ人文化を引き継ぐ人々であるとして、イスラエルでは、その第2、第3世代のイエメン系ユダヤ人たちが、その文化を継承しようと努力しているとのこと。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。