シリアの東アレッポからの住民の一斉非難計画だが、いったんシリア政府が用意したバスに、反政府勢力に続いて一般住民も脱出するこころみが行われた。
脱出が始まると、まもなく、イランやヒズボラが脱出の妨害を始めた。反政府勢力が約束に反して重火器などを搬出しようとしたからである。これにより、東アレッポからの住民脱出は一進一退となり、悲惨をきわめた。
そうした中、トルコとロシアが、アメリカも国連も抜きに、アレッポ住民の早期避難についての交渉を行い、以後、作業はスムーズにすすんだのか、ロシア軍は23日、反政府勢力のアレッポからの脱出はほぼ完了したと伝えている。
しかし、ロイターによると、ロシア軍は、反政府勢力が去ったあとのアレッポで、拷問を受けて、手足などが切断された遺体多数を含む集団墓地を発見したという。相変わらず地獄の様相が続く。
ロシアとトルコ、それにイランの外相は20日、モスクワに集まって、シリアの内戦をどう終わらせるかという話し合いを行った。アメリカと国連は抜きである。3国は、シリア内戦を終わらせるための”モスクワ宣言”を発表した。
それによると、シリアのアサド政権は残留。ISISとアル・ヌスラ(アル・シャムス)を過激派として弾圧する。加えて、トルコの外相は、過激派はすべて攻撃対象にと主張している。
これは、アサド政権は排斥すると言っているアメリカとは異なる方針である。トルコは、本来、少なくとも表向きはアメリカチームであったのだが、今回のモスクワでの会議に加わったことで、もはやアメリカではなく、ロシア側の主張に合意する立場に寝返ったということのようである。
これはアメリカが、トルコの敵であるPKKを含むクルド人勢力を支援しているなど、自国の国益とはあわない動きをしていたことが原因と思われる。
ちょうどこのような動きの中、トルコのアンカラで、ロシアの外相が、トルコ人警備員に堂々とテレビカメラの前で射殺されるという暗殺事件が発生した。
トルコのエルドアン大統領は、ただちに「これはトルコ政府によるものではない。」と明確に表明。ロシアもこれを受け入れるなど、両国は、何があっても今は一致しているということを、世界にアピールした。
一方、アメリカと国連は2月にジュネーブで、シリア内戦集結にむけた会議を行うことになっているが、こちらは、これまで6年近く会議を重ねて、いまだになんの成果もあがっていない。
もしこの3国の発案で、シリアで当事者どうしの和平会談が実現した場合、アメリカの中東での権威はますます落ちることになる。
<なぜここにイラン・・?>
当初は、トルコとロシアの2国ですすめられていたシリア停戦への試みだったが、今回、そこにイランが加わっているのはどういうわけだろうか。
シリアのアサド政権は、アラウィー派である。スンニ派はアラウィー派を異端とみなしているが、シーア派は、イスラムの一派とみなしている。このため、アサド政権としては、国内がシーア派で固まる方が落ち着く。
強力なシーア派国家イランが和平交渉に加わることは、シリアにとっても有益で、ロシアにしても、地理的にもシリアに近いイランが、アサド政権を支えつつ地域ににらみをきかせることは必要な要素であるといえる。
しかし、イランがすぐ隣に影響を及ぼすことは、イスラエルにとっては、あまり好ましい状況ではない。
イラン、ロシア、トルコといえば、エゼキエル書38-39章を思い出す方も少なくないだろう。それによると、ペルシャ(イラン)は、「北の果ての国から多くの民を率いてくる」国(ロシア?)とともに、イスラエルを攻め上ると書かれている。
聖書をそのまま時々情勢に当てはめることはできないのだが、こちらも徐々に、終末の気配がしてきそうな配置になり始めているようで、緊張感を覚えた。