アメリカのGHF(ガザ人道財団)食料配布センターでカオス:群衆が食糧求めて一時センターを占拠 2025.5.28

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ガザ支援物資搬入:トラックでの搬送は失敗

ガザでは、イスラエルが人道支援物資搬入を停止してから約3か月後の5月19日(月)、まずは、以前と同じ方式で、トラックに乗せた食料など人道支援物資のガザ各地への搬送と分配が開始された。

しかし、案の定、トラックへの襲撃と横領が発生し、イスラエルが空爆で、横領に来た6人を殺害。ハマスが、横領に来たガザ市民4人を射殺する事件まで発生した。ハマスはさらに7人を同様の罪で逮捕したと言っている。

www.timesofisrael.com/idf-kills-6-gunmen-guarding-trucks-amid-looting-as-humanitarian-aid-trickles-into-gaza/

www.timesofisrael.com/hamas-executes-four-gazans-it-accuses-of-looting-aid-as-it-tries-to-assert-control/

アメリカとイスラエル推奨の食料配布センター:群衆が押し寄せてカオス

26日(月)からは、配布ではなく、アメリカによるGHF(ガザ人道財団)による食料配布センターにおける配布が始まった。

この方式は、国連を通さず、アメリカの財団が、イスラエルの支援を受けて運営するもので、食糧をガザ各地へ搬送するのではなく、市民が食糧を受け取りに来るシステムである。

配布センターは、イスラエル軍が支配下に置いて、ハマスの侵入を防げることが可能になっている南部ラファで、まずは1か所から始まり3か所まで増やす。

またガザ中部にも1か所開設する予定である。

これについて、国際社会からは、ガザ市民が遠方から歩いて取りに来なければならず、本当に苦難に陥っている弱者には届かないのではないかと、疑念と批判が出ていた。

また、配布開始前日の25日(日)には、GHF代表として任命されていた人物が、イスラエルが移動を阻害して、人道支援の原則を阻害していると述べて辞任するという波乱の出発となった。背後で、ハマスがGHFに協力する関係者を脅迫しているとの推測も出ている。

www.timesofisrael.com/in-blow-to-israeli-backed-gaza-aid-effort-ceo-of-group-tasked-with-managing-it-resigns/?utm_campaign=most_popular&utm_source=website&utm_medium=article_end&utm_content=4

アメリカはすぐにジョン・アクリー氏を代表に任命。配布は予定通り26日から始まった。最初は、トラック1台分という少量がラファの配布センター1か所で開始され、ガザ市民が、物資の箱を担いで去っていく写真が報じられたが、実情は明らかではない。

しかし、GHFは、この時点で配布された食糧は、8000箱(1箱5.5人3.5日分)、46万2000食分だと発表した。

27日(火)には、多くのトラックで、ラファでの2か所目でも配布が開始された。すると、その数時間後に、数千人のガザ市民がなだれこみ、2か所目の配布センターを占領して、食糧を奪っていった。

イスラエル軍は空中に威嚇射撃をしただけだった。配布を担当していたアメリカ人スタッフは、避難して負傷者出ていない。

イスラエルでは、この動きは、ポジティブに捉えられる傾向にある。

ガザ市民が、もはやハマスを恐れることなく、ハマスが敵と目する、アメリカとイスラエルの食料配布センターにいっせいにやってきたからである。また、食糧は横領されておらず、人々の手に渡ったといる。負傷者も出ていない。

また、これほどの大群衆が押し寄せたことで、この方式では取りに来る市民が限られてしまい、十分には届かないとする国際社会に対しても、そうとは限らない様子を見せたことになる。

www.timesofisrael.com/gazans-overrun-strips-new-aid-center-operators-says-distribution-has-resumed/

群衆が去った後、アメリカは、すでに配布センターを再開している。以下はまるで万博入り口みたいに並んでいるガザ市民の様子。

アメリカは、この計画に協力しない国連を非難。もしこのままうまく稼働する場合は、国際社会にも支援を要請すると言っている。

www.timesofisrael.com/us-will-renew-push-for-countries-to-fund-ghf-once-it-demonstrates-results-official/

しかし、BBCなど世界のメディアは、この大混乱を大いに非難している。イスラエルの報道に反して、3人が死亡したとのニュースも出ている。

石のひとりごと

群衆がなだれ込んでくる様子を見ると、これはもう情けなさを通り越している。女性も子供も群衆となって食糧をもらいに殺到している。敵と教えられていたアメリカ人から食糧をもらうのである。人間の尊厳が奪われているとしかいいようがない。

ガザの人々は今、地獄のような中にいる。家はなく、食料も水も不足し、伝染病も蔓延。学校もない。日々の生活はなく、無法地帯である。それがもう1年半以上になる。

いったい誰が悪いのかといえば、もともとハマスがイスラエルを襲ったことにある。ハマスが、ガザにこの事態を招いたのであって、イスラエルではない。ガザの人々も多くは気づいている。気づいてないのは、反ユダヤ、反イスラエルの人々だけだろう。

アメリカとイスラエルによる新たな食料、医薬品などの配給が、ハマスを潤すことなく、飢えた普通の人々にのみ到達し、ガザ市民の声が世界にも聞こえるようになることを祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。