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アメリカと中国の関係悪化が進んでいる中、アメリカと最友好国とし、かつ中国との関係強化をすすめているイスラエルの立場は微妙になりつつある。
淡水化工場ソレック2の契約破棄
ソレック2 淡水化施設予想図
出展:Water Technology www.water-technology.net/projects/sorek-desalination-plant/%5B/caption%5D
5月14日、ポンペオ国務長官は、わざわざイスラエルにまで来て、イスラエルに中国との関係強化を控えるよう、訴えた。これは、アメリカに協力するというだけでなく、イスラエルが水源という重要な施設建設に中国がかかわることへの危険性を警告したということである。
その影響もあってか、イスラエルは、完成すれば、世界最大となる淡水化工場ソレック2の建築発注先を、中国企業から国内企業のIDEテクノロジーに切り替えた。中国にとっては、15億ドル(約2000億円)の契約を失ったことになる。
エルサレムポストは、イスラエルが、治安においてもアメリカとの関係を失いえないことを中国は理解しているとみえ、今の所、大きな反発はでていないと分析している。
イスラエルには、すでにソレック1という淡水化工場がハデラで稼働中である。次に建築予定のソレック2は、テルアビブに建築予定で、2023年に完成すれば、年間2億平方メートル分の海水を淡水化(現在より35%増)できる。
これはイスラエルの水道の85%に値する。水の少ない中東において、これは大きな武器になりうるだけでなく、年間33億シェケル(1000億円)を節約できるという。
この工場を見学に行ったことがあるが、巨大な淡水化工場であるのに、ほとんどコンピューターが管理しており、人間はほとんど姿を見なかった。サイバー攻撃を受けやすいともいえる。
今月に入って、イランによるとみられるサイバー攻撃は、イスラエルの上下水道をねらったものであった。幸い、大きな被害にはならなかったが、イランとの関係が深い中国に参入させないことは、正しい決断であったと思われる。
www.timesofisrael.com/israeli-cyber-chief-attack-on-water-systems-a-changing-point-in-cyber-warfare/
いずれにしても、コロナ危機からあきらかになったことは、できるだけ国内生産を目指す方が無難でもあるだろう。
5Gネットワークへの中国参入も阻止か
Times of Israelが、チャンネル12からの情報として伝えたところによると、イスラエルは、現在構築中の5Gネットワークについて、中国参入を拒絶する見込みだという。イスラエルは5Gネットワークを、昨年7月に導入を決定。投資会社を国内外に募集。12月には決定しているところ、まだ決定されていなかった。
アメリカは、イスラエルの通信技術に中国がかかわることに警鐘を鳴らしていたが、26日、フリードマン在イスラエル米大使は、イスラエルのヘンデル・コミュニケーション相らと会談。さらに中国の参入に反対する意見を伝えたとみられる。
このプロジェクトの総額は、20億シェケル(600億円)と推測されている。
www.timesofisrael.com/israel-said-set-to-reject-chinese-bids-for-role-in-5g-network-infrastructure/
アメリカが懸念する中国の勢力拡大
中国は、厳しい経済危機にあると報じられながらも、世界への進出が懸念とともに注目されている。香港は、イギリスから中国に返還されたのちも、民主制度を維持する一国家二制度で運営されてきたが、事実上香港の自治を奪う国家安全法を押し付けてきたことから、市民が激しいデモを展開していたのであった。
アメリカは、これまでこのデモを支援する立場をとってきたが、27日、ポンペオ国務長官は、「香港はすでに、これまでのような高度な自治を有しているとはいえない。」との認識を表明。いいかえれば、香港は中国の一部になったものとして、中国と同様の対応に切り替える可能性が出てきたということである。
これにより、香港は、アメリカからの通商上の特権を失って経済に打撃を受け、世界経済にも大きな影響を与える可能性があると、CNNが伝えている。世界はますます、アメリカ勢力圏と、中国、ロシアやイランなどの勢力との2派に分かれていくようである。