アメリカとの同盟関係揺らぐ?:渡米するギャラント防衛相が修復できるか

photo credit: Shachar Yuman GPO

ヒズボラとの全面戦争は、ガザ、西岸地区からも同時に戦闘になる可能性が高い。

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この危機的状況にあって、19日、ネタニヤフ首相が、アメリカが、約束したイスラエルへの武器搬送を行っていないと苦言を公に発表。

アメリカはこれに立腹し、「何を言っているのかわからない」として、戦闘機含む武器のイスラエルへの搬送を遠近すると発表した。

しかし、実際には、それ以外にも武器の搬送が遅れていたもようである。

この後、ネタニヤフ首相は、この件について、アメリカとは水面下でずっと話をしていたが、らちが開かないので公にすることにしたという経過を発表した。

www.timesofisrael.com/netanyahu-i-tried-addressing-diminution-of-us-weapons-privately-before-going-public/

その後、アメリカは、ヒズボラと対戦することになれば、アメリカはイスラエルへの武力支援を行うと約束したとの報告も出た。こうした動きは今に始まったことではない。アメリカはいったい、どっちについているのか、唯一の同盟国として、どこまで信用していのか、どうにもわかりにくい状況が続いている。

しかし今、ヒズボラとの全面戦争を前に、アメリカの支援は必要不可欠である。このため、23日、ギャラント防衛相が、アメリカと話し合いをするとして、渡米していった。ワシントンでは、ブリンケン国務長官、オースティン国防相、CIAバーンズ長官、ホフステイン中東特使と会談する予定。

アメリカが武器輸送を渋っているのは、主に、イスラエルがガザの戦後にどういう計画を持っているのかを明らかにしないまま、戦闘を続けて、死者が相次いでいるからである。

ギャラント防衛相は、アメリカでは、イスラエルが持っているガザでの次の段階の計画について説明するとも言っている。

ギャラント防衛相は、レバノン、ガザ、その他の地域での戦いに直面していると認識していると語る。Times of Israelによると、最終的な目標は、アメリカからの大型爆弾の出荷凍結を解除してもらうことだという。訪問の結果が注目される。

<石のひとりごと>

少し前にガンツ氏とエイセンコット氏という、IDFの元参謀総長たちが、戦時内閣を離脱した。これは、筆者の個人的な感覚だが、それ以降、北部情勢、ガザ情勢、西岸地区の様子が一気に、暴走しているように見える。

ネタニヤフ首相は、極右政治家とユダヤ教政治家らに振り回されており、しっかりしたリーダーシップをとれていないのではないかとも懸念させられる。以前のネタニヤフ首相なら、このような時には毎日でも、表に出てきたのに、今はほとんど出てこないのである。

北部自治体からも、ネタニヤフ首相は不在だと言った声が出ているとの記事もあった。かつてネタニヤフ首相からは、絶対この国を守るという目力と迫力を感じたものだが、今の彼からはどうにもそれが感じられないのが心配だ。

これまでは人質解放を訴えていた市民による毎週土曜日のデモは、今では、政府解散を訴えるようになっている。イスラエル人でも今の政権に不安を持つ人もいる。とはいえ、政権が交代しても、だれがつぎの首相になるかという点に確証はないのである。

ギャラント防衛相だが、彼がどうにも優柔不断な感じで、どこまで何を考えているのか、わかりにくい人物で、今回の渡米でも、劇的な結果は出ないのではないかとも感じるが、どうだろうか。

ガンツ氏が出たあと、国の方針を決める小さい委員会が、どうにも混乱しているのではないだろうか。ネタニヤフ首相がまず、主に助けを求めて、イスラエルの方向性を正しくしてくださるように祈るようにと願う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。