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ガザでは、生存する人質が全員解放され、遺体も徐々に返還が進んでいる。こうした中、アメリカが見ている次の段階の動きが見え始めている。
アメリカが進めるガザ戦後ビジョン
ガザでは、生存する人質が全員解放され、遺体も徐々に返還が進んでいる。こうした中、アメリカが見ている次の段階の動きが見え始めている。

10月13日(月)、トランプ大統領は、自らエジプトのシャルム・エル・シェイクでのガザ停戦に関する国際カンファレンスに出席し、停戦を宣言。
アメリカは、停戦後ガザ管理のシステム構築を進めている。
トランプ大統領に続いて、ウィトコフ特使とクシュナー大統領顧問がイスラエルに到着。
続いて、21日(火)には、ヴァンス副大統領がイスラエルに来て、キリアット・ガットに拠点を置く、ガザ戦後の治安を監視するCMCC(Civil-Military Coordination Center(文軍協力センター)の発足を発表した。
CMCCは、ガザ支援にあたる国連、NGO、民間部門代表などを統合する機関である。約200人のべ雨軍要員が中心となり、イギリス、カナダ、ドイツ、デンマーク、ヨルダンからの軍派遣者との協力体制を維持する。
CMCCは、ガザの復興に向けた治安維持と復興を監督する役割を担うことになる。
まず、ガザへ搬入される物資は、CMCC(Civil-Military Coordination Center)が、監視し、ドローン含め、武器関係物資が入らないようにする。

そこから人々への配布についてだが、アメリカは、これまで、UNとは別に、GHF(ガザ人道財団)による配布センターの運営を行なっていた。
しかし、ハマスの妨害もあり、武力衝突が多発し、国連からの批判、非難が絶えない状態だった。
このため、アメリカは、GHFに変わる人道支援の方法を提案している。
それによると、イスラエルが撤退したラインに沿って、12―16カ所の人道支援センターを設立。避難民は、そこから物資を受け取ることになる。これを「人道主義ベルト」と命名する。
この人道主義ベルトには、元テロリストだった者が、自主的に武器を提出して、恩赦を受ける手続きをする場所や、CMCCが、ハマスの非武装化を進める拠点の設置も計画されている。
アメリカは、このシステムが確立されるまでの前段階として、モロッコとUAEの赤十字と、クリスチャン福音派のサマリタン・パースが、現在のGHFの働きを引き継ぐとしている。
www.ynetnews.com/article/byb1fw00rlx
アメリカは、ガザ停戦を通して、中東でのコミュニケーションが進み、アブラハム合意への参加国(イスラエルと国交正常化)が増えて、地域全体が発展するという大きなビジョンを表明している。
国連は、アメリカのこの支援システムが、結局、GHFと似ているとして、懸念を表明している。アメリカは、まだ決定的な案ではないと述べ、この案は、いろいろ模索する中での一案だと返答している。
イスラエルによる今後の見通し
イスラエルは、基本的には、アメリカに賛同する立場である。ネタニヤフ首相は、ヴァンス副大統領を歓迎していた。また、INSS(イスラエル国家安全保障研究所)は、戦後ガザの地図を発表した。
それによると、イスラエル軍が、イエローラインから国境に駐留を続けて支配し、それ以外の地域が5地域(デイル・アル・バラ、ガザ、カンユニス、ガザ北部、ラファ)に分けて、管理される形になっている。管理者が誰になるかは未定。
地図には、物資は外から搬入される検問所の位置や、ガザ内部での配布場所も提示されている。
www.inss.org.il/publication/gaza-day-after/
しかし、問題は、ガザ将来の計画における、明らかにハマスの支援者であるトルコと、パレスチナ自治政府の役割である。
ネタニヤフ首相は、ヴァンス副大統領との会談において、この2つの関係者は、今ガザに入るべきではないと主張している。また、この計画の成功の可否は、ハマスがどう出るかにかかっている。
イスラエルによると、ハマスは、2023年10月7日の時点では、戦闘員3万人、5つの地域旅団、24の大隊、140の中隊と組織もはっきりしていた。その後2年の戦闘で、ハマスは、重要な指導者たちをほぼ失い、組織としても、ほぼ解体状態になり、今ではガザ市に残留する中央部隊だけになっている。
しかし、残存ハマスは、その後新たに戦闘員2万2000人を雇用しているとイスラエル軍は見ている。ただ、この新兵たちは、訓練がほぼなされていないだけでなく、弱いとみられている。
統率力に欠けると同時に、重要な武器もないため、本格的な戦闘ではなく、ゲリラ戦がせいいっぱいとみられている。
石のひとりごと
これはまだまだ青写真で、これからどうなるかは、まったく未定である。青写真だけで終わるかもしれない。
ただ将来が、ほとんど見えない中だからこそ、ボツになっても落ち込まず、まだ見ぬ、より良い予想外の可能性に期待して祈れる時代ではないかと思う。
