アメリカが孤立するイランを脅迫しつつ核合意交渉 2025.4.8

イラン(左端)とイラン傀儡組織が、イエメンに集結して反イスラエル、親パレスチナを表明 2025.1.3  Right to left: Houthi, Yemeni, Palestinian, Hezbollah, Iraq, Iraqi Hashed Shaabi paramilitary forces and the Islamic Repubilc of Iran flags are raised at a rally denouncing Israel and in solidarity with Palestinians, in the Houthi-controlled capital Sanaa on January 3, 2025. (Mohammed Huwais/AFP)

現在、中東では、アメリカとイスラエルが、イランの核兵器開発地点への攻撃を行うのではないかとの緊張が高まっている。

アメリカは、イラン攻撃の準備を整えて、イランに恐怖を与えつつ、核兵器開発を諦めさせようとしている様相である。

イランの孤立と現状

CBS News

イランの傀儡であったハマスは、ガザ指導者のシンワルを失い、もはやイスラエルを攻撃するほどの力はなくなっている。ヒズボラもナスララを失い、大きく弱体化した。

さらに、イランとヒズボラの武器移送を担っていたシリアのアサド政権が崩壊し、ヒズボラは供給源を失っている。

傀儡勢力を失う中、昨年秋には、イランとイスラエルの直接の攻撃と反撃が発生。この時以来、イランは防空能力を大きく失った。

その後、イランの傀儡で、唯一残っていた、イエメンのフーシ派は、紅海周辺で国際船舶を攻撃していたことから、アメリカがフーシ派の解体に向けて、本気の大規模な攻撃を今も続けている。

その中で、イランが、フーシ派を見捨てて、イラン軍をイエメンから撤退させたとの報道が出ている。

www.timesofisrael.com/report-iran-pulling-forces-out-of-yemen-amid-intensive-us-airstrikes-on-houthis/

さらに今、トランプ大統領の圧力を受けて、イラクの親イラン組織が武装解除に入っているとのこと。

www.timesofisrael.com/iran-backed-iraqi-militias-consider-disarming-amid-threats-from-trump-administration/

こうした中、イラン国内も今、激しい旱魃と経済制裁による物価高、イスラム主義政権への反発の高まりで、不安定になっている。

中東で戦力増強しているアメリカ

一方で、アメリカはイランに対する武力を増し加えており、イランにとっては、大きな脅威になっている。

昨年秋に、イスラエルがイランを攻撃して、防空能力を大きく削いだ後、中東戦争勃発の可能性に備えて、バイデン前大統領は、中東各地に駐留する米軍を4万にまで増強した。

www.nytimes.com/2024/09/30/us/politics/us-deploys-troops-middle-east.html

トランプ大統領になってから、フーシ派への攻撃が始まり、今年の4月1日、ベグゼス米国防長官は、中東にむけて、さらに戦闘機を増強したと表明している。

その中には、ステルス機能を備え、核兵器を搭載できるB2爆撃機6機が含まれている。配備されたのは、インド洋ディエゴ・ガルシア島の米軍基地である。(左地図)

また、ロイターによると、まもなく2隻の空母が中東に向かうことになっているという。

www.reuters.com/world/middle-east/us-military-announces-more-air-assets-middle-east-2025-04-01/

(US Army Europe/File)

さらにアメリカは、トランプ大統領とネタニヤフ首相が会談する直前、イスラエルに2基目となるTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)をネゲブ砂漠に配備した。

これは、敵のミサイルが大気圏に再突入したところで迎撃する最新式の弾道迎撃ミサイルである。

その他の戦闘機等の配備もしているもようである。

イランへ降参脅迫状態で交渉申し出のアメリカ

Credit: Avi Ohayon (GPO)

こうした中、トランプ大統領は、4月7日(月)、ネタニヤフ首相と会談。公宅に、水面下でイランとの核問題に関する直接交渉を始めているとして、12日(土)にも交渉が行われると発表したのであった。

しかし、アメリカとイスラエルは、イランに核保有国になることを受け入れられないと明確に表明しつつ、イラン攻撃の準備が整う中でのことである。

交渉とはいえ、イランに銃を突きつけながら、大きな被害を受けない今のうちに、降参するようにと言っているようなものなのである。以前、イランは、この状況で交渉に意味があるのかと言っていた。

イランは、今は、アメリカと直接交渉が進んでいることは否定。交渉は直接ではなく、オマーンが仲介役だとイランの高官が無名でロイター通信を通して明らかにした。

オマーンは、イランとアメリカ双方と話ができる立場にあるため、これまでも両者の間の橋渡しをしていた国である。

今後12日(土)にどんな交渉になるか、注目される。

なお、この日、イスラエルと世界のユダヤ人たちは、過越の夕食セデルを行い、1週間の例祭期間に入る。

石のひとりごと

戦争を抑止する方法として、武器を振り上げなげながら、相手を降参させるという手法がある。強力な武力を持つことで、相手に攻撃を思い止まらせるのである。イスラエルが武力を常に上位に維持するのは、このためである。

イランは、どう出るだろうか。アメリカに降参するとは、どうにも予想し難い。その前に、国内から政権打倒になるか、戦争になってもアメリカとイスラエルが本当に破壊すべき核施設だけを、的確に短期に一気に破壊するかだろうか。

もしくはアメリカとの交渉で、イランが狡猾に動くことも懸念されるところである。そうなれば、イスラエルが単独での攻撃に出る可能性が出てくる。

まもなく過越が始まる。主がイスラエルへの好意を持ち続けてくださるように。イスラエルを守り切って、このイランという大きな脅威を取り除いてくださるようにと祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。