アメリカが大規模イラン攻撃中止と引き換えにラファ攻撃容認か:恐るべし水面下の交渉 2024.4.18

GPO

イギリスとドイツの外相訪問:イスラエルのイラン攻撃は避けられないと

April 17, 2024. (Maayan Toaf / GPO)

世界諸国は、今、イスラエルのイラン攻撃を阻止しようと必死になっている。

17日に、イギリスのキャメロン外相と、ドイツのベアボック外相がイスラエルを訪問。ヘルツェル大統領、ネタニヤフ首相と会談した。

二人は、イスラエルの自制を促したが、結果、キャメロン外相は、イスラエルのイラン攻撃は避けられそうもないとのコメントを出していた。

www.haaretz.com/middle-east-news/2024-04-17/ty-article/.premium/in-israel-top-u-k-and-germany-envoys-urge-restraint/0000018e-ed82-d5d5-a59f-efd343800000

April 16, 2024. (GIL COHEN-MAGEN / AFP)

イスラエル軍は、16日、アロー迎撃ミサイルが迎撃したミサイルの巨大な破片を公表していた。500キロもの弾頭を搭載していたとみられる。

こんなもので攻撃してくるということは、イランが本気でイスラエルの滅亡を考えていることに他ならない。イスラエルが、これを放置することはできない。ということである。

www.timesofisrael.com/idf-shows-remains-of-iranian-ballistic-missile-that-fell-in-dead-sea/

ガザ交渉お手上げか:カタールが仲介離脱も示唆

一方、ガザでは、ハマスとイスラエルの交渉が頓挫に近付いており、カタールが、もうお手上げだとして、仲介者から降りるかもといった声を上げている。もし交渉が頓挫すれば、イスラエルがラファへの軍事攻撃するしか道はなくなる。

www.timesofisrael.com/qatar-says-its-reconsidering-hostage-talks-mediator-role-after-suffering-abuse/

イラン攻撃とガザのラファ攻撃を天秤にかける?アメリカとイスラエルの交渉

バイデン大統領と話すネタニヤフ首相 GPO

こうした中、ネタニヤフ首相が、戦時内閣で合意に至っていた、イランへ即時大規模反撃を、バイデン大統領との電話会談の直後に、中止していたことが報じられた。

その後、アメリカは、イランへの大規模攻撃を弱めて、限定的とするなら、ガザのラファへの攻撃を黙認することに合意したとの情報が出ている。

しかし、ガザのハマスとイランは、無関係ではない。イランがいるからこそハマスがいる。

ラファへ突入してハマスを倒しても、イランを倒さなければ、また同じことになってしまう。イランを諦めて、ハマスを倒すという交換条件は、成り立つようで成り立たないのである。

とはいえ、打倒イランを優先すれば、人質を見捨てるということにつながりかねず、かつ、最大の同盟国アメリカをも失うことになる。

www.timesofisrael.com/pm-shelved-pre-approved-plans-for-immediate-iran-reprisal-after-biden-call-report/

今後、イスラエルはどう出るのか。いよいよラファへの攻撃に踏み切るのか。それともイランが先か。ネタニヤフ首相と戦時内閣は、相当なジレンマの中で、決断しなければならない。

来週から始まる過越期間が終まで、動くことはないとの予想もあるが、逆に敵の方から、過越の日を狙って攻撃してくる可能性もある。そうなれば、過越期間中でも反撃に出なければならないだろう。

かつて、ナチスは、1943年の過越の日にワルシャワゲットーを壊滅させた。1973年、アラブ連合軍は、ヨムキプール(大贖罪日)でイスラエル全土が断食している日に、襲撃してきたのであった。

イスラエル人たちは今、終わりの見えない緊張の中で、過越を迎えようとしている。

イスラエル人たちの思いは?

このようなジグザグの不安定極まりない、危機的な状況が、長く続く中で、イスラエル人たちはどう感じているだろうか。当たり前だが、この話を出して、顔がくもらないイスラエル人はいない。

本日また、ビバさん家族が拉致される瞬間のビデオクリップが発表された。

狂気に満ちたハマスの様子を見れば、気持ちが動転しない人はいないだろう。

これほどの攻撃をイスラエルにしかけるまでに、ハマスを育てたのが、イランなのである。

www.jpost.com/israel-hamas-war/article-797609

現在日本に在住しているが、ハイファ(イスラエル北部最大の都市)に家族がいるSさんたちは、イスラエルが300ものUAVとミサイルを99%迎撃したことを「すごかった」と声を弾ませていた。

しかし、同時に、イスラエル北部へヒズボラの攻撃が続いていることから、今後、ハイファにも攻撃が及ぶかもしれないと顔を曇らせていた。

Sさんは、イスラエルは、今は、イランの石油施設を全部破壊して、イランの経済を破壊すべきだとも語っていた。今、イランを攻撃しないなどありえないが、残念なことに、もしかしたら政府は、攻撃しないかもしれないとも悔しそうに語っていた。

とはいえ、Sさんは、国の指揮をとるのは、ネタニヤフ首相であるべきだと言っていた。Sさんによると、ネタニヤフ首相とその政府を倒したい左派勢は、金でデモに参加する人を雇っている場合があるという。実際、SさんとSさん家族もそういう誘いを受けたことがあるとのこと。

Sさんは、イスラエルで、毎週末に大規模に行われている反ネタニヤフ首相のデモ(注:政治は別として人質返還のみを訴えているグループもある)が報じられているが、実際には、イスラエル人の8割は、ネタニヤフ首相を支持していると言っていた。これまでイスラエルの繁栄を守ったのがネタニヤフ首相だと思うからとのこと。

このような時に祖国から離れて暮らすことは、どれほどにつらいことかと思う。

先日ヘブライ大学の調査として、国民の74%は、同盟国との関係を失ってまで、イランへの攻撃はするべきではないとの結果を伝えたが、このデータが、実際どこまで反映しているのか、ある程度は疑ってもいいのかもしれない。

実際のところ、何がイスラエルにとってよいことなのか、私たちには知る由もない。ただ天の上からみておられる神、主に介入をお願いするのみである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。