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アメリカがベネズエラ首都を攻撃:マドゥラ大統領夫妻を逮捕
日本でもトップで報じられているように、1月3日、アメリカが、午前2時前から3時15分ぐらいまでの間、ベネズエラの首都、カラカス南部の軍事複合施設、空軍基地への空爆を実施した。
この間に、ニコラス・マデュロ大統領(63)とその妻の身柄を拘束し、ニューヨークの刑務所へ連行した。この後、軍事行動は停止した。
それから約2時間後の5時21分、トランプ大統領が、カラカスへの攻撃とマデュロ大統領夫妻を逮捕することに成功したとの声明を出した。
世界は、アメリカが国際法を違反したと大騒ぎになっている。また、外国へ侵攻したロシアや、台湾有事で問題になっている中国に、悪影響になるのではないかとの懸念も広がっている。なお、ロシアと中国は、アメリカのベネズエラ攻撃を非難する声明を出している。

トランプ大統領は、当初、アメリカがベネズエラを運営するとの声明を出していた。
しかし、その後、ベネズエラの最高裁は、ロドリゲス副大統領を暫定大統領に指名。ロドリゲス暫定大統領は、当初アメリカへの抵抗も表明していた。
トランプ大統領は、ロドリゲス暫定大統領は、アメリカの方針に従うべきだと言っていた。しかし、その後、協力体制にあると言いつつ、もし反発があれば、新たな攻撃も辞さないと述べている。(日経)
www.nikkei.com/article/DGXZQOGN051OM0V00C26A1000000/
今後、ベネズエラがどうなっていくのか。世界にどんな影響があるのか。イスラエルには?世界にとって、大きく揺り動かされた幕開けとなった。
アメリカはなぜベネズエラを攻撃したのか
1)マドゥロ大統領一家と麻薬密売の問題
トランプ大統領は、第一回目の任期の2020年の時点で、すでにマドゥロ大統領夫妻を、麻薬取引の罪で、ニューヨークのマンハッタン連邦裁判所に訴えていた。
アメリカの暴力的組織やテロ組織が、マドゥロ大統領率いるベネズエラ政府と直接のつながりの中で、数千トンの子カインをアメリカに輸送しており、収入は、マドゥロ大統領個人に入っていると訴えていた。
Times of Israelによると、マドゥロ大統領の妻は、2007年に、数十万ドルの賄賂を受け取って、麻薬密売人と、ベネズエラの国家麻薬対策局長との会談を取り持っていたとして訴えられていた。
密売人は、この手配により、この局長に毎月10万ドルの賄賂を払うことで、麻薬持ち込みを黙認されていたという。一部はマドゥロの妻へのマージンになっていた。
トランプ大統領は、ベネズエラから来る麻薬密輸船1隻につき、平均2万5000人のアメリカ人が死に至っていると述べている。(BBC)
この他、麻薬で借金してしまった人に、誘拐や殺人といった犯罪をさせた容疑もある。
www.timesofisrael.com/how-cocaine-and-corruption-led-to-the-indictment-of-maduro/
トランプ大統領は、非難するだけでは、話が進まないからか、昨年9月以降、麻薬密輸船への軍事攻撃を行なっており、これまでに100人が死亡。(日経)
2025年12月30、31日にも公海上で麻薬密輸戦を攻撃し、5人が死亡していた。
今回の首都攻撃の作戦については、数ヶ月前から準備がされていたと伝えられている。
2)石油事業腐敗の問題
トランプ大統領はまた、ベネズエラの石油企業の腐敗も指摘してきた。ベネズエラの石油会社は、国営である。
そのベネズエラの石油埋蔵量は、2020年時点で、埋蔵量が20%近くの上り、世界第一位となった。しかし、国営の石油企業が効果的な開発をしていないため、世界に供給する石油生産量はわずか1%とのこと。
加えて、国がこの1%からの収益で、麻薬取引やテロ支援を進めている他、イランや中国への支援につながっているというのが、トランプ大統領が訴える点である。
トランプ大統領は、マドゥロ政権を打倒した今、ベネズエラからの原油輸出は当面、禁輸措置を取るとしている。その間に、アメリカの石油企業が入って、開発を進めると言っている。
jp.reuters.com/opinion/ZA5EJOJPM5OVLGD4UPQMULBLT4-2026-01-04/
3)マドゥロ大統領の失脚は国内外で要望されていたという現実
ベネズエラは、長きにわたり、独裁や内戦の歴史を歩んできた国である。今のマドゥラ大統領もいわばその流れの中にあるということである。
ベネズエラは、1830年にベネズエラ共和国として、コロンビアから独立。その後、独裁政権や内戦が続く状態にあった。近年では、1992年のクーデターでチャベス政権が発足。国名がベネズエラ・ボリバル共和国になった。
チャベス大統領は、社会主義、反米路線で、キューバ、中国、ロシア、イランと接近した。2013年にチャベス大統領が、癌で死亡すると、副大統領だったマドゥロ大統領が、大統領となった。しかし、マドゥロ政権は、野党の方が3分の2を占めるなど不安定な状態が続いた。
2019年1月にはその対抗勢力として、国民議会議長だったファン・グアイド氏が出てくる。グアイド氏は、この年の大統領選挙は不正であったとして、マドュロ大統領に就任は不当だとして、自分が暫定大統領だと宣言。
この年、ベネズエラには、2人の大統領が存在することとなった。国際社会は、グアイド氏を支持する傾向にあった。
2019年2月には、ベネズエラで、マドゥロ大統領の退陣を求める大規模なデモが発生した。国際社会からもマドゥロ政権は支持されなかったが、マドゥロ政権は継続していた。
こうした混乱の中で、これまでに祖国を後にしたベネズエラ人は、800万人に上る事態になっていた。そうして、2025年、このマドゥロ政権に反対して、立ち上がった議員、マリア・コリーナ・マチャド氏が、ノーベル平和賞を受賞したことは記憶に新しいところである。
このように、マドゥロ大統領の失脚を喜ぶ人は少なくないということである。実際、マドゥラ大統領の失脚を受けて、世界あちこちに出ていた、ベネズエラの人々が、「新しい始まりだ」「祖国に帰れる」と喜んでいる様子が報じられている。
www.france24.com/en/live-news/20260103-venezuelans-in-spain-rejoice-at-prospect-of-return-home
トランプ大統領は、今回の攻撃の前に、「あなたは辞任するべきだ」と伝えていたとのこと。
www.timesofisrael.com/how-cocaine-and-corruption-led-to-the-indictment-of-maduro/
アメリカは国際法違法?これからどうなる?
ベネズエラの人々の多くは喜んでいるのだが、世界はベネズエラの首都に攻撃し、その大統領を逮捕したアメリカは、国際法違反だと激しい論議になっている。
またアメリカ国内からも、攻撃が議会の承認を得ていなかったとの指摘が出ている。これについて、ルビオ米国務長官は、作戦上、議会を通すものではなかったと述べた。
またマドゥロ大統領夫妻は、アメリカからすれば、報酬5000万ドルがかかった指名手配犯であり、逮捕は、アメリカの司法からの指示であった(法的行為)と説明している。
マドゥラ大統領は、本日1月5日に、ニューヨークの法廷に立つ予定と報じられている。
www.timesofisrael.com/how-cocaine-and-corruption-led-to-the-indictment-of-maduro/
国連安保理は、ベネズエラの要請を受けて、この件を審議することになっている。
イスラエルは希望を表明:アメリカの攻撃はイランやハマスへの警告になるか?
ベネズエラは、2009年にイスラエルのガザ政策に反対するとして、国交停止。2023年10月7日事件についても、世界でイスラエルへの非難を表明した最初に国であった。
アメリカのベネズエラの軍事施設を攻撃し、無力化した上、マドゥロ大統領を逮捕したとの報道が出ると、イスラエルのギドン・サル外相は、麻薬とテロのネットワークを率いた独裁者が排斥されたとトランプ大統領を称賛。
ベネズエラで、民主主義が回復し、イスラエルが再び、ベネズエラとの国交を回復できるとの希望を表明した。ネタニヤフ首相も、Xに「おめでとう」とのコメントを投稿した。
また野党のラピード氏は、イランは、ベネズエラで起こったことに注意を払うべきだとのコメントを出した。
トランプ大統領は、イランで反政府デモへの暴力を続けるなら介入もありうると言っていることから、ベネズエラの件をみると、それもありえないことではないと考えるべきだと警告したということである。
www.timesofisrael.com/israel-expresses-hope-for-resumption-of-venezuela-ties-after-maduros-deposal/
石のひとりごと
日本でも毎日報道されているニュースである。誤り等発見された方はぜひご指摘をお願いしたい。
イランでの反政府デモが発生して、政権が弱体化していると見られる中、アメリカがベネズエラ攻撃を実施したことは、イスラエルには、後押しになるとの分析も出ていた。
しかし、世界が非難するアメリカの動きについて、イスラエルは称賛を出したということで、またイスラエルが非難される種にならないかとも思ったりする。アメリカとイスラエルが孤立する流れのひとつになる一つではないかとも思ったりする。
日本はどうか?報道によると、日本の高市首相は、この件に公のコメントは控え気味である。幸い、日本はベネズエラから石油を買っているわけでもなく、影響はほとんどないとのこと。(読売)むしろ、トランプ大統領との関係の方が大事なのかもしれない。
2026年もなかなかの激動になりそうである。
