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アメリカがイエメン・フーシ派を攻撃
テルアビブに12月20、21日の2日間の間にイエメンから、ミサイルとドローンが2回発射されたが、2回とも迎撃できずに、市街地に着弾。負傷者が16人発生した。
1回目の後、イスラエル軍は、イエメンの首都サナアと、フーシ派の主要3港を空爆。大きな打撃を与えた。その後に来た2回目の攻撃の後、反撃したのは、イスラエルではなく、アメリカ軍だった。
アメリカ中央軍(CENTCOM)は、21日(土)早朝、フーシ派のミサイルが、テルアビブに着弾した数時間後、イエメンのフーシ派のミサイル保管センターと指揮センターを空爆。この間に、ドローン数機と、対艦ミサイルを迎撃したと発表した。
この攻撃中、アメリカ軍戦闘機が1機が、紅海上空で、友軍による攻撃で撃墜され、乗組員2人は脱出したが、負傷するという事故が発生していた。アメリカは現在、詳しく調査を行なっている。フーシ派は、これはフーシ派が撃墜したのだと主張している。
フーシ派は、昨年10月7日以来、紅海南部では、米軍や国際船舶への攻撃している。このため、アメリカは、イギリスとともに、これまでからもすでに、イエメン国内のフーシ派拠点への攻撃を行っていた。CENTCOMは今回の攻撃について、その一環だと主張している。
www.timesofisrael.com/us-strikes-houthi-targets-in-yemen-takes-down-drones-over-red-sea/
アメリカが攻撃したためか、今の所、イスラエル軍が動く気配はないが、ネタニヤフ首相は、12月22日(日)、他のイラン傀儡組織との戦いで使用したのと同じ武器で、フーシ派も攻撃すると警告している。
なお、トルコによると、フーシ派は、昨年7月以来のアメリカとイギリス、イスラエルの攻撃で、主要なホデイダの港湾都市を破壊され、3億1300万ドル(約500億円)の損失を受けており、経済的に大きな損害を受けているとみられている。
サウジアラビア系のメディアは、フーシ派指導者たちが、首都サナアから脱出しているとの情報を出しているが、まだ未確認。
イスラエルはなぜ迎撃に失敗したのか
フーシ派は、この1年の間、イスラエルに、弾道ミサイルを200発以上、ドローンを170機以上発射してきたが、それらはすべて迎撃してきたのであった。
ところが今回は、ミサイルもドローンも、イスラエルの迎撃をすりぬけて、テルアビブの市街地に着弾していた。負傷者が16人出たが、いずれも軽傷であったことは、奇跡であった。
イスラエル軍はなぜ迎撃に失敗したのか、綿密に調査を続けており、すでにその学びを生かす対策に入ったと言っている。
今回、イスラエル軍は、長距離対応のアロー、中距離のダビデの投げ縄、短距離のアイアンドームと、数種類の迎撃ミサイルで迎撃を試みていた。フーシ派のミサイルは、これを全部すりぬけていた。
その原因として、ミサイルが予想外の方向から発射されており、あらゆる探知システムがキャッチできていなかった。
その理由として、考えられることは、今回のミサイルが、機動弾頭の極超音速巡航ミサイルであったという点である。
このミサイルの場合、普通の動きで飛ばないため、経路の予想が難しい。また、普通の巡航ミサイルルより、急角度かつ高速で落下するので、迎撃にはより精度の高いものが必要になるとのこと。イスラエル軍は、今、さらに精度の高い迎撃ミサイルを準備しているものと思われる。
なお、フーシ派が、このような超音速のミサイルを持っているはずはなく、明らかにイラン製のミサイルだということである。
www.ynetnews.com/article/r1yhnsetr
イスラエルは今、フーシ派よりイランを攻撃するべきか否か
ネタニヤフ首相は、フーシ派を他の組織のように無力化するまで攻撃すると言っているが、国内からは、今はフーシ派ではなく、その親玉であるイランを攻撃するべきだとの声が上がっている。
イスラエルは、10月末、イランからの攻撃に対し、その本土への反撃を行い、イランの防空システムをほぼ無力化することに成功している。今であれば、戦闘機がイラン上空に入ることも可能かもしれない。
こうした中、イラン傀儡のハマス、ヒズボラ、アサド政権がほぼ無力化された後、唯一残っている、フーシ派がイスラエルへの攻撃を続けていることについて、イランが、イスラエルがイランへの攻撃に集中できないようにしているとの見方もある。
これについて、イランのハメネイ師は、22日(日)、テヘランにおいて、「アメリカは、イランが傀儡組織を失ったと言っているが、それは間違いだ。イランは代理の軍隊を必要としない。」と豪語した。
www.timesofisrael.com/khamenei-says-iran-does-not-have-or-need-proxy-forces-in-middle-east/
イラン国内は、深刻なエネルギー不足で、極寒の冬に停電を強いられ、企業や学校が閉鎖する事態になっているが、NYTは、イスラエルが、昨年2月にイランのパイプラインを攻撃したことも今のエネルギー不足の一因になっていると指摘している。
イラン国内の政府への不満はかなり高まっていると予想され、イランはその対処に追われる可能性がある。
さまざまな理由から、今なら、イラン核兵器関連施設を無力化するとともに、政権崩壊に持ち込むことも可能かもしれない。イランが倒れたら、フーシ派は立ち行かないことは間違いない。
モサドのバルネア長官は、今は、フーシ派でなく、その頭であるイラン攻撃を優先すべきだとの意見を政府に伝えた。
www.ynetnews.com/article/byne3j8byl
しかし、イスラエル軍は、ネタニヤフ首相に、今は、イランではなく、フーシ派を攻撃すべきだと考えている。
エルサレムポストによると、ネタニヤフ首相は、今は、イスラエル軍の意見を採用し、イランへの攻撃には踏み切らない可能性が高いと言っている。