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新政権就任式延期
今日は、新第35ネタニヤフ政権就任とのニュースを書くはずだったが、なんと、就任式は、その数時間前になって、あさって17日に延期になったと発表された。
ネタニヤフ首相所属のリクードのベテラン政治家たちが、新政権で提示されたポジションに不服を訴えて、就任式をボイコットすると言っているからである。
今回の政府与党は、敵対する2大勢力(ネタニヤフ首相の中道右派陣営と、ガンツ氏の中道左派陣営)が一つの政府を形成するので、大臣のポジションの数は、きっちり2分することになった。そのため、大臣36人と、イスラエル史上最大の政府になる見通しである。
最終的に政権を形成する2大勢力は以下の通り。
①ネタニヤフ首相中道右派陣営:リクード、シャス、統一トーラー党
ナフタリ・ベネット氏(前防衛相)を中心とする右派ヤミナがどうするか揺れていたが、最終的に、左派のガンツ氏との協力はできないとして、野党にとどまると発表した。
②ガンツ氏中道左派陣営:青白党、労働党、ゲシェル、デレック・エレツ党
ガンツ氏の左派陣営については、労働党が合流を表明。続いて、ゲシェルとデレック・エレツ(青白党から離脱した元テレム党員)が加わった。アラブ統一正統はここに入らない。
大臣の椅子はこの2大勢力で2分されるが、数は2当分でも、その重要性は、全部が等しいわけではない。重要なポジションもあれば、ポジションを増やすために新たに作り上げたポジションもある。
その分配においては、ネタニヤフ首相が首相であり続けるために、”妥協してくれた”ガンツ氏に強みがあるとみえ、需要なポジションはほとんど青白党がせしめる構図になっている。このため、リクードで、これまで長年、重要なポジションを維持してきたベテラン政治家たちが納得せずに、もめているということである。
就任式を延期する場合、ネタニヤフ首相は、ガンツ氏の承認を得なければならないが、ガンツ氏が、ネタニヤフ首相の延期願いを聞いたのは、メディアを通じてであって、ネタニヤフ首相本人からではなかったという。正式な延期要請は、すでに延期がメディアで公表された後だったので、ガンツ氏は認めざるをえなかった。作戦であったのか、そこまでリクード内部が混乱していたかというところだ。
なお、ガンツ氏が、今の国会議長という役職を返上し、統一政権の2大勢力党首の一人として、また次期政権での防衛相という立場になることについては、延期されずに実施された。これにより、ネタニヤフ首相が、単独で、4回目の総選挙に持ち込んでしまうことはできなくなっている。
それにしても、昨日のうちに就任式予定であったものが、ポンペオ米国務長官の来訪で延期になっただけだと思っていたが、リクード内部では、まだ大臣の椅子の配分について結論が出ていなかったというのは驚きである。
国務長官が帰国したのちに、交渉が再開されたが、結局期限の水曜夜中までに、決定することができなかった。本日、15日は、安息日入り金曜なので、土曜安息日明けから夜中にかけて、また交渉が再開されるとみられる。
イスラエルは最後の最後まで、変化がありうるので、記者泣かせだが、まさにその通りである。
www.timesofisrael.com/government-swearing-in-pushed-to-sunday-as-likud-mks-jockey-for-cabinet-posts/
防衛相・外務相:重要ポジションは青白党
これまでのところで、ほぼ今決まっている主なポジションは以下の通り。重要ポジションの多くは青白党になっている。
防衛相:ベニー・ガンツ氏(青白党)、外務相:ガビ・アシュケナジ氏(青白党・元軍参謀総長)*18ヶ月後に、ネタニヤフ首相が降板し、ガンツ氏が首相になる時には、アシュケナジ氏が防衛相になる。
経済省:イスラエル・カッツ氏(リクード)、法務省:アビ・ニセンコーン氏(青白党)、保健省:ユリ・エデルステイン氏(リクード)、内務省:アリエ・デリ氏(シャス党)
公安省:アミール・オハナ氏(リクード) 交通省:ミリ・レゲブ氏(リクード)
国会議長:ヤアリブ・リブリン氏(リクード・元国内治安維相、観光相などを歴任)
新型コロナ危機がまだ終わっていない中で、保健相に、前国会議長で、医療従事者ではないユリ・エデルステイン氏が任命されたことについて、コロナと戦うと言いながら、戦う気がないのではとの批判が出ている。
今回、コロナとの戦いにおいて、超正統派で、科学にはほとんど知識がないリッツマン前保健相の元で、優れた指揮をとってきたバル・シモン・トーブ長官は、辞任を表明した。これからのコロナとの戦いは、違う保健省と長官の元で戦うことになる。
公安省、言い換えれば警察に関係する省に任命されたアミール・オハナ氏は、ネタニヤフ首相に非常に忠実であることで知られるが、昨年6月からの暫定政権では、法務相として、ネタニヤフ首相の指示に忠実に動いた人物であった。
警察は、5月24日から汚職で法廷に立つネタニヤフ首相が、自分の刑に関してなんらかの影響を及ぼすのではないかと懸念する声明を出している。
www.timesofisrael.com/netanyahu-confirms-ohana-as-public-security-minister-amid-police-concerns/
ミリ・レゲブ氏(前文化スポーツ相)は、イスラエル史上初の女性交通省だが、不満足だったらしく、18ヶ月後にネタニヤフ首相からガンツ首相に交代する際に、外務相にするとの約束をとりつけている。
納得いかないリクードのベテラン政治家
今回、ポジションの割り当てがなかったリクードの政治家の中には、アビ・ディクター氏(内務相など歴任)と、ツァヒ・ハネグビ氏(諜報機関の首相府大臣など複数の大臣職を歴任)がいる。2人は就任式をボイコットすると表明している。
元エルサレム市長のニール・バルカット氏も、あまり重要でないポジションを割り当てられたため、これを拒否。また教育相を2分して高度教育相というポジションをつくり、それを割り当てられた政治家もこれを拒否した。
リクードではないが、ヤミナのラフィ・ペレツ氏は、ネタニヤフ首相と交渉し、エルサレム担当相のポジションの約束をもって、ヤミナから離脱したのだが、フタを開けてみれば、エルサレム担当相は、ダビッド・アムサレム氏(リクード)になる見通しとなった。
ペレツ氏は、自分がエルサレム担当相にならないなら、与党には入らないと言っているが、今更ヤミナに戻れるかどうかは不明。・・・というように、イスラエルの政界はきわめて混乱状態になっている。