「北の矢」作戦と命名:ヒズボラ拠点1600か所攻撃・23日中だけで492人死亡 2024.9.24

IDF headquarters in Tel Aviv, September 23, 2024. (Israel Defense Forces)

レバノンで北の矢作戦:ヒズボラ拠点1600か所攻撃:23日中死者492人

the southern Lebanese village of Zaita on September 23, 2024. (Mahmoud Zayyat/AFP)

23日朝IDFハガリ報道官の警告に始まり、イスラエル軍はレバノン南部、続いてベカー高原一帯の家屋などの建物に隠されている武器をピンポイントで空爆して破壊する作戦を開始した。

「北の矢」作戦と名付けられたこの作戦で、これまでに1600か所を攻撃、膨大な数のヒズボラの武器を破壊。

イスラエル軍のハレヴィ参謀総長は、今、ヒズボラが20年かけて積み上げたものを破壊していると述べた。

イスラエル軍によると、それらは、DR3巡航ミサイル(弾頭300kg、飛距離数百km)、攻撃用ドローン、短距離ロケット弾(弾頭100Kg、飛距離は50km)、重量級ロケット弾(爆弾等1000kgまで可能。飛距離は15km)、中重量ロケット弾(弾頭100―500kg、飛距離50-200km)

問題はこれらがほぼすべて、一般民間人の家に保管されていたという点である。

イスラエル軍の攻撃に反応して、暴発が相次いでいる他、保管されていたロケット弾が、暴発して隣の家に向かって発射されてしまうものもあった。イスラエル軍はその映像を公開した。

また、南レバノンの村ホーミネ・アル・タフタの家の屋根裏部屋に保管され、屋根が開いて発射する準備が完了していた長距離ミサイルの写真を発表した。

この下の1階部分には、この家の家族が普通に住んでいたということである。

ハガリ報道官によると、この20年ほどの間に、ヒズボラはイスラエルとの国境から80キロ圏内に、膨大な数のミサイルなどを一般家庭に設置していた。

これらの武器を破壊するにあたって、人間の盾になっている人々の犠牲を防ぐため、ハガリ報道官とイスラエル軍は、攻撃の前に、携帯からラジオまであらゆる方法で、アラビア語で自宅から離れるよう警告していた。

対象地域の群衆が、パニックになって逃げた。

しかし、レバノン保健省によると、23日中だけで、492人が死亡。1645人が負傷した。死者の中には、ヒズボラの武器が二次暴発して死んだ人もいるとみられている。

イスラエルの説明とメッセージ

1) ネタニヤフ首相

ネタニヤフ首相は、23日夜、レバノン市民に対するメッセージを発表した。ネタニヤフ首相は、イスラエルの戦争は、あなた方との戦争ではなく、ヒズボラとの戦争だと強調。

ヒズボラは、もう長い間、ロケット弾を居間に、ミサイルをガレージに置いて、あなたがたを人間の盾にしてきたと述べた。

またそれらの武器が、イスラエルの国と人々に直接向けられているので、排除しなければならないと述べ、今朝からイスラエル軍は、あなた方に逃げるよう警告してるが、どうかその警告を真剣に受け止めてほしいと呼びかけた。

ヒズボラにあなたと愛する人々、またレバノンを危機に陥れさせてはならないと。作戦が終わったら、安全に家に帰れるようになる。すぐ家から出てくださいと語った。

2) イスラエル軍ハガリ報道官

またハガリ報道官は、最新の英語メッセージで、ヒズボラがイスラエルに対して、10月7日のハマスのような大規模な攻撃「ガリラヤ征服作戦」を北部国境住民からわずか数百メートルの地点で準備されていたと発表。

先週金曜にベイルートで、イスラエル軍が暗殺したヒズボラ幹部たちは、この計画をすぐにも発動しようとしていた。だからイスラエルは攻撃しなければならなかったと述べた。

ハガリ報道官は、「はっきりさせておくが、南レバノンを、イスラエルを攻撃する戦場にしたのはヒズボラだ。責任はすべてヒズボラにある。

イスラエルは、市民の家に、武器が蓄積され、それが別の市民に向けられることを受け入れることはできない。

国際社会は、ヒズボラが、国境の双方の市民を危険にさらしたことを知らなければらならない。

イスラエルは、作戦に際し、市民を犠牲にしないよう、最善を尽くした。レバノンで多くの犠牲者が出ていることは遺憾に思う。しかし、そのかなりの人数は、私たちが破壊した武器のそばにいたヒズボラのテロリストだ。

イスラエルは、敵に囲まれている。市民を守らなければならない。まだやるべきことが多数ある。

いかなる手段を使ってでも、ハマスの元で、悲惨な環境に置かれている人質を取り戻さなければならない。ガザのハマスも無力化しなければならない。

そうして、南北国境のすべてのイスラエル市民に安全を実現しなければならないと語った。

イランのペデシュキアン大統領反応:イスラエルはイランを戦争に引き込もうとしている

September 19, 2024. (AP Photo/Vahid Salemi)

国連総会で、ニューヨークを訪問中のイラン(ヒズボラ保護者)のペデシュキアン大統領は、イランは大規模な戦争は望んでいないと語った。

イスラエルも同じように言っているが、その行動は別で、イランを戦争に引き込もうとしていると語った。

イランが介入するかどうかについては名言しなかった。しかし、アメリカがイスラエルへ軍事支援を続ける限り、イランは、ヒズボラへの支援を続けるだろうと述べた。

www.timesofisrael.com/iranian-president-says-lebanon-strikes-are-an-israeli-trap-to-draw-tehran-into-war/

まだ本格的な戦争ではない:元安全保障会議議長・元IDF司令官ヤアコブ・アミドロール氏

アミドロール氏は、元イスラエル軍長官で、2011-2013年の間、ネタニヤフ首相の元で、安全保障会議の議長だった。冷静に現状を見分けて分析する専門家としてしられる。

アミドロール氏によると、これまでにイスラエルが破壊したヒズボラの武器は、全体の10%にも満たないという。

また、ヒズボラも、首都であるテルアビブを標的にしていないことから、今はまだ全面戦争ではないと語る。

アミドロール氏は、ヒズボラがレバノンでは、ガザでのハマスほど人気がないため、イスラエルとの大規模な戦争でレバノンにそのツケを払わせるという選択肢はとらないだろうと語る。

つまりヒズボラが、全面戦争のきっかけをつくらない。今はまだ決定的な戦争にはならないという予想である。

イスラエルが、今回、どこまでヒズボラの武器を処理できるのかはわからない。将来の決定的な戦争まで残されるのかもしれない。アミドロール氏は、これが、イスラエルが20年間レバノンへの投資(何の対策も取ってこなかった)してきたことの結果だと、政府を批判している。

www.jpost.com/breaking-news/article-821432

国際社会の反応

今後、イスラエルがどこまで空爆を続けるかだが、次に予想されることは、イスラエルの地上軍が南レバノンへ入ることである。アメリカは明確にこれに反対を表明している。

国連では今ちょうど、国連総会が開催されており、各国首脳がニューヨークに集まっている。

国連、EUからも、エスカレートを懸念するとの表明はあるが、イスラエルを非難する声明はみあたらない。アミドロール氏が言うように、今はまだ、本格的な戦争にはなっておらず、まだこのまま沈静化するみこみもゼロではないということかもしれない。

ネタニヤフ首相は、ヒズボラ攻撃が始まったため、ニューヨーク行きを遅らせていたが、明日25日出発予定である。

www.timesofisrael.com/us-official-were-against-israeli-ground-op-in-lebanon-want-diplomatic-off-ramp/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。