「パレスチナ国家はありえない」ネタニヤフ首相がE1建築計画に署名 2025.9.12

Attached photo credits: Ma'ayan Toaf (GPO)

パレスチナ国家承認に向かう国際社会

国際社会では、今、長引いているガザ戦争を終わらせ、恒久的な平和をもたらすためには、パレスチナ国家を設立するしかない、との考えが広がっている。フランス、イギリス、カナダなどG7からも、次々に、パレスチナ国家を承認する意向表明が出ている。

国連では、本日、二国家解決に関する投票を行う。また、フランスとサウジアラビアが中心となって、22日(月)に、パレスチナ国家承認について、が話し合われることになっている。

この時に、新たにパレスチナ国家を承認しようとする国が、その意向を正式に表明することになる。

なお、国連では、その加盟国193カ国中、147カ国は、すでにパレスチナ人の国を承認している。これにより、パレスチナ自治政府は、まだ国連加盟国ではない中、オブザーバーとしての立場で国連に出入りしている。

まだ国と認めていないのは、G7含む欧米諸国で、日本もまだ承認していない。しかし、林官房長官が、日本は二国家共存を支持していると強調した。

また、11日(木)岩谷外相が、超党派「人道外交議員連盟」から、パレスチナを国家として承認するよう、政府に求める要望書を受け取ったとのこと。承認するかどうか検討すると言っている。

www.nikkei.com/article/DGXZQOUA115CU0R10C25A9000000/

パレスチナ国家はありえないとネタニヤフ首相

イスラエルは、今現在の治安状況、またこれまでにパレスチナ国家を設立しようとして、逆にテロが増えて失敗してきた経験から、パレスチナ国家承認は絶対に認めないと、激しく反発している。

宗教シオニスト党のスモトリッチ財務相は、エルサレムと、西岸地区のユダヤ人地区マアレイ・アドミムの間にある、E1地区にユダヤ人の家屋3412戸を建設し、エルサレムとつなぐ計画を発表した。

これにより、西岸地区は、南北で分断され、国家設立が事実上、不可能になる形である。

世界からは非難の炎上となったが、ネタニヤフ首相が、9月11日(木)この地域を訪問しb、この計画に合意する文書に正式に署名。「パレスチナ国家はありえない」と宣言した。

この案は、もうずいぶん前からあった計画だが、国際社会の反発を受けて実施できなかったものである。それを今、実施するということで、国際社会に反旗を翻すようなものである。

www.timesofisrael.com/there-will-be-no-palestinian-state-pm-signs-plan-cementing-e1-settlement-expansion/

なお、西岸地区のパレスチナ自治政府は、厳しい経済不審に陥っており、自治政府が転覆して、カオスに突入する可能性が懸念されている。強硬右派は、それも予想しているのか、近い将来、ユダヤ・サマリア地区(西岸地区)をイスラエルに併合する野望を口にするようになっている。

www.timesofisrael.com/there-will-be-no-palestinian-state-pm-signs-plan-cementing-e1-settlement-expansion/

石のひとりごと

2000年代初頭から、イスラエル情勢を追ってきた中で言えることだが、現実問題として、また特に今のパレスチナ人の状況で、パレスチナを国として承認することには無理があると思う。

今のパレスチナの支配者が、基本、テロ組織だからである。国になる準備もそれを真剣に目指す動きもないからである。

国になるには、まず自国のイメージとともに、隣国と共存し、共に助け合い、成長するという目標が必要になるが、今のパレスチナ社会には、どれもみあたらない。こういう信念がない中では国は成り立たないと思う。

にもかかわらず、国際社会がまともに、国として認めようとしている。そんな特権を今の状況で与えようものなら、現地にいる両方の人々に命の危機が及ぶことになる。

現地の実情を何も知らない人たち、特にそこに行ったこともないような人が、感情論や自分自身の正義感や、人道問題だけで国承認というのは、無責任に過ぎると思う。

一方で、それがわからない人々の前で、強硬右派たちが、強行的に西岸地区を併合することになれば、イスラエルは、さらに非難の的になるだろう。とはいえ、パレスチナの国が承認されたら、今後の嵐は恐ろしいことになるので、何かしなければならないわけである。

あらゆる点において、イスラエルは今、ジレンマに直面していると言われている通りである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。