米議会乱入事件その後:反ユダヤ主義のサインも 2021.1.11

トランプ大統領弾劾への動き

6日、アメリカ、ワシントンでトランプ支持者とされる群衆が、議会に乱入した事件。最終的に警察官1人を含む5人が死亡した。この事件に先立ち、トランプ支持者らが、大きなラリーを行っており、そこから議会に乗り混んでいったという経過から、トランプ大統領がこれを扇動したとの非難が高まっている。

トランプ大統領は、敗北を認め、バイデン氏への政権移行をスムーズに行うと発表したが、就任式には行かないとして、バイデン陣営が選挙において、大きな不正を行ったことについての訴えは続けている。このため、まだ支持者らを扇動する可能性があるとして、ツイッター、フェイスブックが、トランプ大統領のアカウントを永久に凍結すると発表した。

さらには、トランプ大統領を弾劾すべきだとの声が高まり、ナンシー・ペロシ下院議長が、ペンス副大統領に、憲法修正第25上に基づいて、トランプ大統領を罷免することを求めると発表した。

アメリカの憲法によると、下院で弾劾に賛成する票が過半数になると、上院は、連邦最高裁判長を裁判長として弾劾裁判を開始することになる。3分の2以上が同意した場合、大統領は罷免され、副大統領が大統領代行になる。

トランプ大統領は昨年2月、ウクライナでの権力乱用疑惑で弾劾裁判まで行ったが、上院の過半数が共和党であったこともあり、大統領は無罪になったという経過があった。

ペロシ下院議長は、再びこのステップを開始しようとしているということである。なお、今は上院が多数派が民主党だが、ぎりぎりの多数派なので、弾劾裁判において、3分の2の合意を得るためには、共和党員が賛成する必要があり、そう簡単には、弾劾にはならないとみられる。

www.timesofisrael.com/pelosi-pushing-ahead-with-impeachment-says-trump-imminent-threat-to-democracy/

議会乱入者らの中に反ユダヤ主義勢力

FBI(米連邦捜査局)は、ビデオ映像などから関与した人々を調査し、これまでに数十人を逮捕・追訴している。そのうちわけは様々で、人種差別主義者なども含め、たんにトランプ大統領支持者とひとくくちにはできない様相である。
これらをひとくくりにしてトランプ大統領支持者らと言われるままに、ツイッターやフェイスブックで反論できないトランプ大統領の心情は計り知れない。
エルサレムポストによると、議会になだれこんだ群衆の中には、反ユダヤ主義を示すシンボルを掲げている者もあり、トランプ大統領の失脚とともに、反ユダヤ主義も悪化することが懸念されている。
乱入者の一人は「キャンプ・アウシュビッツ:働く者に自由を」と書かれたシャツを来ていた。これはアウシュビッツ死の強制収容所に掲げられていた文字である。
この他、陰謀主義、極右や極左の旗も紛れ込んでいた。特に、QAnonと呼ばれるアメリカの極右勢力で、FBIが、テロ組織と指定している団体が参加していたことがニュースになっている。陰謀論の流れで、ユダヤ人を敵視することでも知られている。
「シオン賢者の議定書」を支持し、昔からある「血の中傷」(ユダヤ人はキリスト教徒の子供の血を過越に使っているという陰謀論)とも関係があるとされ、ユダヤ人にとっては非常に危険なグループである。
また、ホロコースト否定主義者や、ネオナチもこの暴動の中に参加していたという。極右活動家ベークド・アラスカは、民主党ペロシ下院議長のオフィスから、議会乱入を中継していたという。NSC-131と呼ばれるネオナチもこの乱入に参加していた。
このほかにも、十字軍のシンボルほか、中世スタイルなど、様々な極右勢力が参加していた他、このデモに便乗して、「割礼は、サタンと獣の印だ。」とか、「サタンの割礼を追い出せ」といったサインもあったとエルサレムポストは伝えている。
一方で、イスラエルの旗を掲げたイスラエル人もこの集会(国会乱入前)に参加していたようである。以下は、イスラエルのメディアが封じたアメリカでの事件。ネタのヤフ首相がこの事件を避難する声明を出す様子も含まれている。
このアメリカ議会乱入をめぐっては、決して親トランプ派とだけは説明できない非常に複雑な背景があることを知っておく必要がある。

騒乱の背後で動くポンペオ国務長官

アメリカでの騒乱の背後で、あまり、ニュースには上がってこないが、ポンペオ国務長官は、トランプ政権終了までの駆け込み外交を続けている。
アメリカが、イランへの経済制裁締め付けの他、アブラハム合意への努力を続けていることはお伝えした通り。加えてポンペオ国務長官は、イエメンで、イランの参加にいるフーシ派をテロ組織に指定すると発表。
また、中国の香港への圧力が激しさを増している中、中国が独立を認めない台湾について、接触制限を撤廃すると発表した。次にバイデン大統領になっても、イランや中国に安易に近づけないように動いているようである。

石のひとりごと

親トランプラリーに、極右や極左や反ユダヤ主義グループなど、まさに反聖書的な入っている。トランプ政権がこれらのグループを支援していたわけはないのに、それらがかかわって世界の反感を招く形になっている。
そう断言できるのは、トランプ大統領と、特に最側近のペンス副大統領、ポンペオ国務長官は、強力な聖書を土台とするクリスチャンであるからである。トランプ政権は、おどろくほど聖書の基準に立つ様々な政策を目に見える形で進めてきたのである。
だからこそ、今それに反発する人間的で反聖書的な勢力が大暴れしているのかもしれない。これは、単なるれ時代の変化だけでなく、今大きな霊的な戦いが始まっているというであろう。
トランプ政権は、今、その使命を終えようとしている。アメリカはこれからどうなるだろうか。アメリカの教会もこれから苦難を迎えるだろう。今後、アメリカの教会についてもお伝えしていこうと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。