リクードのアミット・ハレヴィ議員は8日、イスラエルのメディアのインタビューで、神殿の丘をイスラム教とユダヤ教で分割する計画を表明した。
それによると、アルアクサモスクがある南側は、イスラム教徒たちのエリア、黄金のドームを含む北側と東側は、ユダヤ教徒たちの場になるという。加えて、ヨルダンの実質支配を終わらせることも視野に入れていた。
この4月には、極右政党で、現政権の閣僚でもあるベングビル氏が、神殿の丘への訪問を物議の中で決行し、「我々の計画はゆっくりだが進んでいる。」と意味ありげな発言をしていたこともあいまって、パレスチナ人の間で、危機感が広がった。
神殿の丘の分割案は、今に始まったことではないが、今回は、現役の与党議員からの発言であり、国会では与党が過半数を維持していることから、実際の行動に出やすいこと、また、ベングビル氏が警察庁を管轄下においていることからも、神殿の丘分割案は、以前よりも現実味を帯びているといえる。
www.jns.org/israel-news/jerusalem/23/6/8/293752/
これを受けて、パレスチナ自治政府のシュタイヤ首相は、「これが実施されたら、イスラム教徒たちの想像を超える怒りとなり、どんなことになるのか、想像すらできない。」と厳しい警告を発した。
シュタイヤ首相は、アラブ諸国やイスラム教界、さらには国際社会にむけて、「イスラエルに対して、非難声明にとどまらず、こんな計画を実施できないように厳しい経済制裁をするべきだ。」との激しい要請を出した。
www.jpost.com/middle-east/article-746020
当然ながら、ヨルダン、エジプト、ガザ、イスラム教界からも、そのことが実施されることへの想像を絶する危険性を指摘する声明も出された。
ネタニヤフ首相は、これに対し、「神殿の丘の現状維持の原則は守る。」と言い続けている。しかし、強硬右派議員たちの機嫌もとりつつ政権を運営しているネタニヤフ首相なので、今後の動きは、予測不能と見た方がいいだろう。
*神殿の丘の現状:ユダヤ人は入場制限・祈りも賛美も禁止
エルサレムの神殿の丘は、イスラエルの主権下にあるものの、管理権はヨルダンが維持するという、非常にややこしい形で運営が続けられている。イスラエルが所有者ではあるが、ヨルダンが管理者なので、イスラム教の教義にのっとったルールが最優先となる。
そのため、基本的にイスラム教徒以外のユダヤ人、キリスト教徒も、入場時間が限られ、そこで祈ることも、聖書や祈りの本を持ち込むことも許されていない。
しかし、神殿の丘は、イスラム教が発祥するはるか前の聖書の時代には、イスラエルの第一、第二神殿があった場所である。さらに、将来、この場所に第三神殿が立つことは、聖書に預言されている。(エゼキエル書40章)
このため、イスラエルには第三神殿推進派がその準備を始めており、今後はなんとかして、神殿の丘の管理権を取り戻すことが課題なのである。こうした考えを持つ人々は、少数派だが、今の政権にその立場を得たベングビル氏もその一人である。