東エルサレム出身のアラブ人双子:落ちこぼれからイスラエル軍戦闘部隊兵士へ 2020.5.11

ファレスさん(左)とフィラスさん:チャンネル12スクリーンキャプチャ Times of Israelhttps://www.timesofisrael.com/arab-muslim-twins-from-east-jerusalem-go-from-delinquents-to-israeli-soldiers

東エルサレムで生まれた双子のアラブ人少年たちが、犯罪で落ちこぼれていくところ、最終的にイスラエル軍の最強戦闘部隊、ゴラニ部隊隊員になるという、まったくありえないようなことがありえたという話を、チャンネル12が放送し、話題になっている。以下は番組の一部でフィラスさんのコメント

סיפורם המדהים של התאומים פארס ופיראס מוחמד

גם במציאות המטורפת של ימינו, סיפורם של פארס ופיראס מוחמד נשמע דמיוני: נולדו במזרח ירושלים למשפחה מוסלמית והסתבכו כנערים בחיי פשע, אבל רגע לפני שהידרדרו לתהום – החליטו להתגייס לצה"ל, וכיום שניהם לוחמים בגולני. צפו בכתבה המלאה >> bit.ly/2YNXByA

החדשות – N12‎さんの投稿 2020年5月9日土曜日

双子のファレスとフィラス・ムハンマドさんは、東エルサレムのイスラム教徒の家で生まれた。2人が2歳のときに、両親が離婚。母子家庭となった。母親は再婚したが、暴力的な夫から、当時10歳になっていた双子をつれて脱走。イスラエル側の女性シェルターに逃れた。

このため、双子はハイファのボーディングスクールに入った。2人はやがて非行に走る。暴力や、盗みなど犯罪に走った。15歳のとき、ファレスとフィラスは、ガソリンスタンドでの強盗を試みた。偽の銃をチラつかせながら怒鳴って怖がらせ、現金を奪った。しかし、防犯カメラに映っていた2人はすぐに逮捕された。

裁判官は、ファレスだけを、ニリム・ユース・ビデッジとよばれる少年院へ送る。そこでは、犯罪歴のある少年たちを、きびしい自然の中で、トレッキングなどをさせることで、サバイバルを経験させ、更生を図るという施設である。元エリートイスラエル軍司令官らによって設立された施設である。

当初、周りにいたユダヤ人の少年たちからは、「なぜここにテロリストがいるのか」との激しい訴えが出ていたという。しかし、ファレスは、そこにい続けた。18ヶ月後、ファレスが変わってきたと思われた頃、ふとんの下にナイフを隠していたことが発覚する。

それでも教官が、ファレスを諦めてしまうことはなかった。教官は、イスラエル南端のエイラットから、北端ダンまでのナショナル・トレイスを歩くことを勧める。ファレスはこれに応じた。イスラエル人の中には、人生の境目に、このトレイルを歩く人が少なくない。

無論、単独では行かせていない。カウンセラーが交代で、彼と共に歩いた。ファリスはこの7日間、スマホもなく、ただ自分に向きったのであった。この生き方を本当に続けたいのか。。。この経験はファレスを大きく変えた。

18歳になったとき、ファレスは、イスラエル軍に入隊を希望した。イスラエル軍の任務は、周辺アラブ諸国と戦うだけでなく、東エルサレムや西岸地区でアラブ人たちと衝突することになる。同胞たちと戦うことになるため、イスラム教徒のアラブ人はイスラエル生まれであっても入隊は問題外とされている。

「アラブ人なのになぜ、イスラエル軍に入隊するのか」・・・ファレスは、イスラエルが自分の母や自分にしてくれたことに感謝しているからだと答えたという。

一方、鑑別所に送られたフィラスは、相変わらず犯罪を繰り返して、刑務所に出たり入ったりであった。母親が、なんとか保釈金を積んで出してくれるのだが、あるとき、こんなことの繰り返しは嫌だと思い至った。

それで、フィラスもイスラエル軍に従軍を申し入れた。しかし、犯罪歴のあるイスラム教徒のアラブ人が、イスラエル軍に入隊希望を出すのである。最初、精神病院に送られそうになったという。

しかし、フィラスは諦めなかった。最終的に、イスラエル軍担当者は、屈強な、東エルサレム出身で、テロリストになっていてもまったくおかしくないこの双子を、イスラエル軍最強の戦闘部隊、ゴラニ部隊の訓練に送ることを決めた。

2人の訓練にあたったのは、ユダヤ教に熱心なアミハイ・タウブ司令官。最初別世界的なものも感じたが、すぐに2人が優秀な兵士であると信頼を持てるようになったと語る。特にフィラスは、常に熱心で、全力を尽くし、部隊の間でも人気があるという。

アラブ人の家族の間では、同然物議になったとのことだが、2人の母親がしっかり2人をサポートし、文句を言わせないという。

イスラエル軍では、訓練の終わりに、ベレー帽を受けるがその前に長距離ハイクを行う。この時、フィラスとともに歩いたのは双子の兄弟ファレスであった。フィレスのなく様子が映されていた。

フィラスは、今、イスラエル軍兵士として、ヘブロンで働いている。向こうにいるのは、自分と同年配のアラブ人たちである。東エルサレム出身ということは、ヘブロンに知り合いもいる可能性がある。突入の際には、顔は隠して突入するという。

無論、容易なことではないが、「自分もあのような立場にあったはずだ。でも今は母がユダヤ人の学校に入れてくれたことを感謝している。そうでなければ、いまごろどうなっていたかわからない」と語る。

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実際には、ファリスとファレスの行く道は厳しいだろう。イスラエル軍は、東エルサレムや西岸地区で、同胞アラブ人を逮捕したり、家を破壊することもある。今、ネタニヤフ首相は、西岸地区の合併を強行しようとしている。

それでも、けっして後戻りすることなく、イスラエル軍にい続けてくれるようにと思う。

石のひとりごと:なんでもありのイスラエル

この記事を読んで、非常に感動したのは、イスラエルのなんでもありのすごさである。無論、ゆずらないところは絶対にゆずらないのだが、なぜか可能になってしまうという場面が、けっこうあるのである。

まずは、1年半も世話したのに、布団の下にナイフを隠していた東エルサレム出身のイスラム・アラブ人を、まだあきらめずに、イスラエルの指導者たちが、7日間のトレイルに付き合った。考えられないことである。

また、犯罪歴のある、東エルサレムのパレスチナ人少年たちを、よりにもよってイスラエル軍のエリート戦闘部隊で訓練し、ヘブロンに任命している。普通ではありえないことである。

どれをとってもありえないのだが、ありえたのである。こういうできごとを見るたびに、イスラエルは、主がみこころをもっとも表しやすい場所であり、だからこそ、主ご自身を証しする国なのだろうと思わざるをえない。

そういう筆者も、1989年、ユダヤ人とは程遠い、生粋の日本人でありながら、イスラエルで、ディアスポラのユダヤ人のための移住プログラムに入れてもらった。ほぼタダに近い状態で、イスラエルで何ヶ月も過ごし、仕事まで与えてくれた。

この双子のアラブ人兵士たちと同様、この時の経験が、私の人生を大きく変えた。今残っているのは、イスラエルに対する感謝のみである。その感謝は永遠に消えることはない。だからファリスさんとファラスさんも、きっと最後までイスラエルのために戦う兵士でい続けることだろう。

こう考えれば、私たちクリスチャンが、命を賭して罪の罰、地獄行きから救い出してくれたイエスキリストに、一生感謝し続け、そのために働くものになるという姿を、表しているようでもある。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。