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打倒ネタニヤフ勢力が組閣へ王手
ガザとの戦闘が発生したことで、ネタニヤフ首相を辞職に追い込むための新たな統一政権を立ち上げようとした中道左派ラピード氏(現在リブリン大統領から連立政権の組閣を拝任中)と、右派ヤミナベネット氏の試みは、一時、消滅したかにみえた。
戦闘中、右派ヤミナのベネット氏は、ハマスとの戦いにある今、国は一致しなければならないとして、ラピード氏の組閣試みから離脱し、ネタニヤフ首相に協力を申し出た。
しかし、ネタニヤフ首相は、ベネット氏がよほど嫌いとみえ、これを断り、代わりにニューホープ党のサル氏(リクードから離脱した元リクードNO2)に和解を呼びかけたのであった。しかし、サル氏はこれを断っている。
そうこうしているうちにガザとは停戦に入り、6月2日に、ラピード氏に委任された組閣の期限が来るのを前に、再び政権構想が活発となった。
ラピード氏の打倒ネタニヤフ陣営には、サル氏もこれに合流している他、国会では、アラブ政党ラアム党も、国会では合意票を投じるということで、改めて合意に戻るとの発表をしている。
こうした中、30日、ベネット氏が正式にラピード氏の陣営に着くと発表した。こうなると、打倒ネタニヤフ首相陣営が国会過半数となり、ネタニヤフ首相がいよいよ退陣となる可能性が出てきた。ベネット氏の発表は、打倒ネタニヤフ勢力にとって大手となった。
右派優勢の統一政権組閣案
この打倒ネタニヤフ首相で一致した政権では、まずヤミナのベネット氏(右)が、先に2年3ヶ月間、首相となり、次に未来がある党のラピード氏(中左)に交代する。ベネット氏が首相の間、ラピード氏は外相となる。
ヤミナNO2のシャキード氏(右)は内務相。青白党のガンツ氏は防衛相(中左)で留任する。ニューホープのサル氏(右)は法務相。ニューホープからは、シャシャー・バイトン氏(右)が教育相。宗教相には、ヤミナのカハナ氏(右)また、リーバーマン氏(右)は経済相となる。
交通相は労働党のミカエリ氏(左)、保健相は、メレツのホロビッツ氏(左)などとなっており、主要ポストのほとんどは右派が占めている。
また、左派と組むことで反発している右派市民たちを黙らせるためか、国防を左右する治安閣議も、ラピード氏以外は、ベネット氏、その腹心のシャキード氏と新人マタン・カハナ氏。さらには、ニューホープ(元リクード)のサル氏とエルキン氏、そしてイスラエル我が家党のリーバーマン氏とほぼ右派勢で固めることとなっている。
こうしてみると、ラピード氏は、とにもかくにもネタニヤフ首相をおろすことを最重要ししていたことがわかる。
www.timesofisrael.com/planned-lapid-bennet-security-cabinet-would-have-right-wing-majority/
この流れにより、もしかしたら、過去12年、首相の座に君臨してきたネタニヤフ首相が、いよいよ首相から降りる可能性が出てきたと報じられている。しかし、それでもまだ決定したわけではない。
この形でも、ぎりぎり過半数の61議席である。現在、組閣を任じられているラピード氏が、期限の6月2日までにこの組閣案を、リブリン大統領に提出し、大統領が政府として任命、就任するまでまだ数日ある。ヤミナ党からは、すでに1人、左派と組む政権には加われないとする議員が脱落。もし、あと一人でも脱落すれば、打倒ネタニヤフ首相の試みは崩れることになる。
*アイェレット・シャキード氏に特別警備強化
ヤミナは明確な右派政党であり、党内部には、左派との合流に賛同しない党員は決して少なくはない。もし、NO2のシャキード氏が、ベネット氏に反対した場合、ヤミナが、ラピード氏陣営に入ることは不可能であった。今回の動きのキーパーソンはシャキード氏であったとみられている。
このため、右派陣営の中には、シャキード氏に反発するものも少なくない。ヤミナからは、あと一人欠落するだけで、この試みが崩れることから、強行右派からは、ベネット氏、シャキード氏への脅迫もでているとのこと。警察は、特にシャキード氏周辺の護衛を強化したとのこと。
ネタニヤフ首相の最後の試み
30日に上記のような流れにはなったが、ネタニヤフ首相はまだ諦めていない。選挙で獲得した議席数は、ネタニヤフ首相のリクードが30議席でトップなのである。
上記の打倒ネタニヤフ首相陣営の発表に先立ち、ネタニヤフ首相は、右派だけの政権を立ち上げるべきだとして、ベネット氏とサル氏の2人に首相を3人で交代する案を打診していたのであった。
それによると、まずはサル氏が1年3ヶ月、続いてネタニヤフ首相が2年、その後にベネット氏が1年3ヶ月となっている。最終的に、ベネット氏とサル氏はこれを断った形だが、まだ逆転する可能性もあるとメディアは伝えている。上記の発表があった後、ネタニヤフ首相が出したコメントは以下の通り。
「ベネット氏が作ろうとしている政府は、統一政権ではなく、弱体化した政権だ。こんな様子を敵に見せると、イスラエルの抑止力にも関わってくる。
ガザやイランはこの様子をどう見ているだろうか。アメリカはどう見るだろうか。この政府はイランに太刀打ちできるのか。危険な核合意に対処できるのか。」と述べた。
実際のところ、もしネタニヤフ首相が、政権を維持することに固執するならば、議席数2位のラピード氏と組めばよいことであった。この2党が手を結べば、ゆうに過半数をとることができた。
しかし、そうしなかったのは、ラピード氏が左派であり、ネタニヤフ首相自身の政治倫理と絶対に反することになるとの考えを明らかにした。
ネタニヤフ首相は、左派であるラピード氏は絶対に、イスラエルの首相になるべきではないと考えていると述べる。
ベネット氏は、自身が右派であるのに、左派のラピード氏と組むことで、たとえ、交代とはいえ、一時的にもラピード氏が、首相になることを認めることになる。ベネット氏は、自身のポリシーを大きく覆すことになるのだと激しく非難した。
www.timesofisrael.com/last-ditch-offer-netanyahu-says-saar-can-be-pm-1st-in-3-way-deal-with-bennett/
石のひとりごと
本当にぎりぎりのぎりぎりまで結果がわからないというのが、イスラエルの政治である。ここ数日のうちに明らかになると思われるが、イスラエルにとって最も良いリーダーが選ばれるようにと思う。