21日にベネット首相が、国会解散と首相交代の意向を発表。22日には、さっそく、国会委員会で、国会解散に関する決議が行われ、1回目可決となった。
今後、委員会と国会、あわせて3回可決すれば、国会は正式に解散となり、11月1日(日程はまだ予測)に総選挙の流れとなる。
予想では、今週中にも解散が決定となり、新たなラピード暫定政権が立ち上がるとみられているが、まだまだそうならない可能性もゼロではない。今、国会では、さまざまな泥沼のような交渉が行われている。
1)総選挙なしにネタニヤフ氏が首相に返り咲くことへの対抗措置
今、問題になっているのが、国会解散が、正式に決まるまでに、今の国会のままで、安定した過半数をとれそうな人物が現れるというケースである。
この場合、国会は解散せず、今のままで、大統領がその人物が新たな政権を立ち上げるよう指名し、新政府が誕生する。ネタニヤフ氏がこれを実現しようと、過半数を実現するべく、今、ベネット政権からネタニヤフ陣営に寝返る政党が出るように、交渉を行なっている。
しかし、そもそも、今の統一政権がなぜ8党もの右派左派アラブ党も加わる超多様な政権になったのかというと、12年以上も首相を続けていたネタニヤフ氏を退陣させるということが、大きな大義であった。そのために、それぞれが妥協したのである。
今もぜったいにネタニヤフ氏には協力しない、ネタニヤフ氏は政治から降りるべきとの主張を変えていないのは、右派イスラエル我が家党のリーバーマン氏である。しかし、そういう政党もあれば、今この後におよんで、ネタニヤフ陣営に寝返る可能性を示唆する党もある。
今の統一政権としては、ラピード暫定政権への移行を目指しているので、寝返りを防ぐため、1日も早く、国会解散を可決させたいところである。しかし、それには、まず、最初のハードルとして、国会委員会での賛成可決を通らなければならない。
ところがその国会委員会の委員長は、今回、最後に政権から離脱し、ベネット政権の解散を決定的にした、ヤミナ党オルバック氏であった。オルバック氏は、この委員会の開催を遅らせて、リクードが交渉をすすめる時間を稼ごうとした。しかし、これについては、国会顧問がこれを阻止して、月曜1回目の国会決議が実現したということである。
この他にも、今、ネタニヤフ氏が、汚職問題で刑事訴訟の裁判を受けていることから、そういう人物が首相になることはできないとする法案を、急ぎ通そうとする動きもあった。しかし、今すでに、国会解散、総選挙という事態になる中で、それは難しいとされた。
2)総選挙にむけて基盤強化をめざす各党の動き
とはいえ、時期総選挙においても、過半数になる政党がないとの見通しから、各党は、自らの基盤をより安定化させるために、リクードとの合併も含めて、さまざまな組み合わせによる合併にむけた泥沼のような交渉を行なっている。メディアも、その組み合わせの憶測に忙しい。
まず、ネタニヤフ氏に寝返るとみられるのは、自然に与党の中の右派勢である。驚いたことに、ヤミナ党のベネット首相がネタニヤフ陣営につく可能性を指摘する記事もある。ベネット首相の同僚で、右腕でもあるヤミナ党のシャキード氏は、すでに、ネタニヤフ陣営ににつく可能性も示唆している。
しかしベネット首相は、退陣後は、しばらく政治から離れる可能性も示唆していおり、実際、確実なところはわからない。
元リクードで、今は右派ニューホープ党のギドン・サル法務相も、少し前まではネタニヤフ氏につくのではと言われていた。しかし、サル氏はこれを否定した。
そのサル氏と協力するのではと名前があがっているのも、ベネット首相のヤミナ党である。しかし、ヤミナ党では、2番目に有力なシャキード氏が、ネタニヤフ氏につくことを示唆しており、もしベネット首相が政界から退陣した場合、ネタニヤフ陣営には加担しないと宣言するニューホープと、シャキード氏が有力になるヤミナが、結びつく可能性は考えにくい。
このようにニューホープが一見、鍵にみえたりするが、この党は、次回総選挙においては、議席獲得のための最低得票率を超えられないのではないかとの憶測もあり、そうなると、国会から消え去ることになるわけである。
さらには、アラブ政党のラアム党が、ネタニヤフ陣営につくという憶測もある。しかし、ネタニヤフ陣営には、ユダヤ教政党だけでなく、極右政党もいる。そこへアラブ政党が入るなど、ちょっとありえないだろう。
ではいったいどうなるのかだが・・・さっぱりわからんというのが、現状である。