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日々伝えられているウクライナ情勢だが、実際にははるかに恐ろしい事態になっているようである。ウクライナからの難民は500万人を超えた。
死者は、ウクライナ市民最大約2万8000人、ウクライナ兵約2万3000人(ウクライナ政府データ)ロシア(同盟国兵力含む)は、1万6000人(アメリカ予測・ウクライナ政府予測は3万5000人)となっている。無論数字はどんどん大きくなっている。
世界への影響も徐々に拡大し、エネルギー危機、食糧危機が現実になってきた。ロシアに対抗するG7欧米勢力に対し、ロシア、中国が中心のBTICSの勢力が拡大しており、イランがこちらに入ろうとする動きもある。この2つの勢力の間を行き来するのがトルコ、インドで中間勢力とも呼ばれ、世界は今、3つに分かれる様相にある。
ロシアがウクライナ東南部で優勢・制圧すすめる
ロシアがウクライナに侵攻を開始してから4ヶ月。今、ロシアは、東南部での戦闘を激化させている。ウクライナ軍は、ゼレンスキー大統領を頭に、主に欧米諸国の支援を受けて善戦してきたが、ここへ来て、武器弾丸の不足で、苦戦に追い込まれている。ロシアに制圧された主な都市については以下の通り。
1)ロシア軍がウクライナ東部要衝セベロドネツク制圧
6月25日には、ウクライナ東部ルハンスク州の主要な都市セベロドネツクがロシア軍に制圧された。セベロドネツクでは、工場地帯を中心に、ウクライナ軍やウクライナ市民2500人が抗戦しており、ロシア軍は、すべての人道回廊を破壊した上で、投降を呼びかけていたのであった。多くは殺害されたり、ロシアへ連行されたりしたとみられる。
ウクライナ国営放送によると、ロシアが制圧した地域から、ロシアに連行したウクライナ人は、120万人に及ぶとのこと。このうち24万人が子供で、うち2000人は孤児とのこと。また1000人はウクライナ兵で、軍事裁判にかけられる可能性が懸念されている。ロシア軍に拘束されたウクライナ軍とともも傭兵として戦っていたイギリス人2人、モロッコ人1人は、すでに死刑の宣告を受けている。
2)ロシア軍に制圧された東南部要衝マリウポリ:地獄の様相・がれき遺体と飢餓と伝染病
セベロドネツクよりひと月前の5月下旬、ウクライナ南部マリウポリで、数千人が抗戦していたアゾフスタリ製鉄所がロシア軍に制圧された。その後、6月初頭、マリウポリでの戦闘で死亡したウクライナ兵160人の遺体がキーフに届いたが、ロシア兵の遺体との交換であったとのこと。
マリウポリでは、6月中旬の記事で、市民10万人が町に取り残されており、数千の遺体とごみが散乱する中、インフラが完全に破壊されている。
コレラや赤痢をはじめとする伝染病の爆発的な拡大が懸念されており、マリウポリ市長は年末までに1万人が伝染病で死亡すると言っていた。無論、食糧もなく飢餓状態に陥っている。それからもう数週間になる。
ロシア軍は、27日、欧米がドイツでG7サミットを開催する中、これを牽制するかのように、26日には、首都キーウへの爆撃を行った。続いて、27日、ウクライナ中部クレメンチュクのショッピングセンターがミサイル攻撃を受けて大破し、市民が少なくとも20人死が亡したとみられている。
www3.nhk.or.jp/news/html/20220629/k10013680071000.html
欧米先進国に支援疲れ・・?:G7国際会議
ロシアに対抗する欧米先進国は、16日、フランス、ドイツ、イタリア、ルーマニアからの4首脳がキーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談。ウクライナのEU加盟(加盟候補国として認める)を含め、さらなる武器弾薬補給などについても話し合った。
すると、この同じ日、ロシアは、特にロシアの天然ガスに依存するドイツやフランスへの天然ガスの輸出を大幅に削減すると発表した。この会談に釘をさしたような形である。
その後、G7 (アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本の首脳は、27日から3日間、ドイツでサミットを開催した。様々なことが話し合われる中、27日、「財政、人道、軍事、外交など、必要な限り、ウクライナと共に立つ」との共同声明を出した。
武器支援については、アメリカが最大の支援国だが、戦地に届くまでに時間がかかるなど、圧倒的な軍事力を誇るロシアには、ウクライナ軍がいくらがんばっても、アメリカ軍などが実際に来て戦わない限り、とうてい太刀打ちできるものではない。
厳しい経済制裁で、26日、ロシアは外貨建ての国債の利払いが期日中に届かなかったとして、1918年以来の債務不履行に陥ったとされた。しかし、実際には、ロシアは5月中に支払った言い返している。
ロシアは、エネルギー、食糧ともに自給であり、ロシアとの貿易を継続している国もあり、G7を中心とした制裁には、限度があるとみられる。
G7の中でも特にドイツは、エネルギーをロシアに依存していたので、今後どう対処していくか、対処していかなければならない。
フランスでは、19日、下院での選挙で、今のマクロン大統領率いる与党が100議席を失い、過半数を失った。その際、ル・ペン氏率いる極右政党がなんと、これまでの10倍の89議席を取り、左派と合わせて過半数となったという。
ル・ペン氏は、ロシアに協力姿勢である。今後、マクロン大統領はどこまで、G7とともに歩めるのか、微妙になりはじめている。
欧米の経済制裁に反発するロシア・中国のBRICS:イランが加盟申請
1)ロシアを支援するBRICS
一方、BRICSは、かつては貧しかったが今は裕福になったという、新興5カ国(ロシア、中国、インド、ブラジル、南アフリカ)からなる経済協力同盟である。
BRICSは、G7首脳会談に先立つ23日、オンラインで、中国を議長とする首脳会談を行い、ロシアのプーチン大統領もこれに参加した。こちらは、共に、ロシアへの経済制裁を行う西側諸国を非難する声明を出した形である。
プーチン大統領は、一部の身勝手な行動によって(欧米G7などの経済制裁)によって世界経済に混乱が生じていると非難した。中国の習近平国家主席は、一方的な制裁の濫用は反対すると述べた。
www3.nhk.or.jp/news/html/20220624/k10013686241000.html
BRICSには、アルゼンチンに加えて28日、イランが加盟を申請した。
www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2022/06/394577.php
2)ロシアの抜け穴:中国
BBCによると、中国はロシアの原油輸入を、昨年から55%も増やしていた。これにより、中国の原油調達先は、サウジアラビアではなく、ロシアが第一位になっているという。
BBCが、エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)のデータとして報じたところによると、ウクライナ侵攻開始から100日間の間に、ロシアが、石油と天然ガスの輸出で得た収入は、1000億ドル(13兆4000億円)に上っていた。
CREAの算出によると、この間にかかった戦費は、876億ドルなので、収入が戦費を上回っていた可能性がある。
この収入の61%は、皮肉なことに、ロシアからエネルギーを購入したヨーロッパからだという。その後、ヨーロッパは、ロシアからの輸入を削減しているのだが、その分、中国が購入しているということである。
なお、BBCによると、中国は、今世界がイランからの原油購入を禁止している中、イランからも原油を購入しているとのこと。
中間諸国と注目されるその他の国々
しかしここで、ややこしいのが、トルコとイランである。トルコは、いったんロシアよりの姿勢であったが、今はまたG7やイスラエルに接近している。
またインドも、アメリカやイスラエルとの関係も深い。アジア諸国の多くも、これらは、中間勢力と言われているが、最終的にはどちらかに吸収されるのではないかと思う。
このほかアジア諸国、アフリカ諸国の動きも注目される。
www.nikkei.com/article/DGXZQOCD22A350S2A620C2000000/
イスラエルは独特な中間
イスラエルもロシアとの約束もあり、ウクライナへは、難民受け入れなど、人道支援以外の軍事支援は行っていない。しかし、アメリカとロシア双方と関係が深いので、独特な中間といえる。
23日、ゼレンスキー大統領は、ヘブライ大学でオンラインでの講演を行い、イスラエルの立場を理解するとしながらも、ロシアに対して経済制裁にも参加していないことへの遺憾を表明した。
しかし、イスラエルが、医薬品を送ったり、難民を受け入れていることには感謝を表明した。イスラエルがこれまでに受け入れたウクライナ難民は、3万4000人あまりで、うち2万6000人はユダヤ人で、イスラエルへの移住の権利を有する人々である。
ロシアがウクライナへ侵攻したことで、世界の勢力図が大きく変わり始めている。