4月23日はホロコースト記念日だった。エルサレムのヤド・バシェム(ホロコースト記念館)では、ホロコースト生存者とその家族、リブリン大統領、ネタニヤフ首相が出席して、毎年恒例の記念式典が行われた。
ネタニヤフ首相は、「75年前、ユダヤ人が虐殺にあっていた時、大国は知っていたのに何もしなかった。あの時、世界が動けば400万人は救えただろう。そういう世界(UN)の反ユダヤ的な体質は今も変わっていない。」と語った。
またホロコーストが現実になった理由として、①ユダヤ人への憎しみ、②世界の無関心、③国を持たない人々の恐ろしいばかりの無力さ、の3つを挙げた。
ネタニヤフ首相は、「弱いものは生き残れない。自分のことは自分で自衛するしかない。これがユダヤ人がホロコーストから学んだ事だ。」と語り、「ユダヤ人を殺そうとする者は、自らを炎に投げ込むことになる。」と警告した。
ネタニヤフ首相は、具体的な敵として、イランとイスラム国をあげた。
(式典ビデオ) https://www.youtube.com/watch?v=oryOtmkMiY8
<生存者:毎月1000人死去>
統計によると、今年イスラエルに生存するホロコースト経験者は18万5000人。この他、強制収容所には入らなかったが、ホロコーストの被害者と数えられている人が56000人。平均年齢は85歳で、毎月約1000人が亡くなっている。
葬儀を執り行ってくれる家族もない天涯孤独の生存者も多く、まったくの他人が、葬儀に参列するケースも少なくないという。
毎年のことだが、今年もイスラエル政府が生存者たちに対して十分なケアを行っていないということが問題になった。政府の姿勢は、「多くのチャリティ団体が十分なケアをしている。」というもので、政府からのケアがどうしてもおろそかになりがちなのだという。
指摘を受けて昨年、ホロコースト生存者の福祉のために、6000万シェケル(約18億円)の予算が計上された。しかし、どういうわけか、きちんとしたシステムを立ち上げることができず、2016年に割り当てられた2730万シェケルのうち、実際に使われたのは430万シェケル(約1300万円)だった。
これを受けて、ネタニヤフ首相は、自らが生存者支援委員会の代表を務めると閣僚に伝えた。
www.timesofisrael.com/state-comptroller-slams-government-over-holocaust-survivors/
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4950976,00.html
<ジカロン・バ・サロン:自宅で聴く生存者の証>
数年前から始まった草の根運動で、家庭にホロコースト生存者を招き、知人友人とともに体験談を聴くというイベントが、今年もイスラエル各地13000箇所で行われた。
単純計算でも、10年後には、生存者がいなくなるといった時代を迎える中、貴重な試みである。
www.jpost.com/Israel-News/Israeli-Holocaust-survivor-tells-his-story-to-the-next-generation-488815
<マーチ・オブ・ザ・リビング:ポーランド>
マーチ・オブ・ザリビングとは、ポーランドの元強制収容所アウシュビッツからビルケナウまでの約3キロを歩くもので、虐殺された600万人のユダヤ人を覚え、またユダヤ人は今は生きていると訴えるマーチである。今年29回目。こちらも23日に行われた。
マーチには、イスラエルのユダヤ人だけでなく、50カ国から来たユダヤ人や異邦人、約10000人が参加した。
イスラエルからは、エイセンコット・イスラエル軍参謀総長と、チーフラビのメイール・ラウ氏(ホロコースト経験者)に加えて、 ナフタリ・ベネット教育相が参加した。今年はヨーロッパ諸国の教育相12人が、ベネット教育相の招きで参加したという。
ベネット氏は、生存者が年々減っていく中、ホロコースト否定論が根強く存在していることへの対策だと語った。