ベネット首相が国会解散と首相交代を表明・10月総選挙へ 2022.6.21

記者会見のベネット首相とラピード外相 スクリーンショット

21日夜、ベネット首相と、ラピード外相が記者会見を開き、国会を解散、総選挙に向かうとの発表を行った。イスラエル史上最も多様な政権として出発したベネット政権は、1年と1週間で、その終わりを迎えることとなった。

イスラエルを守るための決断と:ベネット首相

1)リクードからの不信任案より先に自ら政権終了を決断

相次ぐ離脱者で、国会120議席中60議席と過半数を割り込んでいたベネット政権。西岸地区入植地住民を法的に保護する重要な法案を可決させることができないという、混乱に陥っていた。

その後先週、さらにベネット首相ヤミナ党からオルバック氏が離脱すると発表。野党ネタニヤフ陣営に取り込まれる可能性も出てきて、政権は、120議席中59議席と、決定的な過半数に陥っていた。

こうした中、明日水曜にも、筆頭野党リクードが、ベネット政権への不信任案を出すとみられていた。しかし、それを待たずして、その前日の火曜夜、ベネット首相とラピード外相がそろって記者会見を開き、今の国会を解散し、総選挙(10月25日みこみ)を行うと発表した。

これに伴い、ベネット首相は明日の時点で辞任し、次の政府が成立するまでの暫定政権をラピード外相が暫定首相として導くことになる。ベネット政権は、ラピード外相との2頭政府であり、2年づつ交代の予定であったからである。

2)主な理由は西岸地区法案の維持

ベネット首相は解散の理由として、今のままであれば、西岸地区法案が6月末に切れることをあげた。この法案は、1967年の六日戦争以来、西岸地区を国際的に認められる形で合併できない中で、ユダヤ人入植地の住民を保護してきた法律である。

いわば、西岸地区入植地のユダヤ人の存在を守るための法律で、イスラエルの存続に関わるといっても過言はないほどに重大な法案である。したがって、これに否決をつきつけた野党は、まさに国よりも、ベネット政権打倒を優先したということである。

まだ国会での否決が1回だけの今(成立には可決3回必要)、国会を解散することで、この法案の扱いは保留となる。この場合、6月末の期限が来ても、自動的に6ヶ月延長される。西岸地区法案は、今後6ヶ月は持ち堪えるということである。

3)聖書からソロモンの名裁判に習う

ベネット首相は、国会を解散し、自身も首相から辞任することについて、これが、ただひとえに、イスラエルのためだと説明。その際、聖書からソロモンの名裁判を引き合いに出した。

その裁判では、2人の女性、どちらもが1人の子供の母親だと主張して争っていた。ソロモンは、2人を前にして、ここで、その子を2つに割いて殺せと命じた。すると一人は、「その子が私のものにならないなら、どうぞ、その子供を殺してください。」と言った。もう一人はあわてて、「その子をその女に渡してください。ただその子を殺さないでください。」と懇願した。ソロモンは、後者を本当の母親と認め、その子をその女性に引き渡したという裁判である。

ベネット首相は、今、私たちは、子供の命(イスラエル)を守る方を選ぶとして、国会を解散し、わずか3年半の間に5回目の総選挙になることへの理解を、国民に求めたのであった。

www.timesofisrael.com/bennett-we-made-a-tough-decision-but-it-was-the-best-for-the-country/

ベネット首相とラピード外相は、わずか1年と1週間の短い政権だったが、右派左派アラブ政党と8党もの政党が共に、国のために一致し、多くをなしとげたと振り返った。2年半ぶりの予算を確定し、新型コロナ感染拡大、経済回復もなんとか成し遂げた。大きな戦争もなんとか回避してきた。外交ではUAEとの国交正常化が進み、モロッコとも直行便が始まっている。

ウクライナ問題では、イスラエルにできること、できないことを明確にしながら、難民を受け入れてきた。多様な政権であったからこそ、成し遂げたことは多数あったと思われる。この発表の前に、左派世俗派が多い、テルアビブでは、2000人ほどが、ベネット政権存続を訴えていた。

www.timesofisrael.com/2000-rally-in-support-of-coalition-urge-renegade-yamina-mk-to-not-break/

しかし、結局、ベネット首相は政治運営に力を入れすぎて、足元の自党に十分力を入れなかったために、自党から離脱者が相次ぎ、政権崩壊を招いたと分析されている。

これからの流れ:暫定政権首相はラピード現外相

具体的には、来週月曜にも、国会解散の法案を提出し、すみやかに可決される見通しである。その直後から、国会は開催されなくなり、政府は暫定政権で、首相はラピード氏と交代になる。来月、バイデン大統領を迎えるのは、ラピード暫定首相ということになる。

ラピード氏は、元人気ニュースキャスターで、中流世俗派代表として政界にデビュー。未来がある党を結成し、政治の波に翻弄されながらも、経済相と、外務相を経験している。

ラピード氏は、暫定とはいえ、これからの数ヶ月、イラン問題やヨーロッパとの関係など、非常に重大な局面が待っているので、とにかくイスラエルの国のために最善を尽くすと言っている。ベネット首相も、これからの激動の数ヶ月、ラピード氏の横で、しっかりと支えると語っている。

しかし、この宙ぶらりんとも言える間、共通の目標があるのかないのか。。という暫定の状態の中で、この多様な暫定政権が、どのように、イスラエルという、ユダヤ人の国で民主国家と主張する国をまとめていくのか。。難題は山積み以上といえる。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。